165 / 169
『勇者伝』編
第164話『誠意って何かしらね?』
しおりを挟む「ちょっといいかしら?」
スチルが口を挟んできた。
何を言い出すつもりだ? あんまりいい予感はしない。だってスチルだもん。
「ねえあなた。誠意って何かしらね?」
スチルはフランソワの頭から足先まで、全身を値踏みするような視線を送ってゲスい笑みを浮かべ言った。
「え……? そ、それって、まさか――」
フランソワは表情をこわばらせてカタカタ震えだす。
威勢のよかった態度が一瞬にして消沈した。
「フッ!」
「…………」
スチルは『どうっすか? 生意気な輩に一発カマしてやりやしたぜ!』みたいなドヤ顔をこっちに向けてきた。
あのさ、ややこしくなるから余計な口挟まないでくれる?
「そういえば!」
「ん?」
フランソワがキッと目を吊り上げて叫んだ。
彼女は何かを思い出したらしい。
スチルの趣味が悪い冗談からはもう切り替えたようだ。
切り替え早いな……。
「あなた、領民にあたしたちを迫害するよう仕向けてるでしょ!」
藪から棒にとんでもないことを言い出した。
金の無心に失敗しそうだからってヤケクソで何ほざいてんの?
「そんな陰湿なことしねえよ……」
とんだ被害妄想である。
俺をどれだけ悪人に仕立て上げたいのか。
「嘘よ! だって町の人たちがなんかよそよそしいもの!」
「そりゃあ、領主の座を奪おうとしたやつの一派なんだから遠巻きにされて当然だろ」
呆れ混じりに言うも、彼女にはあまり響いていないようであった。
「よそよそしいだけじゃなくて、明確に敵意の視線を送ってくる人たちもいて怖いのよ。冒険者ギルドの食堂でお弁当を食べてたら、子供たちにまで『いやなやつらがメシ食ってるぞ!』って言われたし……」
子供たち? ギルドにいるなら回復魔法を担当してる子供たちか……?
子供がそういう発言をするのは少々問題ありだな。
そこは後で調べておこう。
いや、大人でも褒められた行為じゃないから問題だけど。
「くぷぷ……いやなやつらがメシ食ってるって辛辣すぎ……!」
スチルが俯いて腹を抱えながら堪えるように笑っている。
こいつ、ほんまええ性格してるな……。
自分も子供の無邪気な残酷さに泣かされたのに。
「ねえ、どうにかしてよ! どうしてあたしたちがこんな目にあわないといけないの!?」
フランソワが叫んだ。
スチルのろくでもない態度には気づいてない様子。
「だから、俺は関知してないんだって」
「そんなの無責任よ!」
いや、これってお前らが責任に対するツケを払っている状況では……?
その所在を俺に求めないで頂きたい。
確かにコイツの知らないところでハスミが起こしたことではある。
しかし、あいつを全肯定して増長させた部分に責任がまったくないとは言えないはずだ。
「まあ、真面目に慎ましく暮らして領民たちからの信頼を積み重ねていくしかないんじゃないの? ニコルコに住み続けようと思うならさ」
信頼度ゼロどころかマイナスからのスタートだけど。まあ、命に危険が及ぶようなことになりそうだったら周辺の警備を強化するくらいはしてもいい。自業自得な連中のために騎士を派遣するのもなんだかなぁって感じだけど。
治安には変えられない。
「うう、あたしたちはどこに行っても居場所がないんだわ……。共和国でも最初は『大変だったね』って歓迎してくれた町の人たちもなぜかだんだん冷たくなっていって、結局は居づらいから土地を転々とするしかなかったし」
己の境遇を嘆くモードに入ったフランソワ。
理由もなく迫害されているような言い草だが、原因は明白なんだよなぁ。
「中にはもう頼むから出て行ってくれとか言ってくる酷い領地もあったの!」
「…………」
そりゃ、金食い虫の無駄飯食らい軍団だってわかったら同じ待遇で扱うわけがない。
なんか建設的な話できなさそうだし帰って頂こうかな……。
俺がそういう判断に傾きかけていると、
「ヒョロイカ様、部屋に入ってよろしいですかな?」
扉の向こうからジジイの声がした。
この声のジジイはシルバリオンか。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに
試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。
そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。
両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。
気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが……
主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる