3 / 67
天界の掃除人 ~ギルドを追放された直後神様に拾われて天界の掃除人に。あれぇ? 古巣の皆さま、お前要らないクビだって言ってたよね?~
第2話 戦神に酒の神。掃除の日々は続く
しおりを挟む
「えーと、今日は戦神に酒の神に……」
女神イリアスに雇われて本格的に仕事を始めてから1週間。天界の掃除人として星の海の上に浮かぶ天界に点在する神様の住居である神殿をめぐり、中を掃除するのにもすっかり慣れた。
あと女神イリアスと名乗る女は本当に女神イリアスだった。後日人間界の神殿で見た女神イリアスを模した彫像そっくりそのままという姿だったし、
何よりこの天界に連れてくる力があるというのは本物であると信じるに値するものだった。
「おお、お前か。女神イリアスが拾ったという掃除人は」
この日は最初に世界各地の騎士や傭兵からあつく信仰されている戦神の元で仕事をする。戦神なだけあって筋肉質で見事な逆三角形ながっしりとした身体で、漂う風格も堂々たる立派なものだ。
神様の住居というよりは武器庫かと思う位に、所狭しと武器が陳列されている神殿で掃除を始める。ホウキでホコリを掃いて雑巾で床を磨く、3年間ギルドでやってきたことなので慣れたものだ。
テキパキと掃除をしている最中に家主である戦神が語りかけてくる。
「いやぁ、君が来てくれるのを待ってたんだ。自分でこういうのもなんだが正直私は戦う事は得意なのだがそれ以外は何も出来ん戦バカでな、生活能力が皆無なんだ。
この前珍しく自分で神殿の掃除をしたら、捧げものとして信者から飾りだと言ってもらった焼き物の皿を落として割る始末だ。結構気に入っていたのにバカな真似をしたもんだと後悔したよ」
「は、はぁ……そうですか」
神話や伝説の類では絶対に語られない、いや『語らせない』内容だ。神様というと文字通り「雲の上の人」というイメージがあるがそれは人間たちが勝手に美化しているだけであって、
実際には人間と同じようにドジを踏むし失敗もする、というかなり人間臭い部分も多々あるのだ。そうこうしている間に手際よく掃除を終える。
「終わったか。私がやるよりもかなり早かったな」
「ええまぁ。地上では12の頃から3年間こんな暮らしをしてたので慣れたものですよ」
「次は酒の神の元へ行くそうだな……言っとくがあの爺さんは朝から酒を飲んで酔っ払ってるから、まともに話をしようとは思わない方が良いな。昔の自慢話を延々と聞かされるぞ」
「は、はぁ……分かりました。ご忠告どうもです」
1日に何人かの神々の元を飛び回って掃除するため、時間も限られている。十分な掃除をしたと判断して次の神……酒の神の元へと向かう。
「いやぁお前かぁ! 新しく雇われた天界の掃除人というのは! ヒック、まぁいい、酒でも飲んで語り合おうではないか?」
酒の神である初老の男は、戦神の忠告通り酔っぱらっていた。酒の神とは言え、朝っぱらから飲んで酔っ払っているとはかなりの『強者』だ。
酒好きで有名なドワーフ達から特にあつく信仰されているのもうなづける。
「お言葉ですが仕事が終わってからにしてくれませんか? さすがに酒を飲みながらの仕事は問題になりますので。多分バレたら1発でクビになりますよ」
「ふーむ、生真面目な奴だな……気に入った。なら仕事が終わったらまた来てくれ、いつでも待ってるぞ。ヒック」
そんなことを言う酒の神を無視していたるところに酒樽が積まれてある神殿の掃除を始める。
酒の神の神殿はどこへ行っても酒の臭いが漂っていて、仕事が終わった後に酒に酔った冒険者や上司に絡まれるという、あまり酒にいい思い出の無い彼にとってはちょっとイラッとする臭いだ。
とはいえ仕事だからと我慢してテキパキと掃除を行う。酒の神も掃除には慣れていないのか神殿には思ってる以上にホコリがたまっている。バケツに汲んだ水はあっという間に真っ黒になっていった。
(神様と言えど本当に人間臭い部分があるんだな……)
