35 / 67
無能ジョブ「宝石使い」が実は最強ジョブでした ~強くてかわいい宝石娘に囲まれて幸せです~
第9話 シュムック伯爵
しおりを挟む
ドサッ。という音と共に敵を倒した証である削いだ耳を入れた袋、そのどれもがパンパンに膨らんだ物に加え、敵軍総大将の首まで添えられて出された。
その光景に、リンケン国王は開いた口が塞がらない。
「……ここまでの戦果を出すとは、お前たちは『何だ』? 少なくともまともな人間ではあるまい? エンシェントエルフでもここまでの戦果は出せないはずだ」
魔族の脅威が去り、元の冷静さを取り戻したリンケン国王が宝石娘の代表であるダイヤモンドに問う。
「感が良いですね陛下は。ご想像の通り、私たちは人間ではありません。「宝石使い」であるマスター、シュムック様の手によりこの姿となった宝石なんです。ちなみに私はダイヤモンド」
「私はルビー」
「ボクはサファイアだよ」
「私はエメラルドですよ~」
簡単な自己紹介が終わり、王はハァッ、と息をつく。なぜ宝石が王侯貴族の間で独占されるのか? なぜある日突然平民から宝石を取り上げる法律が世界各地で一斉に施行されたのか? その理由が良く分かった。
2000もの大軍すらたった4人で蹴散らすほどの強さを持つ「宝石使い」は王侯貴族たちにとっては脅威以外の何物でもない。野放しにしているといつ寝首をかかれるか、分かったものではないだろう。
「……と言う事は彼は2日前までは平民だった。と言う事か?」
「ええそうです、でもご安心ください。陛下は戦闘の2日前にマスターに伯爵の爵位を与えましたよね? それをそのまま与え続ければいいだけです。そうすれば堂々と宝石を所有できます」
宝石は王侯貴族の物であり庶民の物ではない。本来ならば『元』とはいえ平民であるにもかかわらず宝石を持っていたシュムックは極刑に処せばならない重罪人だ。
しかし彼は文字通り国を救った英雄だ。そんな彼を処刑することなど出来るわけがない。そこで爵位だ。爵位を与えて貴族にしてしまえば、合法的に宝石を持ち歩くことができる。
国王に出来ることはほんの少し、それもダイヤモンドがほぼ完ぺきに予測できたものだ。
「……取引上手なお嬢さんだ事。良いだろう、正式にシュムックを我が国の貴族、伯爵として迎え入れよう。それでいいな?」
「はい、構いません。これからよろしくお願いしますね」
交渉成立、それも宝石娘側の意見が全面的に認められた完全勝利とでもいうべきものだ。
◇◇◇
僕達、正確に言えば宝石娘達が国を救って数日……王国は奇跡的に助かったと報じて国民が戻り急ピッチで復旧、復興がなされていた。
幸い春はまだ先だったので農民たちの種まきには影響は出ず、割とすんなり元の生活に戻っていった。
国を逃げ出した伯爵は「新天地で上手くやってるから心配するな」と言っているそうで僕が後釜に入っても特に問題はなさそうだ。
「シュムック様、これから身の回りのお世話をさせていただきます。よろしくお願いします……にしてもこんな私にこんなキレイなお着せなんてもったいないですよ」
口調こそ標準語だが田舎っぽいなまりが隠し切れない少女3名が僕の屋敷でメイドとして働くことになった。
メイドとはいえ掃除が得意な農民2名に料理が得意な農民1名という構成で、伯爵という地位には多少のバランスの悪さはあったが僕にとってはそれでも十分だ。
復興の進む中、パトロール隊長として人間の兵を率いていたダイヤモンドが戻る。確かあと1時間はパトロールで外にいるはずなのに、妙に早い帰還だ。
「ダイヤモンド、どうしたの?」
「マスターに合わせたい人物がおりますので早めに帰還しました。こちらです」
ダイヤモンドがそう言うと、彼女のそばには手を縄で縛られ数珠繋ぎにされた勇者、アルヌルフがいた。
「!! アルヌルフさん!? こんなところで一体何を!?」
「!! お前、シュムックか!? 何で生きてるんだ!? あの時ミノタウロスに襲われて死んだんじゃなかったのか!?」
勇者というには明らかに汚れてやつれた格好をした姿に僕は大きく驚いた。いったい何があったんだ!?
「噂じゃ信じられないような戦働きをして伯爵の地位を手に入れた奴がいたと思ったら、お前だったのか!? 何で宝石使いなんかにそんなことができるんだ!?」
「まぁ色々あって……詳しくは言えませんけど。ところでアルヌルフさんはいったい何を!?」
「マスター、彼は旅人を襲って荷物の追いはぎをやっているところを現行犯で捕まえたのですが、いかがいたしましょうか?」
「!! 追いはぎだって!? 何で勇者もあろう人がそんなことをやらなくてはいけないんだ!?」
信じられない。というのが最初に出た感想だ。S級冒険者パーティを率いている勇者アルヌルフもあろうお方がなぜ山賊をやっているのか? 僕には訳が分からなかった。
「シュムック。俺だってこうはしたくなかった。俺だってこんなことして生きていかなくてはならないのが俺自身信じられん。でもこうなっちまったんだ、どういうわけかは知らんがな」
彼は事の顛末を語りだした。
【次回予告】
山賊は語りだす。自分の身に降りかかった不幸を。
伯爵は決断する。目の前の罪人にどんな裁きを科すのかを。
最終話 「山賊アルヌルフ」
その光景に、リンケン国王は開いた口が塞がらない。
「……ここまでの戦果を出すとは、お前たちは『何だ』? 少なくともまともな人間ではあるまい? エンシェントエルフでもここまでの戦果は出せないはずだ」
魔族の脅威が去り、元の冷静さを取り戻したリンケン国王が宝石娘の代表であるダイヤモンドに問う。
「感が良いですね陛下は。ご想像の通り、私たちは人間ではありません。「宝石使い」であるマスター、シュムック様の手によりこの姿となった宝石なんです。ちなみに私はダイヤモンド」
「私はルビー」
「ボクはサファイアだよ」
「私はエメラルドですよ~」
簡単な自己紹介が終わり、王はハァッ、と息をつく。なぜ宝石が王侯貴族の間で独占されるのか? なぜある日突然平民から宝石を取り上げる法律が世界各地で一斉に施行されたのか? その理由が良く分かった。
2000もの大軍すらたった4人で蹴散らすほどの強さを持つ「宝石使い」は王侯貴族たちにとっては脅威以外の何物でもない。野放しにしているといつ寝首をかかれるか、分かったものではないだろう。
「……と言う事は彼は2日前までは平民だった。と言う事か?」
「ええそうです、でもご安心ください。陛下は戦闘の2日前にマスターに伯爵の爵位を与えましたよね? それをそのまま与え続ければいいだけです。そうすれば堂々と宝石を所有できます」
宝石は王侯貴族の物であり庶民の物ではない。本来ならば『元』とはいえ平民であるにもかかわらず宝石を持っていたシュムックは極刑に処せばならない重罪人だ。
しかし彼は文字通り国を救った英雄だ。そんな彼を処刑することなど出来るわけがない。そこで爵位だ。爵位を与えて貴族にしてしまえば、合法的に宝石を持ち歩くことができる。
国王に出来ることはほんの少し、それもダイヤモンドがほぼ完ぺきに予測できたものだ。
「……取引上手なお嬢さんだ事。良いだろう、正式にシュムックを我が国の貴族、伯爵として迎え入れよう。それでいいな?」
「はい、構いません。これからよろしくお願いしますね」
交渉成立、それも宝石娘側の意見が全面的に認められた完全勝利とでもいうべきものだ。
◇◇◇
僕達、正確に言えば宝石娘達が国を救って数日……王国は奇跡的に助かったと報じて国民が戻り急ピッチで復旧、復興がなされていた。
幸い春はまだ先だったので農民たちの種まきには影響は出ず、割とすんなり元の生活に戻っていった。
国を逃げ出した伯爵は「新天地で上手くやってるから心配するな」と言っているそうで僕が後釜に入っても特に問題はなさそうだ。
「シュムック様、これから身の回りのお世話をさせていただきます。よろしくお願いします……にしてもこんな私にこんなキレイなお着せなんてもったいないですよ」
口調こそ標準語だが田舎っぽいなまりが隠し切れない少女3名が僕の屋敷でメイドとして働くことになった。
メイドとはいえ掃除が得意な農民2名に料理が得意な農民1名という構成で、伯爵という地位には多少のバランスの悪さはあったが僕にとってはそれでも十分だ。
復興の進む中、パトロール隊長として人間の兵を率いていたダイヤモンドが戻る。確かあと1時間はパトロールで外にいるはずなのに、妙に早い帰還だ。
「ダイヤモンド、どうしたの?」
「マスターに合わせたい人物がおりますので早めに帰還しました。こちらです」
ダイヤモンドがそう言うと、彼女のそばには手を縄で縛られ数珠繋ぎにされた勇者、アルヌルフがいた。
「!! アルヌルフさん!? こんなところで一体何を!?」
「!! お前、シュムックか!? 何で生きてるんだ!? あの時ミノタウロスに襲われて死んだんじゃなかったのか!?」
勇者というには明らかに汚れてやつれた格好をした姿に僕は大きく驚いた。いったい何があったんだ!?
「噂じゃ信じられないような戦働きをして伯爵の地位を手に入れた奴がいたと思ったら、お前だったのか!? 何で宝石使いなんかにそんなことができるんだ!?」
「まぁ色々あって……詳しくは言えませんけど。ところでアルヌルフさんはいったい何を!?」
「マスター、彼は旅人を襲って荷物の追いはぎをやっているところを現行犯で捕まえたのですが、いかがいたしましょうか?」
「!! 追いはぎだって!? 何で勇者もあろう人がそんなことをやらなくてはいけないんだ!?」
信じられない。というのが最初に出た感想だ。S級冒険者パーティを率いている勇者アルヌルフもあろうお方がなぜ山賊をやっているのか? 僕には訳が分からなかった。
「シュムック。俺だってこうはしたくなかった。俺だってこんなことして生きていかなくてはならないのが俺自身信じられん。でもこうなっちまったんだ、どういうわけかは知らんがな」
彼は事の顛末を語りだした。
【次回予告】
山賊は語りだす。自分の身に降りかかった不幸を。
伯爵は決断する。目の前の罪人にどんな裁きを科すのかを。
最終話 「山賊アルヌルフ」
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――
まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。
彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。
剣も魔法も使えない。
だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。
やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、
完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。
証明できぬ潔白。
国の安定を優先した王の裁定。
そして彼は、王国を追放される。
それでも彼は怒らない。
数字は嘘をつかないと知っているからだ。
戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、
知略と静かな誇りの異世界戦略譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる