全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-

のみかん

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『全マシ。チートを貰った俺』編

第49話『ジロー・ヒョロイカ辺境伯』

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「父上! 我がエアルドレッド家も信用できる他の貴族に呼びかけてハルンケア8世の非道を公国……いえ、大陸中に広めましょう! シリウス氏の名誉を! ヒロオカ殿の正しい称号を取り戻すのです!」


 エレンは鼻息を荒くしてブラッド氏に詰め寄る。
 こいつこんなキャラだったっけ。
 王の所業を知って、真面目さのメーターがおかしなところに振り切られてるのかな……。

 少し怖いわよ?

「…………」

 ブラッド氏は難しい表情で黙り込んでいた。
 何考えてんだろ。
 無言のまま数秒が経過して――

 やがてブラッド氏は重々しく息を吐くと、

「陛下にも、やむにやまれぬ事情があったのだと信じたいが……それでも許されることでないのはわかっている」

 …………。

「少しだけでいい。考える時間をくれ。あまりに唐突過ぎて頭がついていかんのだ」

「ち、父上……」

 エレンはブラッド氏を悲痛な面持ちで見ていた。
 大丈夫さ、彼なら悩んでもきっと正しい答えを出してくれる。
 何が正しいかなんて……人によって違うかもしれないけどさ。


「ずずずっ」

 
 ベルナデットの茶を啜る音が部屋に響いた。
 この事態でも落ち着き払ったマイペースな態度……。
 大物に育ったものだ。



 ブラッド氏は思い詰めた顔をしながら一足先に部屋に退室していった。
 首吊ったりしないかな、大丈夫かな。
 あの後ろ姿はなんか心配だ。


◇◇◇◇◇


 デルフィーヌが涙と鼻水を袖で拭い、バシンとテーブルを叩く。

「ジロー、爵位を受け取った理由とか、今後の方針は大体把握したわ! けど、一体どうするつもりなのッ!?」

 デルフィーヌ君、ど、どうしたんだ、いきなり大声出して――

「なんの話だ?」

 立ち直ったかと思えば藪から棒に……。
 どうにかしなくてはならんことだらけで主語を口にしてくれないとわからんぞ。

「賠償金よ! あなたが肩代わりをしてくれた! 100億なのよ!」

 切羽詰まった様子でデルフィーヌが言う。
 ああ、それかぁ……。

「まあ、どうにかなるんじゃね?」

「なっ――!」

 デルフィーヌはヒステリックに叫んだ。

「馬鹿なこと言わないで! あなたに与えられた領地は『あの』ニコルコなのよ! あんな何もない僻地じゃ100億ゴールドなんて絶対に稼げるわけがない!」

 ちょっと悲観的になりすぎてるんじゃない?
 俺が楽観的なだけですか?
 異世界に来てからそういう思考に傾いてるのは否定できないけど。

「ニコルコってそんな酷いところなの……?」

 そこまで言うからには少し気になるよなぁ。
 ちらっとエレンたちに視線を送って確認してみる。

「ニコルコは周辺を森で囲まれ、特に収入となるような資源もなく、領民はほぼ自給自足に近い暮らしをしている長閑な辺境の領地だな……」

 エレンは極力目線を合わせないようにしながら言いにくそうに答えた。
 ほーん? 自給自足の辺境……。
 ひょっとして田舎なのん? 褒賞とか言って島流しされた感じですか?

 確かにそんな生活が主流なら金は稼ぎにくいかもなぁ……。
 けど、暮らしてみたら案外いいところかもしれないじゃん?

「田舎でスローライフ。ちょっとくらい経験してみるのも悪くない」

 思わず口から言葉を出してしまう。
 するとデルフィーヌが身をガタガタと震えさせていた。
 信じられないものを見る目で俺を見ている。

「どうしてジローはそんな暢気でいられるの……!? 普通ならもっと……あるでしょ……? うう、頭とお腹と喉が痛い……!」

 眩暈を起こしたように頭を押さえ、デルフィーヌはテーブルに突っ伏した。

 うむ、しっかりして見えるが彼女は日本ならJKをやってる年頃の娘だからな……。

 ストレスを感じて体調に異変をきたしてもなんら不思議ではない。

 むしろ精神的に辛い状況でここまでよく耐えてきたと言うべきか。

「大丈夫か、デルフィーヌ。つらいなら休んでてもいいんだぞ?」

「…………」

 白けた目で見られた。
 ストレスの一端に俺も加担してるとか、そんなことはないはずだ。

 たぶん、ないと思う……。


 結局、資金繰りについては未定のまま話は終わった。
 ダイジョブ、行ってみりゃなんとかなるよ。




 後日。
 王城で正式な叙勲が行なわれた。


「ジロー・ヒョロイカに辺境伯の爵位とニコルコの地を授ける! ヒョロイカ卿、前へ!」

 大臣によって名前が読み上げられる。
 ……ちょっと待て!
 だから、ヒョロイカじゃなくてヒロオカなんですけどォ!?

「ヒョロイカ卿? 早く前へ」
「……はい」

 こうして、ハルン公国にヒョロイカ辺境伯家が新しく誕生した。


 ――してしまったのである。

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