追放→ざまぁwww こんぴれーしょんぱっく ~追放もの短編集めました~

あがつま ゆい

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天界の掃除人 ~ギルドを追放された直後神様に拾われて天界の掃除人に。あれぇ? 古巣の皆さま、お前要らないクビだって言ってたよね?~

第3話 ストレスに悩まされる日々

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「天界の掃除人」がギルドを追放されてから2週間が経った……。

「嬢ちゃん、そろそろ仕事が終わりだろうから俺と飲みに行かねえか?」

 夕暮れ時のギルド『ドラゴンズテイル』の建物内で、明らかにガラが悪く成績も評判も低い冒険者が受付嬢に絡んでくる。酒でも飲んでいるのか息が酒臭くて顔も赤い。

「お断りします。私はこれでも結婚して子供もいるのよ?」

「へぇ~、子持ちの人妻か。余計にそそるじゃねえか。だったらなおさら飲みに行かねえとな! ぐへへへ……」

 酔っ払いがカウンターの中に入って受付嬢の胸を揉もうとするが……。



「いい加減にしなさい!」

 彼女は彼のみぞおち、そして顔面に1発ずつ鉄拳を入れて撃退する。気を失って倒れた冒険者はそばにいたギルド職員によって外へと運び出された。

「まったく、最近こんなのばっかり。どうなってるのかしら」

 彼女の感覚からしたら、ここ最近こういう連中が急に増えたように感じる。ギルド職員の規約や法律上の正当防衛の範囲内とはいえ、暴力を振るうことも増えた気がする。



「お姉さん。最近イライラしてるみたいだけど大丈夫?」

 いわゆる「雑用系」と呼ばれる誰でもできる安全で簡単な仕事で、その分報酬の低いクエストをメインにこなす少年冒険者に彼女は声をかけられた。

「あ、あら君ね。クエストは終わったの?」

「うん。その報告のために来たんだ……お姉さん、前より怒りっぽくなってるけど大丈夫? 何かあったの?」

「いや、何もないけど私なら大丈夫よ。心配しないで」

 彼女は「こんな少年にも分かるようでは相当ストレスがたまっているんだろうな」と思った。
 しかし仕事も私生活も変わったことは何も無い。いつものように生活しているだけだ。なのになぜ急に……?



「うぐぐ……い、胃が……」

 ギルド長は急に胃が痛くなる日々を過ごしていた。直属の部下である支部長が運営するギルドの成績が急降下したり、末端の冒険者がもめ事を起こしたり……。
 今までは特に気にすることなく作業していたことがここ2~3週間ほどは『ズシン』と肩にのしかかってきている。彼は胃薬をがぶ飲みしつつ仕事をこなす日々を送っていた。



「ギルド長! 重大な報告です!」

「今度は何だ!? また末端の連中がやらかしたのか!?」

「副ギルド長がストレスによる胃痛を理由に1週間程休養をいただきたいと申し出ていますがいかがいたしましょうか? 医師からの診断書が出ていて、いわゆる『ドクターストップ』と呼べるものです」

「!? 何だとぉ!?」

 あの鉄の面と呼ばれる自分以上に図太い神経をした副ギルド長が精神を病んで医者からストップがかかるほどの重症だと!? 彼には信じられん話だった。

「アイツまで! まぁいい、医者が止めさせるというのなら仕方ない。代役を立てるから彼には休息をとらせろ」

 胃痛に悩まされながらも彼は指示を出した。こういう時でも冷静沈着な判断をしなければいけないし、それができるというのはさすがギルド長である。



「う~……やっと終わった」

 その日のギルド業務は無事終わり、ようやくギルド長は解放された。

「……何でこんなに仕事がつらくなったんだろう。分からんな」

 彼は少年の頃から丁稚奉公でっちほうこうでギルドにかかわり、その後3年前にはギルド長になるまで出世した男だ。ギルド運営は人生そのものであり、そこに苦痛も何もなかったはずだった。



(それにしても……何でここ最近急にストレスを感じるようになったんだ? 前は平気だったのに?)

 彼は分からなかった。今までは平気でこなしていた仕事が、なぜ最近になって急につらくなったんだろう? 考えると掃除ばかりしていたアイツの顔が思い浮かぶ。
 彼がギルドを追い出された時期とストレスを感じるようになった時期がぴったり重なる。

(……まさかな)

 だが彼は思い浮かべると同時に全否定する。あの成長性まるで無しの落第生がいたおかげで? そんなバカな話があるわけがない、俺はいったい何を考えているんだ? と。



 この時のギルド長は気づいていなかったが、彼の考えはズバリ当たっていた。
 3年間掃除係をしていた彼が、ギルド員のストレスを掃き清めていたことでストレスを感じることなく仕事ができていたことに気づくのはもう少し先の話である。



【次回予告】

国が半ば威信のために建造した世界最高性能のステータス解析装置、そこでようやく彼らは掃除スキルに気がついた。

第4話 「ようやく掃除スキルに気づいたギルド職員たち」
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