49 / 67
雨男と砂漠の国 ~超雨男が国から追い出されたけど砂漠の民に拾われて破格の待遇でもてなされる。追い出した祖国は干ばつに苦しんでるけどそんなの知
第3話 雨男、砂漠の国の王と謁見す
しおりを挟む
雨の中ぬかるむ道を馬車に乗って旅すること1日。そこから船に乗り換え、さらに2日。ピオッジャを連れたデラッザ王国の使いの者たちは祖国の王都最寄りの港までやってきた。
「珍しいな。曇りだなんて」
港町につくなり彼らを迎えたのは、砂漠地帯においては非常に珍しい曇り空という天気だった。慣れない天候に街の住人は困惑気味だった。
「ピオッジャ様、少しお待ちいただけますかな?」
使いの者たちは彼を少しだけ待たせる。その間に国王と魔法による連絡を行う。
「陛下。ご連絡をいたしま……」
「ご苦労だった。ピオッジャを見つけ出してくれたそうだな。大義であったぞ」
「!? え!? 陛下! なぜそれをご存じで!?」
「空を見ればそれくらいわかるさ。2年ぶりの曇りだからな」
空には1年中ギラギラと輝く太陽が死の光を大地に浴びせるこの砂漠の国デラッザにおいては晴れ以外の天気は年に1度あるかないかの珍しい出来事だ。
太陽が黒い雨雲に覆われる事を見て王はピオッジャが国に来たのを確信したという。
「で、今はどこだ?」
「カイメンにいます。これから王都まで1時間ほどかけて向かう予定です」
「分かった。まず大丈夫だとは思うがトラブルの無い良い旅路になることを祈っているよ」
「もったいないお言葉、ありがとうございます」
連絡を終え、使いがピオッジャの元へとやってきた。
「お待たせしました。国王陛下の元へと向かいましょう」
一行はラクダの背に乗り、舗装された道をたどって国王のいる首都へと旅立った。
「ふぅ。今度はデラッザ国王との謁見か。なかなか忙しいものだな」
ラクダの背に揺られて1時間ほど。特に問題も無く一行は王都にたどり着き、ピオッジャはデラッザ国王と謁見することになり、控室で準備をしていた。
「元外交官と言えど、やはり陛下との謁見には緊張しますかな?」
「そりゃそうですよ。外交官というのは国王の代理とでも言うべき重要な立場ですから、無礼の無いように細心の注意を払う物ですよ」
そう言って彼は鏡の前で身だしなみの最終チェックをする。10年続いた外交官としての仕事で身についたものだ。
「……よし。行きましょうか!」
準備を終え、ピオッジャはついにデラッザ国王と顔を合わせることになった。
王の間の玉座にいたのは質実剛健を字で行く、いかにも物理的にも政治的にも豪腕を振るいそうな見た目の大男だった。
「ピオッジャ殿。まずは長い旅路を終えてここまで無事にたどり着いたこと、まことにご苦労であった」
「もったいないお言葉、まことにありがとうございます。ピオッジャ=コレルリ、ただいま参りました。デラッザ国王陛下直々にご指名とありますが此度はいかがな御用でしょうか?」
「単刀直入に言おう。君の事を「彼のいるところに太陽無し」と言われるほどの雨男だと見込んで話がある。その体質の秘密をぜひともわが国で解析させてもらいたいんだ。
なぁに、ちょっと器具で君の魔力を測定するだけだ。傷をつけるマネはさせないから安心したまえ」
砂漠の国デラッザ。その国では魔法研究が世界で最も盛んだった。
薪一つ無くても火で調理する魔法。死を運ぶ太陽の日差しに倒れた人の命を救うための冷気魔法に風魔法。そして砂の海で命を落とし不死者となった旅人の成れの果てと戦う魔法。
命を育むには最も適さない過酷な砂漠で生活するには魔法は1日たりとも欠かせないものだ。
それ故高度な魔法を使えるものは身分関係なく大きく出世でき、また民の間でも他国以上に高度な魔法が幅広く普及していた。
「は、はぁそうですか」
……バカバカしい。ピオッジャは内心そう思っていた。
ソル王国のセレーノ王も歯に衣着せぬ言い方をすれば、10年間国のために仕え特に国の名誉を汚すような真似はしてこなかった自分を追放するという愚行に出る王だ。