そう思いながらもここの神殿の掃除も終えて、次の場所へと向かった。
「あ、イリアス様」
酒の神の神殿を出て次の場所へ向かう途中、女神イリアスに出会う。
「どう? 1週間たつけど仕事の方は順調かしら?」
「順調ですよ。休みが週に2日もあるのが良いですね。前の仕事は1日しかなかったですよ」
「そう。他の神からはあなたが来てから心が軽くなったってかなりの好評よ」
「え? それはいったいどういう意味で?」
心が軽くなる? そりゃ掃除してキレイになった我が家は居心地が良いだろうが……どういう意味だ? 彼は問う。
「前にあなたは「掃除スキルLV999」を持ってるのは話したよね? それで『心の汚れ』簡単に言えばストレスを洗い流す力もあるのよ。それのおかげね」
「へぇ~、そりゃまた便利な能力ですねぇ」
「私があなたを雇ったのはその能力が欲しかったのもあるのよ? 昔に比べれば随分進歩したけどまだまだ人間は見る目が無いのよねぇ。
スキルを持ってるあなた自身がその自覚の無さだから本当に誰1人も気づかなかったんでしょうね。せっかくの才能が埋もれてもったいない話だわ」
……となると今頃ギルドはどうなっているんだろう。まぁ今更どうなろうが知ったことじゃないが。
【次回予告】
「天界の掃除人」を追い出したギルド「ドラゴンズテイル」の面々は彼のスキルで快適な仕事環境を得ていたのに一切気づかずにストレスに押しつぶされる毎日を送っていた。
第3話 「ストレスに悩まされる日々」
女神イリアスに雇われて本格的に仕事を始めてから1週間。天界の掃除人として星の海の上に浮かぶ天界に点在する神様の住居である神殿をめぐり、中を掃除するのにもすっかり慣れた。
あと女神イリアスと名乗る女は本当に女神イリアスだった。後日人間界の神殿で見た女神イリアスを模した彫像そっくりそのままという姿だったし、
何よりこの天界に連れてくる力があるというのは本物であると信じるに値するものだった。
「おお、お前か。女神イリアスが拾ったという掃除人は」
この日は最初に世界各地の騎士や傭兵からあつく信仰されている戦神の元で仕事をする。戦神なだけあって筋肉質で見事な逆三角形ながっしりとした身体で、漂う風格も堂々たる立派なものだ。
神様の住居というよりは武器庫かと思う位に、所狭しと武器が陳列されている神殿で掃除を始める。ホウキでホコリを掃いて雑巾で床を磨く、3年間ギルドでやってきたことなので慣れたものだ。
テキパキと掃除をしている最中に家主である戦神が語りかけてくる。
「いやぁ、君が来てくれるのを待ってたんだ。自分でこういうのもなんだが正直私は戦う事は得意なのだがそれ以外は何も出来ん戦バカでな、生活能力が皆無なんだ。
この前珍しく自分で神殿の掃除をしたら、捧げものとして信者から飾りだと言ってもらった焼き物の皿を落として割る始末だ。結構気に入っていたのにバカな真似をしたもんだと後悔したよ」
「は、はぁ……そうですか」
神話や伝説の類では絶対に語られない、いや『語らせない』内容だ。神様というと文字通り「雲の上の人」というイメージがあるがそれは人間たちが勝手に美化しているだけであって、
実際には人間と同じようにドジを踏むし失敗もする、というかなり人間臭い部分も多々あるのだ。そうこうしている間に手際よく掃除を終える。
「終わったか。私がやるよりもかなり早かったな」
「ええまぁ。地上では12の頃から3年間こんな暮らしをしてたので慣れたものですよ」
「次は酒の神の元へ行くそうだな……言っとくがあの爺さんは朝から酒を飲んで酔っ払ってるから、まともに話をしようとは思わない方が良いな。昔の自慢話を延々と聞かされるぞ」
「は、はぁ……分かりました。ご忠告どうもです」
1日に何人かの神々の元を飛び回って掃除するため、時間も限られている。十分な掃除をしたと判断して次の神……酒の神の元へと向かう。
「いやぁお前かぁ! 新しく雇われた天界の掃除人というのは! ヒック、まぁいい、酒でも飲んで語り合おうではないか?」
