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雨男と砂漠の国 ~超雨男が国から追い出されたけど砂漠の民に拾われて破格の待遇でもてなされる。追い出した祖国は干ばつに苦しんでるけどそんなの知
第9話 拉致
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ピオッジャの立場に関するソル王国と砂漠の国デラッザによる首脳会談が決裂して5日……相変わらずソル王国は晴れの日が続いていた。
「閣下! 「閣下がひでりを起こしている」という噂が国の隅々まで広まって、国民たちの不満がいつ爆発してもおかしくない状況になっています!」
「何ぃ!? その噂を否定しろと言ったじゃないか!」
「それが、我々が否定すればするほど国民はますますその噂を信じるようになって、何度言っても聞く耳を持ってくれないのです。閣下の命を受けた伝道師が殺害されたという話もございます」
「……」
晴れが続くことおよそ半年。大地はすっかり干からびて何とか作物の収穫こそ出来たが収量は大したことは無い。長すぎる晴れに国民は怒り心頭だ。雨さえ降ればすべて解決する。そう「雨さえ降れば」だ。
「よし、決めた」
「決めたって……何をですか?」
「もう体裁を取り繕っている時間はない……ピオッジャをさらって来い! 方法は問わない! 何でもありだ!」
追い込まれたセレーノは最終手段に打って出るが、この時の彼は「自分の人生における最後のダメ押しになる悪手」を打ったことをこの時は知らない。
「はい、あなた。私が手作りしたお守りですよ」
サラサはそう言ってピオッジャに文字が彫り込まれた銀の指輪を渡す。結婚を2週間後に控えた彼女は早くも新妻気分だ。
「お守り、か。字が彫り込まれているが何かあるのか?」
「あなたにもしもの事があったらすぐ知らせてくれる魔力が込められていますから、念のため大事に持っていてくださいね」
「ん、分かった。じゃあ行ってくるよ」
曇り空の中、ピオッジャはいつものように王立研究所へと出勤していった。
その日はいつもと様子が違っていた。デラッザ王立の研究所の入り口近くにこの辺りではあまり見かけない怪しい格好をした男が数人、待機していた。
仕事をするためにピオッジャが研究所の門をくぐろうとした時……
「!!」
彼らは雨男の腹に鉄拳を叩き込む。意識を失いぐったりとした彼を担いで近くに止めてあった馬車に放り込み、港町カイメンに向けて出発した。
デラッザ王国首都とカイメンは重要なルートなため幅の広い道が整備されており、馬でも難なく行き来できた。
このまま無事にカイメンまでたどり着けば、あとは手配した船にピオッジャを載せて発ち、祖国ソル王国を目指すだけ。仕事は成功するだろうと思っていた、が……。
「? な、何だぁ?」
望遠鏡で遠くを見ていると、カイメンの入り口に20人近い兵士たちが待機していた。確か行きの時はこんなに多くの兵はいなかったはず。
「構うもんか! このまま突っ切れ! 船に飛び込めばこっちの勝ちだ!」
速度を落とさずに突っ込もうとした次の瞬間! 入り口近くに待機していた兵士の魔法で馬車の車輪が壊され、強制的に止められてしまう。
直後、手際よく兵士たちが馬車をぐるりと囲む。ピオッジャがさらわれたというのは、既に感知されていたのだ。
「ピオッジャ殿はどこにいる?」
「!? な、なぜ分かる!?」
「彼に渡したアクセサリーに込められた魔術や、身体に施した『マーキング』でどこにいるか、どんな状態かすぐわかるようになっている。残念だったな。
さぁ来い! 言っておくがもうすぐ王族になる人物を拉致するとなればタダで済むとは思うなよ?」
まだ婿入り前とはいえ、王族になる予定の彼にはもしもの事はあってはいけない。そのためデラッザ王家は彼の居場所や状態がすぐにわかるようあらかじめ手を打っていたのだ。
その魔術により異変を察知し、カイメンに集められていた兵士たちにより無事にピオッジャは救助され、拉致は未遂に終わった。
ピオッジャ拉致未遂事件が起こってから7日後……デラッザ王に呼び出されたセレーノは縮こまっていた。
「セレーノ。ピオッジャは間もなく我がデラッザ王家に入る人間だというのは当然、知っているはずだよな? 言っておくが「そんなの知りませんでした」とすっとぼけるのは無しにして欲しいがな」
「は、はい……承知の上です。申し訳ありません」
セレーノはまるで、学校の先生から大目玉を食らっている生徒のようにしょぼくれている。
「今回の醜態、謝った程度では到底済まされる問題ではないぞ。で、どうやって落とし前を付けるつもりなんだ? 言っておくが、我が国と戦争でもするつもりなのか? まぁ貴様がそれでいい、というのなら構わんが」
「!! せ、戦争だなんて滅相もありません!」
「ではどうするつもりだ?」
「カネですか?」
「なるほど、カネか……良いだろう。それで『手打ち』と言う事にしよう。ただし、半端な額を包んだらどうなるかは言わなくても判るよな?」
