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閃きと見切りで異世界を征服する ~ロ〇サガステータスでほぼ最強だけど魔族のステータスなので人間だけど魔族の味方をします~
第8話 人類最後の抵抗
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各地方から人が集まってできた「人類最後の都」、そこでは兵士が酒場で飲んだくれていた。
「アンタ兵隊なんだろ!? 兵隊ならこんなところで飲んでないで戦えよ!」
「うるせえなぁ! もう人類はおしまいなんだよ! 伝説の29人の勇者様も1人残らず全滅だ! もう俺たち人類は魔族の奴隷になるしかねえんだよ!
そのうち人類最後の都であるここも落ちて、俺たち人類は滅亡するんだよ! もう人類はおしまいなんですよ! マスター、もう1杯くれ。金はあるから大丈夫だぜ」
やる気がカケラたりとも感じられない兵士の話を聞きつけ、彼が所属する部隊の隊長が怒り狂う寸前の顔でドスドスと音を立てながら近づいてくる。
「あ、隊長どの……」
「こンのドアホがぁ!」
飲んだくれている兵士の顔面に隊長は強烈な1発を叩き込む。
「真っ昼間から飲んだくれている醜態を市民にさらすとは何事だ!? どんな時でも兵士として勇ましく戦え! 例え死ぬと分かっててもだ!」
「嫌だよ俺まだ死にたくないし。死にたきゃ……」
更にもう1発みぞおちに追撃が入り、酔っ払いはその場で崩れ落ちる。隊長はすかさず近くのコップの中身を部下の顔面にぶっかける。
「オイ、おねんねするのはまだ早いぞ。起きろ」
「う、うう……」
何とか立てる、という部下を連行して隊長は酒場を後にした。
軍の風紀を乱すという大失態には怒りを感じていたが、彼の気持ちは分からないわけじゃない。ここ数年、人類は魔族に負けっぱなしで領土を次々と奪われ続け、残すはここのみ。
一応軍はあるが「敗残兵の寄せ集め」で「打倒魔族」を掲げるものの統率力は低く、戦争でも起きたらひとたまりもないだろう。
「閣下ですか? 確か貯蔵庫の中に入っていくのを見た気がするんですが……」
「貯蔵庫? 分かった」
人類連合軍を率いる肝心の首脳の一人が会議の時刻になっても来ないのを見て探してみると、とある貯蔵庫にいるらしいという噂を聞きつけやってきた。
噂通り、貯蔵庫で保管されていたものをうっとりとした目で眺めていた。
「閣下、探しましたよ! もうすぐ会議が始まるっていうのに、こんなところで油を売ってる場合じゃないでしょう!」
「ああ、済まない。ところで見てくれ。これを」
「これは……爆薬ですか?」
世界各地から集められた爆薬がその貯蔵庫の中に納まっていた。
「いや違う。これは『救済の粉』だ。我らをあの汚らわしい魔族から救うため天の神が授けてくださった粉だ」
人類の連合軍を率いる首脳の1人はくぼんでクマの濃い眼をしながらそう言う。
……何言ってんだコイツ。危ない薬でもキメてるんじゃないのか? 彼を探していた兵士の直感はこれからヤバそうなことが起きると告げていた。
その日、ついに魔族が人類最後の都を落とすために動き出した。
その兵力差は単純に頭数だけでも5倍。魔族は元から人間より身体能力や魔力に長けるのを考えると、人類側は籠城しても絶対に勝てない差だ。
死ぬとわかって戦いに挑む忠義者か対魔族教育による狂信者の寄せ集めである軍、最後の抵抗が始まった。
お互いの軍が1番槍を突っ込ませた、次の瞬間!
ドグウォオオオオオン!!!!!!
という鼓膜が破れそうな強烈な爆音、いや凄まじく激しい音の振動とともに人間の兵士を中心に強烈な爆風で魔族の兵士を吹っ飛ばした……要は、自爆攻撃だ。
さらに爆薬に混ぜられていた釘や金属の破片が爆風で吹き飛ばされ、それが及ばない範囲にいる魔族の兵の鎧を貫く。当たり所が悪ければこれでも即死する程の威力を持つ凶器だ。
「しょ、正気かあいつら!?」
「あいつら、死ぬのが怖くないのか!?」
狂気の沙汰、いや狂気そのものでしかない相手の攻撃に兵士たちはそれまでのお気楽ムードとは一転、恐怖で顔面が凍り付く。
「怯むな! 声を張り上げろ! 恐怖を吹き飛ばせ!」
指揮官に言われるが声を張り上げ、兵士たちは狂った人間たちを相手にした。
「なんてことしやがる! 神風特攻隊じゃあるまいし!」
ワタルは最前線で戦っていたが幸い初手の爆風には巻き込まれることは無かった。人間たちの抵抗を見て剣を納めて指を動かし術を詠唱する。
「ヘルファイア!」
ワタルは熱い炎と冷たい炎を同時に出して敵を燃やす術で狙撃する。紅い炎と蒼い炎がらせんを描きつつ敵に向かって飛んでいく。炎が着弾した直後、兵士が爆風で吹き飛んだ。
身体に爆薬を巻き付けているのなら、こちら側に来る前に強制的に爆破させればいい。
「魔術師隊を前に出せ! 敵兵を炎の術で狙撃するんだ! 個人で使える兵でもいい!」
他の兵士たち、特に火属性の術を使えるものもワタルに倣い、近づかれる前に相手を爆破解体処理するのを続けた。
戦闘が開始されて2時間、相手も『弾が尽きた』のだろうか、爆音が聞こえなくなる。
「うぷっ。うぼえええ……」
「おい大丈夫か? しっかりしろ」
「ううう……すいませんワタル殿」
戦いは前評判通り魔族軍の勝利で終わった。だが今回の戦場は人類と魔族の戦争が始まって以来最も残酷な光景だと言えるほどであった。
『兵士の破片』以外にも明らかに『今朝までは民間人だった人間の破片』……それも『女の破片』や『子供の破片』すら混ざっていた。
勝ってもこれっぽちも嬉しくない勝利だった。兵士たちが嘔吐するのもうなづける。
この日、世界の全領土が魔族による支配下に入り、彼らによる統治が始まった。
【次回予告】
戦いは終わった。魔王ワタルが産まれ、これ以降魔族が4000年にも及ぶ長い統治が始まった。
最終話 「魔王ワタル」
「アンタ兵隊なんだろ!? 兵隊ならこんなところで飲んでないで戦えよ!」
「うるせえなぁ! もう人類はおしまいなんだよ! 伝説の29人の勇者様も1人残らず全滅だ! もう俺たち人類は魔族の奴隷になるしかねえんだよ!
そのうち人類最後の都であるここも落ちて、俺たち人類は滅亡するんだよ! もう人類はおしまいなんですよ! マスター、もう1杯くれ。金はあるから大丈夫だぜ」
やる気がカケラたりとも感じられない兵士の話を聞きつけ、彼が所属する部隊の隊長が怒り狂う寸前の顔でドスドスと音を立てながら近づいてくる。
「あ、隊長どの……」
「こンのドアホがぁ!」
飲んだくれている兵士の顔面に隊長は強烈な1発を叩き込む。
「真っ昼間から飲んだくれている醜態を市民にさらすとは何事だ!? どんな時でも兵士として勇ましく戦え! 例え死ぬと分かっててもだ!」
「嫌だよ俺まだ死にたくないし。死にたきゃ……」
更にもう1発みぞおちに追撃が入り、酔っ払いはその場で崩れ落ちる。隊長はすかさず近くのコップの中身を部下の顔面にぶっかける。
「オイ、おねんねするのはまだ早いぞ。起きろ」
「う、うう……」
何とか立てる、という部下を連行して隊長は酒場を後にした。
軍の風紀を乱すという大失態には怒りを感じていたが、彼の気持ちは分からないわけじゃない。ここ数年、人類は魔族に負けっぱなしで領土を次々と奪われ続け、残すはここのみ。
一応軍はあるが「敗残兵の寄せ集め」で「打倒魔族」を掲げるものの統率力は低く、戦争でも起きたらひとたまりもないだろう。
「閣下ですか? 確か貯蔵庫の中に入っていくのを見た気がするんですが……」
「貯蔵庫? 分かった」
人類連合軍を率いる肝心の首脳の一人が会議の時刻になっても来ないのを見て探してみると、とある貯蔵庫にいるらしいという噂を聞きつけやってきた。
噂通り、貯蔵庫で保管されていたものをうっとりとした目で眺めていた。
「閣下、探しましたよ! もうすぐ会議が始まるっていうのに、こんなところで油を売ってる場合じゃないでしょう!」
「ああ、済まない。ところで見てくれ。これを」
「これは……爆薬ですか?」
世界各地から集められた爆薬がその貯蔵庫の中に納まっていた。
「いや違う。これは『救済の粉』だ。我らをあの汚らわしい魔族から救うため天の神が授けてくださった粉だ」
人類の連合軍を率いる首脳の1人はくぼんでクマの濃い眼をしながらそう言う。
……何言ってんだコイツ。危ない薬でもキメてるんじゃないのか? 彼を探していた兵士の直感はこれからヤバそうなことが起きると告げていた。
その日、ついに魔族が人類最後の都を落とすために動き出した。
その兵力差は単純に頭数だけでも5倍。魔族は元から人間より身体能力や魔力に長けるのを考えると、人類側は籠城しても絶対に勝てない差だ。
死ぬとわかって戦いに挑む忠義者か対魔族教育による狂信者の寄せ集めである軍、最後の抵抗が始まった。
お互いの軍が1番槍を突っ込ませた、次の瞬間!
ドグウォオオオオオン!!!!!!
という鼓膜が破れそうな強烈な爆音、いや凄まじく激しい音の振動とともに人間の兵士を中心に強烈な爆風で魔族の兵士を吹っ飛ばした……要は、自爆攻撃だ。
さらに爆薬に混ぜられていた釘や金属の破片が爆風で吹き飛ばされ、それが及ばない範囲にいる魔族の兵の鎧を貫く。当たり所が悪ければこれでも即死する程の威力を持つ凶器だ。
「しょ、正気かあいつら!?」
「あいつら、死ぬのが怖くないのか!?」
狂気の沙汰、いや狂気そのものでしかない相手の攻撃に兵士たちはそれまでのお気楽ムードとは一転、恐怖で顔面が凍り付く。
「怯むな! 声を張り上げろ! 恐怖を吹き飛ばせ!」
指揮官に言われるが声を張り上げ、兵士たちは狂った人間たちを相手にした。
「なんてことしやがる! 神風特攻隊じゃあるまいし!」
ワタルは最前線で戦っていたが幸い初手の爆風には巻き込まれることは無かった。人間たちの抵抗を見て剣を納めて指を動かし術を詠唱する。
「ヘルファイア!」
ワタルは熱い炎と冷たい炎を同時に出して敵を燃やす術で狙撃する。紅い炎と蒼い炎がらせんを描きつつ敵に向かって飛んでいく。炎が着弾した直後、兵士が爆風で吹き飛んだ。
身体に爆薬を巻き付けているのなら、こちら側に来る前に強制的に爆破させればいい。
「魔術師隊を前に出せ! 敵兵を炎の術で狙撃するんだ! 個人で使える兵でもいい!」
他の兵士たち、特に火属性の術を使えるものもワタルに倣い、近づかれる前に相手を爆破解体処理するのを続けた。
戦闘が開始されて2時間、相手も『弾が尽きた』のだろうか、爆音が聞こえなくなる。
「うぷっ。うぼえええ……」
「おい大丈夫か? しっかりしろ」
「ううう……すいませんワタル殿」
戦いは前評判通り魔族軍の勝利で終わった。だが今回の戦場は人類と魔族の戦争が始まって以来最も残酷な光景だと言えるほどであった。
『兵士の破片』以外にも明らかに『今朝までは民間人だった人間の破片』……それも『女の破片』や『子供の破片』すら混ざっていた。
勝ってもこれっぽちも嬉しくない勝利だった。兵士たちが嘔吐するのもうなづける。
この日、世界の全領土が魔族による支配下に入り、彼らによる統治が始まった。
【次回予告】
戦いは終わった。魔王ワタルが産まれ、これ以降魔族が4000年にも及ぶ長い統治が始まった。
最終話 「魔王ワタル」
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