酒の神である初老の男は、戦神の忠告通り酔っぱらっていた。酒の神とは言え、朝っぱらから飲んで酔っ払っているとはかなりの『強者』だ。
酒好きで有名なドワーフ達から特にあつく信仰されているのもうなづける。
「お言葉ですが仕事が終わってからにしてくれませんか? さすがに酒を飲みながらの仕事は問題になりますので。多分バレたら1発でクビになりますよ」
「ふーむ、生真面目な奴だな……気に入った。なら仕事が終わったらまた来てくれ、いつでも待ってるぞ。ヒック」
そんなことを言う酒の神を無視していたるところに酒樽が積まれてある神殿の掃除を始める。
酒の神の神殿はどこへ行っても酒の臭いが漂っていて、仕事が終わった後に酒に酔った冒険者や上司に絡まれるという、あまり酒にいい思い出の無い彼にとってはちょっとイラッとする臭いだ。
とはいえ仕事だからと我慢してテキパキと掃除を行う。酒の神も掃除には慣れていないのか神殿には思ってる以上にホコリがたまっている。バケツに汲んだ水はあっという間に真っ黒になっていった。
(神様と言えど本当に人間臭い部分があるんだな……)
そう思いながらもここの神殿の掃除も終えて、次の場所へと向かった。
「あ、イリアス様」
酒の神の神殿を出て次の場所へ向かう途中、女神イリアスに出会う。
「どう? 1週間たつけど仕事の方は順調かしら?」
「順調ですよ。休みが週に2日もあるのが良いですね。前の仕事は1日しかなかったですよ」
「そう。他の神からはあなたが来てから心が軽くなったってかなりの好評よ」
「え? それはいったいどういう意味で?」
心が軽くなる? そりゃ掃除してキレイになった我が家は居心地が良いだろうが……どういう意味だ? 彼は問う。
「前にあなたは「掃除スキルLV999」を持ってるのは話したよね? それで『心の汚れ』簡単に言えばストレスを洗い流す力もあるのよ。それのおかげね」
「へぇ~、そりゃまた便利な能力ですねぇ」
「私があなたを雇ったのはその能力が欲しかったのもあるのよ? 昔に比べれば随分進歩したけどまだまだ人間は見る目が無いのよねぇ。
スキルを持ってるあなた自身がその自覚の無さだから本当に誰1人も気づかなかったんでしょうね。せっかくの才能が埋もれてもったいない話だわ」
……となると今頃ギルドはどうなっているんだろう。まぁ今更どうなろうが知ったことじゃないが。
【次回予告】
「天界の掃除人」を追い出したギルド「ドラゴンズテイル」の面々は彼のスキルで快適な仕事環境を得ていたのに一切気づかずにストレスに押しつぶされる毎日を送っていた。
第3話 「ストレスに悩まされる日々」
0
あなたにおすすめの小説
この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?
柊
ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。
※複数のサイトに投稿しています。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
不確定要素は壊れました。
ひづき
恋愛
「───わたくしは、シェノローラよ。シェラでいいわ」
「承知しました、シェノローラ第一王女殿下」
何も承知していないどころか、敬称まで長々とついて愛称から遠ざかっている。
───こいつ、嫌い。
シェノローラは、生まれて初めて明確に「嫌い」と認識する相手に巡り会った。
そんなシェノローラも15歳になり、王族として身の振り方を考える時期に来ており───
※舞台装置は壊れました。の、主人公セイレーンの娘が今回は主人公です。舞台装置~を読まなくても、この話単体で読めます。
※2020/11/24 後日談「その後の彼ら。」を追加
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる