トラックエルフ ~走行力と強度を保ったままトラックがエルフに転生~

のみかん

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第二章

謝罪と再会4『冗談って難しいな。』

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 リュキアはまだ寝ている。

 腹をポリポリ掻き、ヨダレを垂らしながら足をはしたなく広げて爆睡中だ。

 彼女を連れてきたことについては後で説明するとして、俺たちはディーゼル問題の落としどころについて話し合っていた。

「本来なら当該の騎士は考慮の余地なく打ち首にするところですが、なんでもグレン様はそこまで望んでおられないとか?」

「まあ、あんまり大げさにはしたくはないですね」

 俺がそう言うと、対面のソファに座るレグル嬢は怪訝そうに眉を顰めた。

 付き人として彼女の脇立っているエヴァンジェリンも微妙な顔をする。

「……あの、グレン様は槍で突かれたんですよね?」

「はい。脇腹をこう、グサってね。けっこう痛かったけど、もう平気ですよ」

 レグル嬢はさらに複雑そうな顔になった。

 なんでだよぅ。

「それ、普通は死んでいますよね? グレン様でなければ取り返しのつかないことになってますよね?」

 人間が槍で刺されたら普通は死ぬもんな。よくて重傷だ。

 けど、俺は槍程度で貫通されるマシュマロボディではない。

「確かに被害はないですが、不敬にあたるのは事実ですし……ううん……」

 そんなに悩むなら俺の意見なんか無視してくれて構わないんだが。

 そこまでディーゼル君に肩入れするつもりはないし。

「お嬢様、ならば鞭打ち千回の末に放逐というのはいかがでしょうか? 他家にも騎士として仕えられないよう通達を出しておけば面目は保てるはずです」

 エヴァンジェリンが横から折衷案を出してくる。

 レグル嬢の顔が僅かに晴れた。

「そうですね……! 最終的な判断はお父様に委ねることになりますが、グレン様が幸いにも無傷で、当人の強い意向を尊重したということにすれば一応の名目は立つでしょうか……? いいですね、では、そのようにするとしましょう。グレン様もよろしいでしょうか?」

 うんうんと頷き、同意を求めてくるレグル嬢。

 よかったな、ディーゼル君。

 打ち首は回避できたっぽいぞ。

「そうですね、じゃあそういう感じで」

 鞭打ちがどれくらいキツイか知らんが、ちょっとペチペチされるくらい安いもんだろう。

 人間が感じる鞭の痛みをよくわかっていない俺は紅茶を啜りながら満足げに了承した。




「グレン様、御無事に着かれたようでなによりです」
「いやいや、そっちこそ」

 ディーゼル問題が片付いた俺たちは再会の挨拶を仕切り直して行なう。

 せっかく会ったのに謝罪から始まったんだもんな。

 こんな騒動を起こしたディーゼル君はしっかり反省して頂きたい。

 さて、レグル嬢たちだが、聞くところだと王都までの道中は行きと違って盗賊やゴブリンに襲われることもなく無事に辿り着けたらしい。

 ルドルフも実家へ送り届け、彼女たちは特に難もなく旅路を過ごしたようだった。

「ふむ、何事もなさ過ぎて盛大な前振りみたいな気もしますね」

 俺が言うとレグル嬢は苦笑した。

「いやですわ、グレン様。ニッサンの町での出来事が異常すぎたんですよ」

「……はたしてそうかな?」

 里を出た初日に連続でトラブルにエンカウントした俺の予想ではそろそろくるぜ?

 俺はキメ顔で意味深に呟いた。

「は、ははは……グレン様、そのようなことを仰るのはおやめになってください……」

 彼女の持つ紅茶のカップが震え、ソーサーにぶつかってカタカタと鳴る。

「グレン殿、お嬢様を怯えさせるようなことは言わないでほしい」

 エヴァンジェリンに睨まれた。軽いジョークだったんだが。

 冗談って難しいな。




 話題は必然と奴隷商人についてのことになっていく。

 俺がこうして招かれているのもそれがあるからだし。

 なお、レグル嬢の父親であるテックアート伯爵は現在屋敷を留守にしているらしい。明日には帰宅するそうなので、顔合わせはそれからになりそうだ。

 とりあえず俺はレグル嬢に依頼の最中に森で見つけた馬車と、そこに落ちていた密書の話をした。

 現物も持ってきていたので手渡して確認してもらう。

「それで、森で会ったのがこの子、リュキアっていうんだが。なんかついてくるって言ったんで連れてきたけど、一緒に泊まって構わないだろうか?」

「ええ、グレン様のお連れ様なら一向に構いませんが……」

 レグル嬢の関心はすでに密書のほうに集中していた。まあ、リュキアは寝てるし優先事項はそっちになるよな。

「魔道学園に奴隷商人の協力者がいるなんて……。そんなこと、あのナイトレイン校長が見逃すわけが……」

「お嬢様、これは伯爵様に使いを出して可及な限り速やかに報告すべきでは?」

「いえ、ですがここで動きを見せるのは相手に悟られる可能性が――」


 …………。

 二人が深刻そうな感じで話している。

 ややこしい駆け引きみたいな話は苦手なので混ざるのは遠慮しておこう。

 話について行けない俺は茶菓子をモサモサ食いながら様子を見守る。

 ちなみにナイトレイン・トリプルドア。

 王立魔道学園の校長の名前であるらしい。

 覚えておくべきか? 

 いや、直接会うかわかんないし別にいいか。


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