大地のためのダンジョン運営

あがつま ゆい

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ダンジョンマスターと魔王

第15話 魔王討伐戦 後編

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「それにしてもこの地図、本当に役に立つな。冒険者にマッピングさせたものとは大違いだな」

 いわゆる「マッピング」作業は人力でやると縮尺の違いや勘違い、方向違いで同じダンジョンに潜った同じパーティでもメンバーごとに描いた地図が違ってくるものだ。
 それとは大違いでソルが「ハッキング」して得た地図は正確そのもの。部屋の配置や構造が、書いてある通りの物だった。
 それのおかげでダンジョンの最深部、魔王の部屋まで一切迷うことなく討伐隊は進軍した。



「……来たか」

 魔王の部屋には白いヒゲと髪をしている割には肌のツヤや声の質は20代、いやそれよりも若く思える青年がいた。
 黒いローブのような服を着た彼の身体は、人間だった頃は60歳を超えていた。といういつ死んでもおかしくない年なのにシミやシワ一つない若々しいもので、
 右手に持っていた剣は白いオーラのようなもの、高密度ゆえに可視化された魔力マナエネルギーおおわれていた。

「魔王だな。数の暴力を使わせてもらうが文句は言うなよ」
「愚か者め。魔王の力を知るがいい!」



 戦闘が始まる。弓兵は矢を放ち、魔術兵は呪文を唱えて魔法で攻撃を仕掛ける。しかしそれらは回避され当たらないか、当たっても効いてる素振りすら見せない。
 相手の俊敏な動きはとても60を超えた人間のモノとは思えない。

「このっ!」

 槍兵が魔王めがけて持っている武器で身体を攻撃しても金属製の板を突いたような手ごたえが返って来て、効いてるようには思えない。
 逆に相手からの反撃で剣の一振りを胴体に食らってしまう。

「ぐっ!」

 その斬撃は余りにも強い衝撃で、兵士はバランスを崩しその場に尻もちをつく。斬られた胸元を見るとチェインメイルの鎖が何本も切れていた。
 これは何発も食らったらまずいな……そう思いながら立ち上がろうとするが、魔王はそのスキを見逃さずに追撃を入れようとする! が……。



「何してる早く立て!」

 ソルが間に割って入り、兵士が立て直す時間を稼ぐ。魔王が振り下ろした剣の斬撃を彼は愛刀で防ぐ。


 ガキン!


 という剣と剣、金属と金属とが勢いよくぶつかる音が響く、と同時にソルは「相手の身体のバランスを崩させる」目的で胴体に蹴りを入れるが、全く動じない。
 逆に魔王がソルの顔面、正確には鼻の頂点めがけて拳で殴りつけてくる。

「ぐうっ!?」

 ソルは兜を被ってはいるが顔がむき出しなので直撃を食らってしまう。幸い血が出ない程度だがそれでも急所への一撃は堪えるのか、
 兵士が立って空いたスペースまで後ずさりする。



「ソル! 大丈夫か!? それでもダンジョンマスターか!?」
「あ、ああ。さっきは仲間のカバーに回ったからな。ここからは本気で行くぞ」

 ライネルからの声に対しそう言ってソルは構える。

虚無きょむの構え」

 その瞬間、彼の気配が戦場からスッと消えた。



「我が名はライネル! 魔王よ! 私が相手だ!」
「フン。数の暴力で押してるくせに決闘のつもりか? この国の騎士団長とやらは随分と身勝手な奴だな、笑わせる」

 魔王とライネルが改めて刃を交える。魔王が魔力マナエネルギーをまとった剣を振り下ろすとライネルはそれを盾で受け止め、カウンターで相手の胴体めがけて斬りつける!
 が、鉄製のプレートメイルを斬ったかのような感触が返って来て効いているようには見えない。
 魔王と距離を取った瞬間にライネルはちらり、と盾を見る。王国の紋章が刻まれた鉄製の盾にクッキリと斬撃の跡が残っていた。

(何度も直撃を受けるとまずいな……)

 それを見て彼は悟る。兵士たちはまだいるし、自分も無傷だが、早急に決着を付けないとこちらが負けるだろう。



 魔王はそんなライネルの事はお構いなしに攻めの手を緩めない。次いで草をぎ払うように横の斬撃を繰り出す。
 ライネルは盾で受け止め相手の左腕を斬りつける!

「!!」

 魔王の表情が歪み、腕から出血と同時に白い魔力マナエネルギーが噴き出る。どうやら効果ありだろう。

「チッ。見くびっていたよ騎士団長ライネルとやら」

 魔王は回復魔法で腕の傷を癒す。一瞬で出血は「ピタリ」と止まった。人間の魔法ではありえない程の急激な治癒力だ。
 ライネルと3度目の攻撃を繰り出そうとした、次の瞬間!!



「なっ!?」

 いつの間にか魔王の背後に回っていたソルの刀が相手の右腕を斬り飛ばしていた。
 血液と共に体内に蓄えた膨大な量の魔力マナエネルギーが傷口からあふれ出し、いくら魔王といえど致命傷なのは誰が見ても明らかだ。

(……バカな! なぜ気づけなかった!?)

 魔王も人間だった頃を含めて場数は踏んでいて戦いには慣れている。なのに視界にも一切入らなかったし、殺気や気配を察知することも出来なかった。
 完全に背後に回られているのを「一切感知できなかった」のだ。一体、なぜ?
 魔王の頭の中には巨大なハテナマークが浮かぶが、その疑問が晴れることは無かった。次いでライネルが繰り出した斬撃で首を斬られ、頭部と胴体がお別れした。



「やったか!?」

 騎士団長が仕留めたのを見て討伐隊員が声をあげる。

「ああ、でもまだ生きている。頭と胴体をくっつければ元どおりだ。日光に浴びせるまで油断するなよ。
 お前たちは魔王の身体が動けないように縄で縛って運べ。首は俺が持つ」

 そう言って彼は魔王の頭部を剣で刺して持ち運ぶ。兵士たちは言われた通り縄で腕や脚を縛り、胴体を担いで運んだ。もちろんソルが切断した右腕も忘れない。



 ダンジョンから運び出して日光を浴びせると、魔王の身体が崩れ、チリとなって消えた。
「不老」という自然の摂理から反するものは自然の力によって浄化される。というわけだ。

「これで終わりだ」
「そうですか。ところでダンジョンはどうなります?」
「主を失ったダンジョンは2~3日経てば自然と土が戻るからそのまま放置して大丈夫だ」
「へぇ。そうなんだ」

 今回の魔王は「なりたて」だったのもあって死者が出る事なく魔王討伐は終わった。

「お前たち、よくやってくれたな。今日と明日は休んでいいぞ、英気を養ってくれ」

 兵士たちはじめじめした暗い地下での仕事から休みが出た開放感に浸っていた。
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