雷に打たれた三流絵師、覚醒して神絵師になる。俺の事を追い出した皆様は土下座して謝罪する動画を公開したけどその程度で許されると思ってるの?

あがつま ゆい

文字の大きさ
4 / 12

第4話 大出世

しおりを挟む
「!! こ、これは!」

 世間では休日にあたる日、彼は龍護りゅうごの描いた絵と出会い、その絵を一目見るなり彼には「脳味噌や脊髄に直接電流を流されたかのような」衝撃が走った。
 彼は迷うことなく仕事用のスマホを手に取った。

「もしもし、私だ。休み中すまないが大至急『Ryugo』という絵師について調べて欲しい。特に今の勤務状況は念入りにな。私の構想の中にあるピースにピタリとはまる逸材だ!
 急がないと持っていかれるぞ! 10年……いや30年に1人、いるかいないかの才能だぞ! 今すぐ調べてくれ!」



◇◇◇



「? 何だこれ?」

 龍護りゅうごがスマホを手に取ると、そこには1通のメールが送られていた。

「? エンペラー、ゲームス……? まさか、あのエンペラーゲームス!?」



 エンペラーゲームス……「キングを超えるゲーム会社になれ」という願いを社名に込められたその会社は、
 その名の通り日本のソシャゲ市場では売り上げ2年連続1位の、まさに「ソシャゲ界に君臨する皇帝エンペラー」と言える超巨大企業だ。



 そのエンペラーゲームスよりメールが送られていた。内容は自称エンペラーゲームスの社長からの「ぜひとも君が欲しい! わが社に来てくれないだろうか!?」という熱烈なラブコールだった。
「とりあえず会って話そう」とメールを打ったところ「ぜひともそうしたい」と返事が来て、後日会社の社長室に招かれることとなった。
 ちなみに龍護りゅうごは知らなかったが社長室に招くというのは「エンペラーゲームスにおける相手に対する最大級の敬意」なのだそうだ。


 メールが届いてから5日後……


 都内有数の一等地、そこにエンペラーゲームスの本社はあった。地元ではまず見ない高さのビルにひるむ。

「『Ryugo』です。社長さんからご用件をいただき参りました」

「ああ『Ryugo』さんですね、話はお聞きしています。こちらを首に下げてお入りください」

 とはいえビビりっぱなしではいられない。守衛に話しかけて来賓らいひん用のIDカードを受け取り、中へと入っていった。



「あなたが『Ryugo』さんですね? 社長がお待ちです。ついてきてください」

 龍護りゅうごが社内に入ると社長の秘書らしき女性の案内で社長室の前まで連れられやって来た。彼は意を決してドアを開ける。

「おお! 君が噂の『Ryugo』君か! いやぁ会いたかったよ!」

 中にいた30代かそこらの、この規模のゲーム会社社長としては非常に若い方に入る男が龍護りゅうごを出迎える。
 いかつい腕時計こそしてなかったが、スーツも靴もネクタイに至るまで1流の仕立てで、いかにも「頂点にいる」人間の姿だった。



「今回わざわざ君を呼んだのは他でもない、次期プロジェクトのためだ。実を言うとだな、私の構想にある次回プロジェクトのキャラが、まさに君の描いた絵そのものなんだ。
 私は君の事をぜひとも欲しい! 君にはプロジェクトのチーフグラフィッカーの地位を用意しよう。どうだ、やってくれるか?」

 今まで背景ばかり描いていた自分が急にチーフグラフィッカーの大役に!? 信じられないようなオファーだった。

「実を言いますと今まではグラフィッカーをやってたんですが、背景やモブキャラばっかりで主役キャラの絵なんてやった事ないですし不安なんです。
 そんな私にチーフデザイナーなんていう大役が務まるかどうか不安で……」

「なぁに安心しろ。社内には教育機関があるから、みっちり教育を受けた後での仕事だから大丈夫だろう。あとは報酬だ。いくら欲しい? 言い値で言って構わんぞ」

 言い値でいい。その言葉を聞いて龍護りゅうごは散々迷った末に答えを出す。



「1000万は欲しいです」

「よし分かった1000万だな。いいだろう。よろしく頼むぞ」

 そう言ってエンペラーゲームス社長はスッと右手を出す。龍護りゅうごは右手でそれをガッチリと握った。



 再就職した際の諸々の手続きを経て数日後。龍護りゅうごの初出勤の日がやって来た。会社に着くなり彼には世界でも最高級品質の机と椅子に、最新の3画面ゲーミングPCが与えられた。

「こ、こんな豪華な設備、本当に俺が使って良い物なんですか?」

「当然だ。君にはそれだけの価値があるからこそ、用意したんだ。それと、しばらくは研修だな。1ヶ月もしたらチーフグラフィッカーとして動けるようしっかりと教育するからついてきてくれ」

「は、はい!」



 龍護りゅうごの研修が始まった。1ヶ月で平社員からチーフグラフィッカーになるよう教育されるので、勉強することや覚えることもとても多くて厳しかったが、それでも充実した時期だった。
 丸山ゲームスでは社員の誰からもバカにされ疎まれていたのに、今では誰もが自分の事を特別な存在として見てくれるため、仕事はキツイが随分と居心地のいい場所だった。

「やぁ龍護りゅうご君、調子はどうかね?」

 エンペラーゲームス社長が様子を見に来た。彼にとってどうやら龍護りゅうごは相当なお気に入りらしく、多忙な日々を送っているというのに暇を見つけては様子を見に来ていたのだ。

「結構充実していますね。昔は今ほど絵が上手くなかったんでリテイクを何度も出されてたりしましたね」

「なるほど。お前ほどの絵をリテイクとは相当な贅沢だな。まぁいい、何かあったら遠慮なく私に言ってくれたまえ」

 龍護りゅうごの様子を見て社長は上機嫌のまま去っていった。


- 1ヶ月後 -


 給料日になり、龍護りゅうごは通帳を見ると……

「あれ……?」

 給料として1000万が口座に入ってる。
 どうやら社長は「月給」1000万と勘違いしているらしい……「年棒ねんぽう」1000万という意味で言ったのに。言いかけたその一言を龍護りゅうごは飲み込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...