追放→ざまぁwww こんぴれーしょんぱっく ~追放もの短編集めました~

あがつま ゆい

文字の大きさ
48 / 67
雨男と砂漠の国 ~超雨男が国から追い出されたけど砂漠の民に拾われて破格の待遇でもてなされる。追い出した祖国は干ばつに苦しんでるけどそんなの知

第2話 捨てる神あれば拾う神あり

しおりを挟む
「ハァ……」

 ピオッジャは防水加工の施された外套がいとうを着ながら雨の町を歩いていた。手切れ金は3ヶ月は寝食に困らない額だったがそれでも就職先を探さないと不安だ。
 仕事は多すぎても困りものだが、全くないというのもそれはそれで精神的な負担は大きい。働いている人間には働いている人間なりの、無職には無職なりの苦悩というのがあるのだ。

「ソル王国と友好的な国に外交官として拾ってもらおうかなぁ。秘密もある程度ばらせば食いついてくれるだろうし」

 ピオッジャはこれからどうするかについて答えの出ない問答を繰り返し続けていた。



 一方そのころ……。



「ふむ。ピオッジャ=コレルリか。噂では「雨男」らしいな。それも『彼のいくところに太陽無し』と言われるほどの強烈なもの、か」

「雨を呼ぶ能力、それも自覚無しに……ですか。どんな能力か研究のしがいがありそうですね」

「ソル王国を離れたら予定通り接触しろ。何としても彼の事を我が国に引き込んでくれ。我がデラッザ王国にとって国王である俺以上に貴重な人材になるだろう」

「御意。必ず探し出してみせます!」

 国王からの通信を終え、砂漠の国デラッザからソル王国の国境付近にまでやってきた使者は行動を開始した。



 砂漠の国デラッザ……領土の大半を容赦ようしゃなく太陽が死の光を浴びせる乾ききった砂漠の大地にある王国。

 国土こそ世界一の広さだが人が住める場所は海や川のそば、それに砂の海に点在するオアシスといった地域に限られ、国力では他の国とそう大きく差があるわけではない国だ。

 ソル王国の国境付近で待機していた使者たちは国王から命を受け、ピオッジャの捜索に当たった。とはいえ、ピオッジャの周りは常に雨になるので探す手間はずいぶんとかからないものだったらしいが。



 数日後……早朝のとある宿屋にて



「失礼します。ピオッジャ=コレルリさんですね?」

 宿屋の女将おかみが宿泊客である彼のもとにやってくる。

「ええ。そうですけど何かありました?」

「あなたに会いたい人がいて、入り口で待っているそうですよ」

「へぇ、俺にね。分かった、すぐ行くと伝えてくれませんか?」

 ピオッジャはもしや隣国の使いからお呼びがかかったのではと少し期待していた。どちらかと言えばポジティブな気分で宿屋の入り口に行くと、この辺りではあまり見ない服を着た男が待っていた。



「あなたがピオッジャ=コレルリさんですね?」

「……なぜ名前を知っている?」

「ソル王国の外交官を務めていたとお聞きしております。我が国の国王陛下がぜひともお会いしたい、と」

「王? あなた方は衣装からして砂漠の国デラッザ出身ですね? その国の王ですかな?」

 砂漠の国デラッザ……確かソル王国とはそれなりに付き合いはあるが、互いの国の距離が離れているので王の顔は知っている程度で親密、とまではいかない国だ。



「ええそうです。あなたの事を首を長くしてお待ちしております。ぜひとも陛下にお会いしていただけませんか?」

「国王自らですか……分かりました。お会いいたしましょう」

「良かった。国王陛下直々の勅命ちょくめいでしたので応じてくれて大変ありがたく思っております。さぁ行きましょうか」

 ピオッジャは砂漠の国デラッザの使いと一緒に彼の国目がけて旅立っていった。



【次回予告】

砂漠の国デラッザの国王に呼ばれて一行は彼のいる王都を目指す。その旅路はいつも雨か曇り。雨男の体質はここでも有効らしい。

第3話 「雨男、砂漠の国の王と謁見す」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?

ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。 ※複数のサイトに投稿しています。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う

なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。 3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。 かつて自分を陥れた者たち ――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。 これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。 【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】 *お読みくださりありがとうございます。 ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

不確定要素は壊れました。

ひづき
恋愛
「───わたくしは、シェノローラよ。シェラでいいわ」 「承知しました、シェノローラ第一王女殿下」  何も承知していないどころか、敬称まで長々とついて愛称から遠ざかっている。  ───こいつ、嫌い。  シェノローラは、生まれて初めて明確に「嫌い」と認識する相手に巡り会った。  そんなシェノローラも15歳になり、王族として身の振り方を考える時期に来ており─── ※舞台装置は壊れました。の、主人公セイレーンの娘が今回は主人公です。舞台装置~を読まなくても、この話単体で読めます。 ※2020/11/24 後日談「その後の彼ら。」を追加

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】薬学はお遊びだと言われたので、疫病の地でその価値を証明します!

きまま
恋愛
薄暗い部屋の隅、背の高い本棚に囲まれて一人。エリシアは読書に耽っていた。 周囲の貴族令嬢たちは舞踏会で盛り上がっている時刻。そんな中、彼女は埃の匂いに包まれて、分厚い薬草学の本に指先を滑らせていた。文字を追う彼女の姿は繊細で、金の髪を揺らし、酷くここには場違いのように見える。 「――その薬草は、熱病にも効くとされている」 低い声が突然、彼女の背後から降ってくる。 振り返った先に立っていたのは、辺境の領主の紋章をつけた青年、エルンだった。 不躾な言葉に眉をひそめかけたが、その瞳は真剣で、嘲りの色はなかった。 「ご存じなのですか?」 思わず彼女は問い返す。 「私の方では大事な薬草だから。けれど、君ほど薬草に詳しくはないみたいだ。——私は君のその花飾りの名前を知らない」 彼は本を覗き込み、素直にそう言った。 胸の奥がかすかに震える。 ――馬鹿にされなかった。 初めての感覚に、彼女は言葉を失い、本を閉じる手が少しだけ震え、戸惑った笑みを見せた。 ※拙い文章です。読みにくい文章があるかもしれません。 ※自分都合の解釈や設定などがあります。ご容赦ください。 ※本作品は別サイトにも掲載中です。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

処理中です...