90 / 126
第二章
披露と来訪1『出力はほぼマックスだ。』
しおりを挟む一週間が経ち、再び魔法実技の時間がやってきた。
発表の順番が回ってきた俺は、この日のためにチョイスしたトレーニングメニューを次々と実演し、モヤシ生徒どもに見せつけていった。
もちろん回数を同じようにやっていては絶対に時間が足りないので、そこは説明だけで割愛した。
まあ、連中はメニューのバリエーションだけで圧倒されていたが。
ふふ、恐れ慄け。
「――と、これも先ほどと同じように最低三十回、慣れてきたら五十回をワンセットとして行います。次は下半身のトレーニングに移りますが……」
腋を開いて行う腕立て伏せと閉じて行う腕立て伏せ。
腹筋背筋など、上半身中心のメニューを終え、下半身のメニューにも取り掛かる。
その頃になると周囲の様子は騒然から唖然としたものになり、無言で俺の発表を眺めるだけになっていた。
静寂に包まれし、屋外のグラウンド。
ただ、ルドルフは腹を抱えて爆笑していた。
「最高だぜ! これは画期的な理論だ! お前らもやってみろよ! ふはは!」
…………。
そういえば、塔の近くで会った少女は来ていないのか。
楽しみにしてるとか言ってたけど見当たらないな。
ま、いてもいなくてもどっちでもいいさ。
静まり返ったグラウンドで、俺は黙々と筋トレを続ける……。
「このように体を鍛え、筋肉量を増やすことで、同時に全身を巡る魔力の流れが活性化され、根本から魔法の威力を上昇させることができるのです。今からその成果を実技によってわかりやすく実証して見せます」
すべての筋トレを披露し、最後に実技を見せる段階に入る。
ちなみにこの発表の台詞はほとんどメイドさんに考えてもらった。
ぼんやり俺がイメージを伝えると、シュババと清書して台本を作ってくれたのだ。
あの人、生活面以外でも有能すぎてやばい。
依存し過ぎると離れられなくなりそうだわ。
「ふ、ふざけているのか! さっきから黙って聞いていれば! 崇高な魔術が兵士の訓練のような真似で上達するわけがない!」
一人の男子生徒が声を張り上げて抗議してきた。すると、
「そうだそうだ! 魔術は高貴な血筋と才能、そして呪文の研究によって突き詰めていく高尚なものだ!」
「野蛮な鍛錬など魔術には不要なものだ!」
「いくらエルフとは言え、魔術を冒涜するにもほどがあるぞ!」
やいのやいの。
他のやつらも続々便乗して文句をつけてくる。
面倒くせえやつらだな……。
「それならお前らは俺よりも優れた魔法が使えるのかよ?」
俺が言うと、
「き、君はエルフなのだから、僕ら人間より優れた魔法が使えるのは当然じゃないか!」
「そうだ! 何の証明にならない!」
「エルフ全員がその方法で魔力を鍛えているのなら話は別だけどね!」
ううむ、そういう考え方があったか。
エルフって人間より魔法が得意なんだもんな。
そりゃそうなるか。
「だったら、エルフの範疇すら超えた強力な魔法を俺が見せたら納得できるか?」
俺は授業のために設置されていた、攻撃魔法用の的を指さして言った。
「ま、まあ、君がエルフのなかでも高みにいるというのなら、その方法は確かに有効なものと一考してもいいだろう」
最初にイチャモンをつけてきた男子生徒は半分俺に押される形で肯定の言葉を述べた。
そこそこ加減するつもりだったが、こうなれば話は別だ。
実技魔法の教師も俺の発表を蔑んだ目で聞いてやがったし、ちょうどいい。
「よしきた。見てろよ?」
言質を取った俺は早速脳内でウォーターバレットの呪文を唱える。
……やべ、呪文を思い出すのがちょっと遅くなってる。
気をつけないとまた忘れそうだ。
「……ウォーターバレット!」
そして、魔法は放たれた。もちろん、出力はほぼマックスだ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる