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『勇者伝』編
第144話『鳥だ! 飛行ry』
しおりを挟む『ココは忌々しい強サを誇る小童の縄張りダから避けていたガ……。ドラゴンゾンビとナリ、無敵の力を得た我ナラバ恐るルに足リズ! 今の我ハ魔王サマすら凌ぐノダッ! 歯向かう者はスベテ葬り去ってヤル!』
『無敵とか、魔王様より強いは盛って話しすぎだけどぉ。確かにコイツ、すっごい強くなってるから。四天王で最弱だった前みたいにはいかないと思うわよ?』
パワーアップしてイキリまくっているドラゴンゾンビと、誇張を訂正しつつも強化されたことは事実と告げる美少女。
口ぶりからして、紫髪の美少女のほうがドラゴンゾンビより格上の存在なのだろうか?
『我ハ、最弱などデハナイッ!』
グオオオオオオッ! とドラゴンゾンビは咆哮を上げた。
「なあなあ、カワイ子ちゃん? オレ、女の子とはあんま戦いたくないからさ。そんなゾンビよりこっちにつかない? 優しく可愛がってあげるよ?」
リクは敵陣営の美少女を誘っていた。
見た目がよければ片っ端から声をかけていくスタイルらしい。
『アハハ、なにそれ。口説いてるつもり? そういえば、まだ名乗ってなかったわね?』
推定サキュバスの美少女はズビシッと指をリクに向ける。
『アタシはストームと同じ、セイリュウ様率いる魔王軍の四天王、ファントムよ!』
「へー」
「そうなのねー」
「マジかー」
「し、四天王ですって……! こんなところで四天王に二人も出くわすなんて……」
リクパーティのなかで、タチアナだけが危機感を覚えたリアクションだった。
ゴルディオンの話を聞いた後だと、そんな余裕ぶっこいてて大丈夫かよって思っちゃうんだけど。
『そういうわけで、勇者であるアンタとは殺し合う関係なの、ごめんね?』
「ハア、フラれちゃったわぁ、マジ、ぴえんなんだけどー?」
首をコキコキと回し、リクはわざとらしく肩を落とす。
はて、ぴえん……とは……?
鉛筆の略称とかではないよな。
「まーいいや! とりま、バイオハザード野郎! お前は今度こそ完全に倒してやるよ!」
聖剣を握りしめたリクはドラゴンゾンビに向かって一直線に駆け出した。
「リク殿! いかん! そんな単調に攻めては――」
ゴルディオンが大声でリクに向かって叫んだ。
隠密スキルが効いてるから聞こえないだろうけど。
『グオオオオオオオッ――!』
ドラゴンゾンビがブレスを吐く。
ブラックドラゴンのとは違い、ビーム的なものではなく、紫色のミストスプレーのようなブレスだった。
「ぐわあああ――っ!」
リクはドラゴンゾンビのブレスを避けきれずに浴び、地面に倒れて転がった。
身体が損傷している様子はない。
見た目通り、霧のような質感らしく、あれ自体に破壊能力はないようだった。
しかし……。
「インバーテッド、ち、治療してくれぇ……!」
リクの身体中に紫色の斑点がボツボツとでき始めた。
全身に痛みがあるのか、立ち上がることもままならない模様。
恐らく、あれは毒性のブレスだったのだろう。
「は、はやく……グフゥ……」
ボインシスターが魔法で治癒しているが、症状の進行に回復があまり間に合っていない。
リクは喉や胸を掻きむしって血を吐いた。
ありゃマズいな……。
「う、うそ……リクが負けたの……? なんで、なんでよ! 前に戦ったときはリクがずっと優勢だったじゃない! アンデッドになったからって、こんなあっさり逆転するなんておかしいわよ!」
魔道士のボインが取り乱して叫ぶと、
『グワッハッハッハ!』
ドラゴンゾンビはよくぞ言ってくれたとばかりに高笑いを上げた。
『ドラゴニュートだった頃の我ハ、勇者と正面から剣で戦った。それは我ノ武人としての誇りユエだったが、迂闊にも勇者が唯一勝てる条件で相手をしてしまったノダ!』
「唯一勝てる条件……?」
『勇者リクの剣技は相当なもの。シカシ、接近されナケレバどうということはナイッ! 懐に踏み込むための体捌きも未熟ダカラナ……剣技対決でなければソモソモ、これが本来あった実力差なのダ!』
それではあまりパワーアップしてないということにならないか?
アンデッド化で実力差がさらに開いているはずでは?
まあ、あんまり揚げ足を取るようなことは言わないほうがいいよな。
…………ん?
『ちょっと! そこのひと――――っ!』
バサバサッという翼のはためく音がした。
風がぶわっと周囲に圧力を与える。
あ、あれは!
鳥だ! 飛行ry
ズシィィイイィイィイイィイイィイイイィイイイィイイィンッ!
上空から舞い降りて来たのは黒い鱗の巨大なドラゴン。
今度こそ、俺の知っているドラゴンの登場だった。
ブラックドラゴン――あのトカゲめ!
大人しくしてろって言ったのに!
応援ありがとうございます!
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