全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『勇者伝』編

第134話『Sランク』

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「ねーねー? この人がリクの言ってた他の勇者かもって人なの?」
「なーんだ、リクのほうがカッコイーわね!」

 ヤリチン大学生改め、野村陸の両脇にはボンッキュボンの美女が二人、しなだれかかるようにひっついていた。

 美女たちはそれぞれ魔道士とシスターっぽい格好をしているが、彼女たちの装備は胸元や背中が開いていたりスカートが極端に短かったり、俺の知っている同職種の女性たちとは随分イメージが異なる扇情的なデザインをしていた。

「…………」

 若干距離を置いた後方にはもう一人、紺髪の美少女が佇んでいる。
 鎧を着ているから前衛の騎士か何かだろうか?
 あの子もこいつらの一味なのかね。

 他二名と比べるとボディラインの凹凸が圧倒的に少ない……というか真っ平らだけど。
 ケバい印象もなくてヤリチンパーティの中では圧倒的に可愛いと思った。
 まあ、個人の感想ですが。

「いや~公国で魔王がすげー早く倒されたって聞いたけど、それやったの勇者じゃないって話じゃん? でも、黒髪黒目だっていうし、勇者以外が魔王を倒すのっておかしいよなぁって思ってさ。その冒険者が領主になった町が最近観光地として地味に噂になってるっていうから、バカンスがてら正体を確かめにきたわけよ」

 別に来た理由とか全然訊いてないのに。
 野村陸は勝手に説明してくる。
 ベラベラベラ、よく喋るやつだ。

「ねえ、どうして? どうして兄さんは勇者扱いされてねえの? マジウケるんですけど! やっぱあの全マシとかいうクソダサな能力がダメだったわけ? でも、ご褒美に領地は貰ってんだよね? ねえねえ、どういうことなん?」

「ああ、それは――」

 野村さんちのリク君は、左右に侍らせている魔道士&シスターの美女たちの尻とおっぱいを揉み揉みモンダミンしていた。

 うわぁ、すっごいグニョグニョさせてるよぉ……。

「――込み入った事情があってな」

 説明する気が失せてしまった。
 人前でそうゆうことすんなよ! と突っ込む気力も沸いてこなかった。
 そんな注意をしても意味が理解できない人種だと思ったからだ。

「領主様、申し訳ありません、お止めしたのですがこちらの方たちが……」

 メイドさんが言うに、こいつらはミエルダ王国の王族が身分を保障する紋章を持っていたため来客として中に通したのだが、応接間へ案内している途中で勝手にズカズカ屋敷を探索し始めたのだという。

 しょうがねえやつらだな……。
 うちの使用人を困らせるんじゃないよ。
 メイドさんを下がらせて、俺はリクと向き合う。

「兄さんとこの魔王は超ザコだったみたいで羨ましいわ~。ワケわかんないショボそうな名前の力でも楽々倒せちゃうくらいだし?」

「…………」

 俺と魔王が互いに認め合った宿敵同士だったなら『あいつのことを侮辱するんじゃねえ!』と憤る熱い展開ができたのだが――

 生憎、俺は魔王を初対面で瞬殺してしまった。
 因縁を持つまでもなくラクショーで倒してしまった。
 よその魔王との比較とか、もはやどうやったってできないし。

 特に返せる言葉はなかった。

「ほんと、王国の魔王軍は幹部ですらメッチャつよぽんでさぁ……。ま、おかげで幹部を一人倒しただけで冒険者ランクがSになったけど」

「S……? 冒険者ランクってAまでじゃなかったの?」

「ええっ? あんた、もしかしてまだAランクなの? 魔王を倒したくせに? ダッサー! プークスクスーッ!」

「…………」

 大爆笑される。
 質問しただけなのに。
 何なの。

「もぅ、リクったらあんまりイジメたら可哀想でしょ? Sランクはこの300年間でリクしかなってないランクなんだからしょうがないじゃない」

「そうよ、この人は勇者なのに勇者と認めて貰えなかった可哀想な人なんだから。優しくしてあげなきゃ駄目よ?」

 両サイドの女たちがリクを窘めるような口ぶりで言ってくる。
 でも、これ、絶対に俺をバカにしてるよな。
 言ってる内容はよく聞くとアレだし、こっち見ながらニヤニヤしてるし。

「ああ、そっかーそうだよなぁ……。オレが特別だっただけだもんな。なってなくても仕方なかったよな! 兄さん、マジで心の底からメンゴーッ!」

 女たちに言われると、リクはペラペラ~っとした、うっすいうっすい謝罪をしてきた。

 いやぁ、こういう腹を立てるほどではないんだけど、それなりにイラッとくる絶妙なラインでウザい連中は対処が非常にメンドくさいぞ。

 鬱陶しさを伝えたら『そんなマジになんなよ~ネタじゃ~ん』ってなるやつだし。
 さっさと帰ってくれないかなぁ。
 確認は済んだだろ?

 せっかくいい気分で酒を呑んでたのに……。

 ん?

「…………」

「…………」

 ドアを半開きにして、執務室から遠慮がちにこちらを窺っているバルバトスがいた。

「その、少し……いいだろうか……?」

 ちょびっとだけ身体を覗かせて、所在なさげな感じでチラチラ見てくる。
 おいおい、デカい図体の男がやっていい仕草じゃねえぞ?
 わきまえてくれや。

「実は……このタイミングで言うのもどうかと思うのだが……。どうやって切り出そうか、お前と話をしながら考えているうちにうっかり忘れていてな……。オレは今日……ギルドからお前宛ての重要な通達するために来たのだ……」

 そう言って、バルバトスは胸元から筒状に丸められた書類を取り出す。

 …………。
 ブラッド氏からの伝言の時もそうだったけどさぁ。
 バルバトスさん、用件を忘れちゃうスタイルやばくないっすか?

 普段、ちゃんとギルドマスターできてるのかすごい心配なんだけど……。

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