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第二章
披露と来訪2『また自然破壊しちゃったぜ』
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「す、すごかったな。筋肉魔法強化理論だっけ?」
「筋肉を鍛えたら本当に魔法の威力が上がるのか?」
「お、おれ、明日から少し体を鍛えてみようかな……」
「ほ、本気か?」
「だって、いくらエルフでもあそこまでの魔法は普通使えないだろう?」
授業が終わった。
生徒たちは興奮冷めやらぬといった感じで会話を弾ませ、グラウンドを後にしている。
……ふふ、迷ってるやつもいるな。
まだ完璧には信じ切っていないようだが、数人の生徒に疑念というさざ波を起こせただけでも大きな前進だ。
本当は女神様からのプレゼントのおかげなんだけどね。
だが、あいつらは凝り固まった頭をほぐす必要がある。
そのためには運動だ。
もっと身体を鍛えることを学園全体に浸透させていかないと。
「ああ……私の授業中にこんな損壊を……学園長にはなんて報告をすれば……ぐっ」
脂ぎった髪をした実技魔法の男性教師は、ポタポタと水滴を垂らしながら茫然とグラウンドに突っ立っていた。
彼は的からそこまで離れた位置にいなかったため、見事に水をひっかぶってしまったのだ。
もちろん、魔法が直撃したわけではない。
撥ねた水を浴びただけである。
それだけで全身びしょ濡れなのだから、魔法の威力はおおよそ見当がつくだろう。
俺のウォーターバレットは当たり前のように的を飲み込んで消し去り、さらにはグラウンドを囲っていた柵をぶち壊して敷地内にある森の木々をいくつも薙ぎ倒すという凄まじい威力を見せつけた。
ふふ、生徒たちに手の平を返させるには十分すぎる、完璧なアピールだった。
あの後は誰も文句を言わなかったもんな。
ルドルフはなんか対抗意識を燃やしたっぽいけど。
しかし、エルフなのにまた自然破壊しちゃったぜ。
前世で積んだ徳を一気に使い込んでる気がする今日この頃だ。
「おーい、グレン~」
ルドルフと本校舎に戻ろうとしていると、聞き慣れた幼女の声がした。
「あれ、リュキア……とメイドさん? どうして?」
見ると、リュキアがメイドさんに手を繋がれてグラウンドに立っていた。
「うんとねー? きのう、グレンがかくめいだーっていってるの、おもしろそうだったから、みにきたの」
「すいません、どうしてもグレン様が授業を受けている姿を見たいというので……」
メイドさん、わざわざ付き添いできてくれたのか。
迷惑かけてすまんな。
でも、もう授業終わっちゃったんだけど。
「お、おい、エルフ、このガキは一体……」
そういやルドルフはリュキアに会うのは初めてか。
メイドさんのことも紹介しておこう。
「ふぅ……ふぅ……き、君……。その子供は一体……」
…………!?
気が付くと、ついさっきまで項垂れていたはずの男性教師がすぐ隣に位置していた。
息切れをしていることから、ものすごい勢いで走ってきたのだろう。
日頃から運動をしてないからそんな短い距離でバテるのだ。
教師は食い入るようにリュキアを見つめ、ごくりと唾を呑み込み、
「ほ、本物なのか……? な、なんでこんなところに……」
呼吸を荒くしながらリュキアに手を伸ばす。
なんだこいつ、幼女に興味津々か。
不潔な見た目で子供が好きとか、アウトコースを突き抜けて生きてるな。
「やー! くさい!」
彼の手が触れるか触れないかのところまで近づくと、リュキアは俺の背後に逃げ込んできた。
「うぐぅ~」
リュキアが心底嫌そうな声を出して俺にしがみつく。
こいつがこんな反応するのは初めて見るな。そんなに気色悪かったのか……。
臭いってのはちょっとかわいそうだけど。
でも、その、べとっとした髪は少し洗ったほうがいいと思うぞ、先生さんよ。
「俺の連れをあまり怯えさせないでもらえますか? 見ての通り、ただの幼女なので」
ただの幼女……ですか……はぁ、とメイドさんが溜息を吐く。
ルドルフも首を傾げながら腕を組んでいる。
それ以外に何かあるの?
彼女たちと俺では、見ている世界が微妙に違うのかもしれない。
「……そ、その子は君の知り合いなのかね?」
「一応、従者という形で寮に一緒に住んでますが」
「なんだと……!?」
この教師、落ち込んだり興奮したり驚いたり、忙しいやつだな。
危ないやつは放っておいて、次の授業に行こう。
次は……基礎魔法だ。覚悟せねば。
「ああっ、今日はなんという日なのだ……ッ!」
実技魔法の教師の声が背後で聞こえる。
まあ、なんだ。元気出せよ。明日はいいことあるよ。
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