そんなバカな王と同じことを言い出すとは……砂漠の国デラッザも大したことないな。それに外交官から研究材料への格下げか、俺もずいぶんと落ちたものだな。とも思った。
もちろんそれを表情や態度で表に出すことはしない。外交官としてはそれくらいできて当然の事だった。
「もちろんタダ働きさせるわけではない。形としては我が国の研究所の臨時職員として採用し、給料は……そうだな、月に50000サールは出そう」
「!? ご、50000サールも出すのですか!?」
「ああそうだ。1人身が生きていく上ではまず困らん額だろ?」
確かデラッザ王国における50000サールと言えば、父母にその祖父母に親戚2人、さらに子供4人の大人6人子供4人の10人家族であっても1ヶ月は寝食に困らない大金だ。
彼が言う通り、1人身にとっては生きていくにはまず困らない額だ。
「……なにゆえ50000サールという大金を出してまで私を引き込もうとするのですか?」
「それだけの価値が君にはあると思っての事だ。で、どうする?」
「……わかりました。それでいきましょう。言っておきますが酷い真似をしたら国王と言えどタダでは済まないと思ってくださいよ?」
「安心したまえ。元外交官なら世界各地にコネの1つや2つはあるだろ? それを敵に回す愚かなマネはしないさ」
ピオッジャは10年も外交官として働いていたがゆえに世界各地にコネがある。それを総動員すれば国相手でも無視できない損害を与えることも可能だ。
相手はそれを承知の上らしいから、下手な真似に出ることはないだろう。これなら警戒レベルを1段階引き下げてもいい、とピオッジャは思った。
さすがに実験材料というのは少し気に入らないが、高額報酬に釣られてついOKを出してしまったのだ。
結論から言えばこの判断は大正解だった。彼は破格の待遇で迎え入れられ、さらには王族にまでなるのだから。
【次回予告】
ソル王国の王セレーノがピオッジャを追い出して2週間、快晴に住民は満足していた。
彼が国を出て行って以来ずっと晴れだった……本来のこの頃は雨が多く、それが畑を潤していることに誰も気づいていなかった。
第4話 「晴れの日が続くソル王国」
「珍しいな。曇りだなんて」
港町につくなり彼らを迎えたのは、砂漠地帯においては非常に珍しい曇り空という天気だった。慣れない天候に街の住人は困惑気味だった。
「ピオッジャ様、少しお待ちいただけますかな?」
使いの者たちは彼を少しだけ待たせる。その間に国王と魔法による連絡を行う。
「陛下。ご連絡をいたしま……」
「ご苦労だった。ピオッジャを見つけ出してくれたそうだな。大義であったぞ」
「!? え!? 陛下! なぜそれをご存じで!?」
「空を見ればそれくらいわかるさ。2年ぶりの曇りだからな」
空には1年中ギラギラと輝く太陽が死の光を大地に浴びせるこの砂漠の国デラッザにおいては晴れ以外の天気は年に1度あるかないかの珍しい出来事だ。
太陽が黒い雨雲に覆われる事を見て王はピオッジャが国に来たのを確信したという。
「で、今はどこだ?」
「カイメンにいます。これから王都まで1時間ほどかけて向かう予定です」
「分かった。まず大丈夫だとは思うがトラブルの無い良い旅路になることを祈っているよ」
「もったいないお言葉、ありがとうございます」
連絡を終え、使いがピオッジャの元へとやってきた。
「お待たせしました。国王陛下の元へと向かいましょう」
一行はラクダの背に乗り、舗装された道をたどって国王のいる首都へと旅立った。
「ふぅ。今度はデラッザ国王との謁見か。なかなか忙しいものだな」
ラクダの背に揺られて1時間ほど。特に問題も無く一行は王都にたどり着き、ピオッジャはデラッザ国王と謁見することになり、控室で準備をしていた。
「元外交官と言えど、やはり陛下との謁見には緊張しますかな?」
「そりゃそうですよ。外交官というのは国王の代理とでも言うべき重要な立場ですから、無礼の無いように細心の注意を払う物ですよ」
そう言って彼は鏡の前で身だしなみの最終チェックをする。10年続いた外交官としての仕事で身についたものだ。
