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第二章
謝罪と再会2『意外とスルースキル高い。』
しおりを挟む「たわけが! 家紋入りの書状を一介の門番が疑うなど言語道断だ! 身の程を知れ! 貴様は伯爵様の名前に泥を塗るつもりかッ!」
「わ、わたしはただ、テックアート家のためになると思って……」
ディーゼルは殴られた頬を押さえて言い訳めいた言葉を吐いたが、スタントンにギロリと睨まれると沈黙した。
まあ、オレの手柄になれとか普通に言ってたしな。嘘はいかんよ、嘘は。一足飛びに手柄を立てようとするからそうなるのだ。
「この度は部下が大変失礼致しました。私、スタントンからも深く謝罪をさせていただきます。この者の行動は独断で、テックアート家の総意ではございません。我々一同はグレン様を客人として丁重にお迎えするつもりです」
スタントンが頭を深く下げ、ディーゼルに目配せする。
ディーゼルは渋々といった感じで地面に手をつき、土下座の姿勢になった。
「……大変、申し訳ありませんでした。どうか御無礼をお許しください」
恨みのこもった目で見上げられながら謝罪されてもな……。ぐぎぎって歯を食いしばっててかなり怖いんですが。
これ、闇討ちとかされそうな勢いで憎まれてるぞ。逆恨みでここまで怒れるってある意味才能なんじゃないだろうか。
「この者の処遇はレグルお嬢様や伯爵様に報告の後、決まり次第お知らせすることになると思います。恐らく極刑になるはずですのでご安心ください」
スタントンが言った。
極刑だから安心しろってなんやねん。
意味がわからんぞ。
別に闇討ちしてこないように注意してくれればそれで構わないんだが。
「ええと、罰ってどんな感じになるんですかね?」
気になったので試しに訊いてみる。
「主君筋の人間が招いた客人に武器を向けたのですから、よくて打ち首ぃ……ですかね?」
スタントンは当然のようにそう答えた。
「…………」
ええ……ディーゼル君、死んじゃうん?
怒られるどころの話じゃなかったわ。
しかもよくてそれって他には何があるんだよ。
反省文とか食事抜きとかみたいな、里の悪戯した子供の罰を基準に考えていたら、とんでもないのがぶち込まれてきた。
「うーん、確かに面倒臭かったけど、そこまですることはないような?」
「いえ、そういうわけにはいきません。家紋入りの書状を蔑ろにし、伯爵家の客人に武器を向けたのですから。軽い罰ではテックアート家が侮られてしまいます」
俺の言葉にスタントンは断固とした口調で言った。そういうもんなのか? それが貴族の常識ってやつなら俺は口を挟めない。
まあ、俺だってムカついたのは確かだし。
必死になってまで庇ってやることもないかな?
「一応、俺は打ち首にするのは乗り気じゃないってことは覚えておいてもらえます?」
「かしこまりました。では、そのようにお伝えしておきましょう」
俺が言うと、スタントンは恭しく一礼する。
そして厳しい顔を貼りつけてディーゼルに向き直った。
「ディーゼル、貴様は処分が決まるまで自室で謹慎だ! 代わりの門番はすぐに寄越す。そいつらが来るまでの間くらいは問題を起こさずに役割を務められるよな?」
「……はい」
ディーゼルは消え入りそうな声で答えた。
彼のこめかみは、恥辱のせいかピクピク震えていた。
あんまり煽らないで欲しいんだよなぁ……。
マジで爆発する数秒前って感じじゃん。
こっちに飛び火してきたら困るんだけど。
俺たちはディーゼルをその場に残してスタントンの案内で屋敷に向かうことにした。
ところで途中からリュキアがすっかり空気になっていたんだが。
……一体どこ行ったんだ?
「グレン様、あちらではないでしょうか?」
「くうくう……」
スタントンに言われて振り向くと、やつは門の柱にもたれかかって居眠りをしていた。
そういえば退屈そうに欠伸してたっけ……。
あの騒ぎを前に爆睡とかメンタル強すぎだろ。
盗賊との戦闘でも平然としてたからいまさらかもしれんが。
「おい、そろそろ行くから起きろよ」
「ぐうぐう……」
「…………」
起こそうとしてもなかなか目を覚まさない。
俺は米俵を担ぐようにリュキアを肩に乗せて運ぶことにした。
そのことにスタントンは突っ込みを入れてこなかった。
意外とスルースキル高い。
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