大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第13話 魔王討伐戦 前編

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 季節はめぐり、本格的な夏がやってきた。
 この国は夏の湿気は低く、カラリとしていたためソルにとっては大分過ごしやすかった。
 彼の故郷では夏場は湿気が高くてじめじめとした蒸し暑さがあったのだが、湿気が無いだけ随分と助かっている。



「なるほど。魔王討伐という事ですか、騎士団長どの」

 王城にあるとある部屋の中でソルは王国騎士団長ライネルと話をしていた。これから行われる新米魔王の討伐に加わらないかと言う誘いだ。

「ソル、お前は魔王との戦いに長けた能力を持っていると聞く。それを使って魔王討伐に協力してほしい」
「良いだろう。ただし、俺がきちんと仕事をしたら報酬はしっかりと払ってくれるよな?」

 話の内容は肝心の報酬関係になる。



「ああ、分かってる。魔王を討伐出来たら報酬として金貨5枚を払う。
 それに加えて、国内に出回っているお前の手配書をすべて取り下げる。それでいいな?」
「分かった、それでいい。くれぐれも手配書を取り下げた直後に新たな手配書を出す。なんていうセコいマネはしないでくれよな。
 少なくとも俺が魔王にならなければ2年間は新たな手配書を回さない事を条件に付け加えてくれ。カネの支払いを安くしても構わん」

 ソルはここへ来る前の昔にやられた「セコいマネ」をこの国の王がやらかさないように釘を刺す。

「国王陛下がそんな卑劣なマネをすると思うのは心外だな。
 陛下は誰であろうと、それこそ泥棒だろうがダンジョンマスターだろうが約束を交わした以上はきちんと守るお方だ。疑うのなら我が国への侮辱になるぞ」
「オーケーオーケー分かった、信じよう。くれぐれも裏切る真似はしないで欲しいな」

 ソルはライネルから差し出された契約書にサインを入れた。



 ソルが契約を交わして2日後の早朝、民は朝食を終えて1日の仕事が始まろうとしている頃。
 兵舎前に魔王討伐のために集められた槍兵12名、弓兵6名、魔術兵2名が待機していた。
 そこへ、集合時刻10分前に金属製のチェインメイルを着こみ、兜を付けて完全武装をしたソルがやって来た。

「お前は……ソル=デイブレイク! 何のために来たんだ!?」

 魔王討伐戦に参加する兵士たちが槍を向ける。お尋ね者のソルがなぜここにいるんだ!?

「待て。今回の魔王討伐では彼は味方だよ。昔から『泥棒の手口を一番よく知っているのは同業者の泥棒』って言うからな。
 魔王討伐には「魔王の同類」なダンジョンマスターが最適なのさ」

 集合時刻15分前には既にいたライネルは、怒りの矛先をソルに向ける部下を落ち着かせる。

「『魔王の同類』ねぇ。厳密には違うんだがお前たち真っ当な人間からしたらそう思われても仕方ないか……」

 ソルは『魔王の同類』という扱いに不満げだったが、そう言われても仕方ないか。と慣れた様子だった。



 王都の郊外、隣町まで続く道のすぐそばにあった、今回討伐する魔王がいるダンジョンの入り口の中へと討伐隊は入っていく。
 地上の晩春から初夏にかけての穏やかな陽気はそこには無く、湿気の多いじめっとしてヒンヤリした空気が彼らを出迎えた。
 先頭を歩いていたソルはダンジョンに入るなり通路の壁に両手を当てて何かをしていた。

「ソル、お前何をやってるんだ?」
「『ハッキング』さ。コイツは魔王に「成りたて」なだけあってセキュリティがザルだな。10秒待ってくれ、地図を引き出す」
「地図、だと? まぁ10秒くらいなら待ってやるぞ」

 ソルに対し随分と偉そうな口を利く魔王討伐隊員はそう言って彼の行動に許可を出した。



「よし」

 きっちり10秒後、ソルはそう言って壁から手を離す。と同時にあらかじめ持ってきた羊皮紙に地図を書きだした。
 ペンの走りには一切の迷いが無く、まるで暗記しているかのようにすらすらと書いていく。書き終えるとそれを皆に見せた。

「これがこのダンジョンの地図だ。これから行く入り口から最も近い部屋は攻撃用の部屋で魔物も配置されている。それに、ここで戦闘が開始されると援軍が来る仕掛けになっている。
 そいつらを全滅させたら相手は丸裸だ。部屋は突入次第ハッキングして俺のコントロール下に置く。後はがんばれ。まぁ騎士団長ライネル殿がいるから大丈夫だとは思うが」

 討伐隊たちは地図を見ながら通路を歩き、部屋にたどり着く。扉を開けると一斉に中に踏み入る。
 最後の一人が部屋に入ると同時に扉が閉まり、中で待機していたミノタウロスと人虎の2匹が構える。



「コロ……ス……コロ……シテ……シテ……ス……コロコロ……ス……」
「コロス……コロ……シテ……シテ……コロ……ス……」

 ミノタウロスと人虎の2匹がぶつぶつとつぶやきながら襲って来る。

「15秒だけ時間を稼いでくれ! そうすれば部屋をハックできる!」

 討伐隊最後尾ではソルがハッキングを仕掛けていた。

 部屋の壁や天井に仕掛けられた水晶のような発光体からマナエネルギーで出来た光の粒子が放たれる。
 1発1発の殺傷力は低いが人体のマナエネルギーを直接攻撃し空中に散らしてしまうため疲労がたまっていく上に、注意をそらせて本命であるミノタウロスや人虎の一撃を食らわせるには十分だ。

 ミノタウロスの持つ大斧の一撃は、鎧を着けていようが兜をかぶっていようがそれを貫通し、防具でどうこうできる次元を超えている。そんなもの関係無しに一撃で死をもたらすものだ。
 細心の注意をもって回避する。



「そこだ!!」

 ライネルが騎士団長の名に恥じぬ活躍を見せる。ミノタウロスの一撃を回避するとカウンターを狙って相手の二の腕を剣で斬る。

「!!」

 声こそあげなかったが、痛がるしぐさを見せると同時に傷口から血がだらだらと流れ落ちる。当たりだろう。

「……よし! ハック完了! 行け!」

 直後、ソルが声をあげると同時にそれまで魔王討伐隊めがけて攻撃を放っていた部屋が今度は魔物達めがけて弾を撃ちはじめた。



「!?」

 部屋が突如自分たちを狙い攻撃し始めたことに敵は戸惑い、スキをさらす。そこを兵士たちが突き、胸当てだけしかしていなかった人虎の無防備な腹と腕に何本もの槍が刺さる!

「アリ……ガト……」

 相手は倒れると同時に光に包まれ姿が消えた。ダンジョン内の魔物は倒してもなぜか死体を残さず消えてしまうのだが、はるか昔の頃からの当たり前なので誰も気にしない。



「右の部屋からケンタウロスが1体来るぞ! こいつを倒せば魔物は全滅だ!」
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