「……よし。行きましょうか!」
準備を終え、ピオッジャはついにデラッザ国王と顔を合わせることになった。
王の間の玉座にいたのは質実剛健を字で行く、いかにも物理的にも政治的にも豪腕を振るいそうな見た目の大男だった。
「ピオッジャ殿。まずは長い旅路を終えてここまで無事にたどり着いたこと、まことにご苦労であった」
「もったいないお言葉、まことにありがとうございます。ピオッジャ=コレルリ、ただいま参りました。デラッザ国王陛下直々にご指名とありますが此度はいかがな御用でしょうか?」
「単刀直入に言おう。君の事を「彼のいるところに太陽無し」と言われるほどの雨男だと見込んで話がある。その体質の秘密をぜひともわが国で解析させてもらいたいんだ。
なぁに、ちょっと器具で君の魔力を測定するだけだ。傷をつけるマネはさせないから安心したまえ」
砂漠の国デラッザ。その国では魔法研究が世界で最も盛んだった。
薪一つ無くても火で調理する魔法。死を運ぶ太陽の日差しに倒れた人の命を救うための冷気魔法に風魔法。そして砂の海で命を落とし不死者となった旅人の成れの果てと戦う魔法。
命を育むには最も適さない過酷な砂漠で生活するには魔法は1日たりとも欠かせないものだ。
それ故高度な魔法を使えるものは身分関係なく大きく出世でき、また民の間でも他国以上に高度な魔法が幅広く普及していた。
「は、はぁそうですか」
……バカバカしい。ピオッジャは内心そう思っていた。
ソル王国のセレーノ王も歯に衣着せぬ言い方をすれば、10年間国のために仕え特に国の名誉を汚すような真似はしてこなかった自分を追放するという愚行に出る王だ。
そんなバカな王と同じことを言い出すとは……砂漠の国デラッザも大したことないな。それに外交官から研究材料への格下げか、俺もずいぶんと落ちたものだな。とも思った。
もちろんそれを表情や態度で表に出すことはしない。外交官としてはそれくらいできて当然の事だった。
「もちろんタダ働きさせるわけではない。形としては我が国の研究所の臨時職員として採用し、給料は……そうだな、月に50000サールは出そう」
「!? ご、50000サールも出すのですか!?」
「ああそうだ。1人身が生きていく上ではまず困らん額だろ?」
確かデラッザ王国における50000サールと言えば、父母にその祖父母に親戚2人、さらに子供4人の大人6人子供4人の10人家族であっても1ヶ月は寝食に困らない大金だ。
彼が言う通り、1人身にとっては生きていくにはまず困らない額だ。
「……なにゆえ50000サールという大金を出してまで私を引き込もうとするのですか?」
「それだけの価値が君にはあると思っての事だ。で、どうする?」
「……わかりました。それでいきましょう。言っておきますが酷い真似をしたら国王と言えどタダでは済まないと思ってくださいよ?」
「安心したまえ。元外交官なら世界各地にコネの1つや2つはあるだろ? それを敵に回す愚かなマネはしないさ」
ピオッジャは10年も外交官として働いていたがゆえに世界各地にコネがある。それを総動員すれば国相手でも無視できない損害を与えることも可能だ。
相手はそれを承知の上らしいから、下手な真似に出ることはないだろう。これなら警戒レベルを1段階引き下げてもいい、とピオッジャは思った。
さすがに実験材料というのは少し気に入らないが、高額報酬に釣られてついOKを出してしまったのだ。
結論から言えばこの判断は大正解だった。彼は破格の待遇で迎え入れられ、さらには王族にまでなるのだから。
【次回予告】
ソル王国の王セレーノがピオッジャを追い出して2週間、快晴に住民は満足していた。
彼が国を出て行って以来ずっと晴れだった……本来のこの頃は雨が多く、それが畑を潤していることに誰も気づいていなかった。
第4話 「晴れの日が続くソル王国」
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる