全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『領地経営』編

第87話『水の精霊ナイアード』

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『うわぁ、出てきちゃったよぉ』

 ブラックドラゴンが辟易したように言う。
 吹き上がった水は女性らしきボディラインの人型に姿を変化させていく。
 やがて透明な人型になった水は、

『ドラゴンの小童よ。普段はここに寄り付かない貴様が人間なんぞを連れて何の用じゃ?』

 シャベッタァァァァァァ――ッ!?

 なにこれ、どーなってんの?

「ヒョロイカ様! やはり、水の精霊ナイアードです!」

「ないあーど?」

 長さの単位かな。
 アメリカンフットボールとかでよく聞くやつ。
 あれはヤードですね、はい。

「きっと、この精霊が棲み着いているから湖の水は聖水なのですね。お兄様はなんで教えて下さらなかったのでしょう! こんなの聞いてないですっ! おかげで驚いてしまいました!」

 ジゼルが頬を膨らませむくれている。
 いや、君のお兄様だって知らないことくらいあるんじゃない?
 八つ当たりで俺の服を引っ張るのはやめてもらえないだろうか。

 それより、このナイアードというのはここのヌシっぽいけど。
 湖の水を使うならこいつの許可が必要だったりするの?
 とりあえず使っていいか訊いてみよう。

『我の湖を人間ごときが荒らすつもりか? 無礼者め、キエエエィ――ッ!』

 めっちゃ怒り出したよ。
 お前は瞬間湯沸かし器ですかコノヤロー。
 ブラックドラゴンが敬遠したくなるのも納得の面倒くささですわ。

 ナイアードの力で水面が轟々と渦巻き始める。
 こいつ、津波でも起こそうとしてるのか?
 短気なやつめ。飲み込まれたらたまったもんじゃない。

 こっちも水魔法で相殺しよっと。

「そいやっ!」

『ぬぬっ!? 水が……我の制御から外れた……だと?』

「頼むから落ち着いて話を聞いてくれないか?」

『黙れ人間風情が! くっ、水の精霊である我と力が拮抗しているというのか……?』

 これくらいの出力で拮抗状態なのか。
 もうちょっと力を入れたら簡単に抑え込めそうだ。
 えいっ。

 ぐぐぐっ。

『ぴぎゃっ』

 捻り潰すように水を操作すると、人の形になっていた水の塊は悲鳴を上げて飛び散った。
 あれ、殺してないよな?
 多分、大丈夫だと思うけど……。

『やったぁ! ざまぁ、ババアくたばれ!』

 ブラックドラゴンは嬉しそうに手を叩いて小躍りしていた。
 お前、なんかキャラ変わってない? 
 あのオバサンと過去に何があったんだよ。





『負けてしまったからには仕方がない。貴様と精霊の主従契約を結んでやるとしよう……』

 精霊は生きてた。
 しばらくするとブクブクと再び人型になって現れた。
 てか、契約って? そういう話だったっけ?

 湖の水を使わせてほしいって言ったらいきなりキレたんでしょ?
 あっさり負けたのが恥ずかしいから誤魔化そうとしてないっすか?
 別に必要ないよ。
 よくわからない契約にサインしたらダメって親から教育受けてるんで。

『それでは、汝を我が契約者として認める!』

 問答無用で強引に続けるナイアードさん。
 おい、何するつもりだ。
 人の話聞けってばよ。

「むっ!?」

 俺の右手の甲がピカーッと光って刻印っぽいものが浮き上がってきた。
 ちょ、刺青は困るんだけど?
 日本の銭湯から出入り禁止にされちゃうじゃん。

 あ、消えた。
 どうやら残り続けるものじゃないみたい。
 安心したぜ。

『これで汝は我の契約者だ。湖の水も自由に使うがよい……』

「いや、だから契約とかはいらないって。水だけ使わせてくれりゃいいんだよ?」

『我は契約主でもない人間に棲家を好き勝手させるつもりはない』

 ナイアードは頑なな態度で主張した。
 湖を利用するなら契約もセットなのか……。
 そういう抱き合わせ販売なの? 

 うざいバーターだな。

「ヒョロイカ様、精霊との契約は誉れ高いことなのですよ? ここ数十年では誰も成し遂げていない偉業でもあります。精霊の属性と同じ魔法の力も上昇しますし。受け入れておいて損はないかと」

 俺が渋ってるとジゼルが口を挟んできた。
 そうなの? すでにレベル5だけどさらに強くなるの?
 まあ、マイナスがないならいっかな。

 こっちは湖を使わせてもらう立場だし。

 この精霊が納得するなら契約されておくとしましょうか。




 こうして、俺たちは水道インフラに必要な水源をゲットした。

 精霊と契約したことを告げるとデルフィーヌは羨ましがり、エレンとベルナデットはレッドビーンズブレッドを焼いてお祝いをしようと盛り上がった。

 なんだよ、レッドビーンズブレッドって。

 日本の赤飯みたいなもんか?



 水源を手に入れた俺たちは後日から早速工事を開始した。

 機材の運搬やパイプを通す場所の開拓など、そういう時間を取る割に単純な作業は俺がチートであっという間に片づけた。

 おかげで工事はスムーズに進み、数週間後には町のほぼ全域に水回りのインフラを行き渡らせることができた。

 湖から引いてきた聖水で銭湯も作った。
 領民はタダで利用できるやつね。
 部外者には700ゴールドくらいで入れるよう設定した。

 本当は天然温泉で作りたかったんだけど。
 ちっとも湯源が見つからないからしゃーない。
 え? 聖水に浸かる行為は聖水の原産国の大聖国でも教会に寄付金を大量に払った上流階級しかできない?

 そんなの知らんよ。よそはよそ。うちはうちです。
 セント銭湯せんとうに入れるのはニコルコだけ!
 なんつってw






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