全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『勇者伝』編

第152話『内政官補佐見習い』

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「それでネイバーフッド伯爵令嬢を私の補佐にすると?」

 ニア嬢を連れ、俺は執務室で書類仕事をしているジャードを訪ねた。

 事情を聞いた鉄仮面の内政官は胡散臭そうな目で俺とニア嬢を眺める。

「お前の助手としてついて回れば領地運営の勉強になるんじゃないかと思ってさ。お前も仕事を手伝う補佐役がほしいって言ってたろ?」

「それは確かに言いましたが……。何も行儀見習いでやってきた他家の令嬢にさせる必要はないでしょう? ネイバーフッド伯爵も御令嬢に領地運営の知識を深めさせたくて寄越したわけではないと思いますよ?」

 何かごちゃごちゃ言ってる……。

 ディベートになったら勝てないので困るぞ。

「あなたがニコルコの内政官ですのね!?」

 ニア嬢が俺を押しのけるように前へ出てきた。

「ニコルコの領地運営の実務はあなたが担っていると辺境伯様に伺いましたわ! 発展著しいニコルコを取り仕切るその手腕、ぜひわたくしに間近で見せて頂けませんこと?」

 ニア嬢、めっちゃグイグイ行くな。

 でも、かつての田舎領地から一変したニコルコで内政官をやっているジャードの下で修行するチャンスは同じく領地を発展させたい彼女にとって垂涎ものだろうしな。実家に戻っても伯爵が快く思ってない以上、独学以外に学びようがないし。

「よいですか、ネイバーフッド伯爵令嬢。ニコルコがここまで迅速に変化を遂げられたのはヒョロイカ卿の能力と発想あってのことです。私自身はただの内政官で、主君の意に沿った行動を取っているにすぎません」

 ジャードが謙遜している。
 俺はこいつがいるから厄介な交渉とか書類作成をしなくて済んでいるのだが?
 チートで好き勝手開拓しても後の処理や手続きを抜かりなくしっかりやってくれるし。

 ほぼ丸投げっていうか、自分でやれって言われたら絶対無理なことを任せてるぞ。

「頼んだらスケール問わずにやってくれるのってスゴイと思うぜ?」 

「そうです! すごいですわ!」

「………………」

 ニア嬢と二人で賛辞を送るとジャードはこめかみを押さえて無言になった。

 ふっ、なんだコイツ、褒めたから照れてるのか?

「まあ、貴方が決めたことならきっと悪い方向にはならないのでしょうね……。本当は機密の都合上、他家の人間には極力関わらせたくないのですが」

 ん……? 機密だと? 
 そういえばそういうのも考えないといけなかったかもしれない。
 ニア嬢はよその家の令嬢だし。

 もしかしてジャードが謙遜っぽいことを言ったのはニア嬢を乗り気にさせないため?
 むーん。
 やってしまった感がある……。

 けど、性別だけで道が閉ざされて苦悩する彼女を見ているのは何か忍びなかったからさ。

 もちろん同情だけじゃなくて、男か女かってだけで能力に関わらず取り立てられたりられなかったりするのが個人的に損失だと思ったからなんだけど。

 性別でチャンスすら与えられない風潮がこの世界に残っているのなら、それに一石投じてみたほうが将来的に得かなって。

 早い段階からニア嬢にジャードの薫陶を受けさせておけば、同じレベルでモノを見れる相手が隣領の領主になるかもしれないし。

 無能がお隣さんだと未来のニコルコが苦労しちゃうかもだからね。
 今の段階ならお隣さんの次期領主として彼女が相応しいかどうか、勝手ながらこちらで見極めることもできる。
 素質があるようなら俺からネイバーフッド伯爵に口添えすることもやぶさかではない。

 ジャードと視線が合う。

 俺の考えを察したのかは知らないが、彼は静かに溜息を吐いた。

「わかりました。人手が欲しかったのは間違いないので、補佐の見習いという形で受け入れましょう」

「本当ですの!?」

「あまりにも見込みがないようなら諦めて頂きますが。それでもよろしいですか……?」

「ええ、よろしくお願いいたしますわ!」

 ニア嬢は生き生きとした笑顔で華麗なカーテシーを見せた。


 こうして、ニア・ネイバーフッド伯爵令嬢はしばらく我が家に滞在することとなった。

 行儀見習いではなく、内政官補佐見習いという立場で……。

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