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『全マシ。チートを貰った俺』編
第41話『素直に感謝です。』
しおりを挟む『ゆ、ゆう……勇者ですってぇ!?』
うほほほ、驚いてる驚いてる。
『で、では、魔王様たちはこの世界に来たばかりのあなたに返り討ちにあったと……? 信じられない……。くっ、何が勇者を倒すなら召喚したばかりがいいですか。これではわざわざ陣中に招き入れただけ……』
なんかぶつぶつ言ってる。
ほれ、その辺の事情も俺にすべてゲロっちまえよ?
楽になれるぞ、してやるぞ?
『……ひょっとして、先ほどの土魔法もあなたの仕業なのですか?』
こいつ、俺の質問はスルーして訊いてくるばっかだな。
そろそろいい加減にしてほしい。
「ああ、そうだよ」
でも律儀に答えちゃう俺。
広岡二郎の半分は優しさでできている。
『くぅ……てっきり複数の魔法使いを使い潰して発動させたのかと……まさか一人の人間……いえ、勇者によるものだったとは……』
「そろそろ吐く気になったか? お前が死なないよう手加減するのも大変なんだ」
ほれほれ、と圧倒的な力の差を知らしめるように俺は言う。
『舐め……舐めるなよ、小僧がああああああああ――ッ!』
うおっ!?
キーンとする大きな鳴き声。
やばい、ヤケクソになりやがった。
追い詰め方を間違えたわ。
『魔王様がいない、ヘルハウンドもいない! なのに勇者はいる! 我々の魔王軍はもう終わりだ! だったらせめて、最後の足掻きをしてやる!』
懲りずに攻撃してくるつもりか? 相当擦り減ってるのにご苦労なことだ。俺はチートで結界を張り、ヒザマの攻撃に備える。
『馬鹿め! あなたに私の攻撃が通じないのは知っていますよ! 私が狙うのは……』
「…………?」
ヒザマの放った業火は俺の横を通り過ぎていった。
外したのか? いや違う……しまった!
『フフ、勇者よ! あなたを倒すことはできなくとも……あなたの守るべきものは奪わせてもらいます!』
狙いは街か! まずい!
まあ、住民はもうみんな避難してるけど……。
当たり前だよね、戦場になるかもしれないんだから。
一応、慌てて振り返ってみる。
――バシュゥ……
『!?』
「!?」
俺とヒザマは一緒になって驚いた。
ええ? ヒザマの炎が消された?
攻撃が当たった瞬間、半透明な壁のようなものが現れて防いだように見えたが……。
ヒヤっとしたぜ。
一体、誰があんな結界っぽいのを出したんだ?
…………。
遠くにいる人影。
デルフィーヌが俺に向かって親指をグッと立てていた。
マジで? デルフィーヌってあんな魔法使えたんだ。
調子いいって言ってたけど、そんなもんどころじゃないだろアレ。
なんか確変起こってる? 実力だったら申し訳ない。
『ぐおおおおおおおおッ! バカな!? 私の攻撃を人間風情が防いだだとおぉおおおおぅうぅおおお――っ?』
荒ぶるヒザマ。もう口調を取り繕う余裕もないっぽい。
いや、しかし油断しちまったな……。
危うく余計な被害を出すところだった。
近頃はチートでサクサクなんでもできてたから注意力が散漫になってたのかも。
足元を掬われない程度に自制はしてるつもりだったんだけど。
まさかデルフィーヌに尻拭いをしてもらうことになるとはね。
彼女のおかげで住民たちに後からクレームをつけられずに済む。
素直に感謝です。
『フフフ……この手段だけは取りたくありませんでしたが、致し方ありません。これ以上はどうにもならないようです……』
攻撃を想定外の相手に防がれたヒザマは震える声で言葉を紡ぎ出す。
まるで捨て身の何かをするような言いぐさ。
『もともと魔王様やヘルハウンド、超級魔物たちが行方不明になった時点で我々は詰んでいたのです。魔王軍以外の魔物も引き連れて起こした一か八かの総攻撃が失敗に終わった今、私が私であり続ける必要はもうないでしょう……』
いやいや。諦めんなよ。もっとしぶとく生きていこうよ!
せめて国の裏切り者だけでも教えてからにしてよ。
さっきから俺ずっと訊いてるじゃん。
『今から行うのは私の最終奥義です。これを使えば私は最強の力を手に入れる代わりに、知性のないただの魔獣となる……。魔王軍で一番気品に溢れていた私の自我と引き換えに、あなたがたを道連れにして差し上げます』
何が気品だコノヤロー。鳥肉の分際で。
そして、
――ヒザマの弱っていた炎が再び強く燃え盛り出す。
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