「もちろんですとも」
今回のセレーノの大失態に関しては、ソル王国がデラッザ王国に多額の賠償金を払うことで一応の決着はついた。だがこれがセレーノに対しダメ押しとなるのを彼は知らない。
【次回予告】
国民の怒りは限界を超えていた。もはや「ソル王国にはセレーノは不要だ」と言わせるくらいには、はらわたが煮えくり返るような憎悪を抱いていた。
最終話 「革命」
「閣下! 「閣下がひでりを起こしている」という噂が国の隅々まで広まって、国民たちの不満がいつ爆発してもおかしくない状況になっています!」
「何ぃ!? その噂を否定しろと言ったじゃないか!」
「それが、我々が否定すればするほど国民はますますその噂を信じるようになって、何度言っても聞く耳を持ってくれないのです。閣下の命を受けた伝道師が殺害されたという話もございます」
「……」
晴れが続くことおよそ半年。大地はすっかり干からびて何とか作物の収穫こそ出来たが収量は大したことは無い。長すぎる晴れに国民は怒り心頭だ。雨さえ降ればすべて解決する。そう「雨さえ降れば」だ。
「よし、決めた」
「決めたって……何をですか?」
「もう体裁を取り繕っている時間はない……ピオッジャをさらって来い! 方法は問わない! 何でもありだ!」
追い込まれたセレーノは最終手段に打って出るが、この時の彼は「自分の人生における最後のダメ押しになる悪手」を打ったことをこの時は知らない。
「はい、あなた。私が手作りしたお守りですよ」
サラサはそう言ってピオッジャに文字が彫り込まれた銀の指輪を渡す。結婚を2週間後に控えた彼女は早くも新妻気分だ。
「お守り、か。字が彫り込まれているが何かあるのか?」
「あなたにもしもの事があったらすぐ知らせてくれる魔力が込められていますから、念のため大事に持っていてくださいね」
「ん、分かった。じゃあ行ってくるよ」
曇り空の中、ピオッジャはいつものように王立研究所へと出勤していった。
その日はいつもと様子が違っていた。デラッザ王立の研究所の入り口近くにこの辺りではあまり見かけない怪しい格好をした男が数人、待機していた。
仕事をするためにピオッジャが研究所の門をくぐろうとした時……
「!!」
彼らは雨男の腹に鉄拳を叩き込む。意識を失いぐったりとした彼を担いで近くに止めてあった馬車に放り込み、港町カイメンに向けて出発した。
デラッザ王国首都とカイメンは重要なルートなため幅の広い道が整備されており、馬でも難なく行き来できた。
このまま無事にカイメンまでたどり着けば、あとは手配した船にピオッジャを載せて発ち、祖国ソル王国を目指すだけ。仕事は成功するだろうと思っていた、が……。
「? な、何だぁ?」
望遠鏡で遠くを見ていると、カイメンの入り口に20人近い兵士たちが待機していた。確か行きの時はこんなに多くの兵はいなかったはず。
「構うもんか! このまま突っ切れ! 船に飛び込めばこっちの勝ちだ!」
速度を落とさずに突っ込もうとした次の瞬間! 入り口近くに待機していた兵士の魔法で馬車の車輪が壊され、強制的に止められてしまう。
直後、手際よく兵士たちが馬車をぐるりと囲む。ピオッジャがさらわれたというのは、既に感知されていたのだ。
「ピオッジャ殿はどこにいる?」
「!? な、なぜ分かる!?」
「彼に渡したアクセサリーに込められた魔術や、身体に施した『マーキング』でどこにいるか、どんな状態かすぐわかるようになっている。残念だったな。
さぁ来い! 言っておくがもうすぐ王族になる人物を拉致するとなればタダで済むとは思うなよ?」
まだ婿入り前とはいえ、王族になる予定の彼にはもしもの事はあってはいけない。そのためデラッザ王家は彼の居場所や状態がすぐにわかるようあらかじめ手を打っていたのだ。
その魔術により異変を察知し、カイメンに集められていた兵士たちにより無事にピオッジャは救助され、拉致は未遂に終わった。
ピオッジャ拉致未遂事件が起こってから7日後……デラッザ王に呼び出されたセレーノは縮こまっていた。
「セレーノ。ピオッジャは間もなく我がデラッザ王家に入る人間だというのは当然、知っているはずだよな? 言っておくが「そんなの知りませんでした」とすっとぼけるのは無しにして欲しいがな」
「は、はい……承知の上です。申し訳ありません」
セレーノはまるで、学校の先生から大目玉を食らっている生徒のようにしょぼくれている。
「今回の醜態、謝った程度では到底済まされる問題ではないぞ。で、どうやって落とし前を付けるつもりなんだ? 言っておくが、我が国と戦争でもするつもりなのか? まぁ貴様がそれでいい、というのなら構わんが」
「!! せ、戦争だなんて滅相もありません!」
「ではどうするつもりだ?」
「カネですか?」
「なるほど、カネか……良いだろう。それで『手打ち』と言う事にしよう。ただし、半端な額を包んだらどうなるかは言わなくても判るよな?」
「もちろんですとも」
今回のセレーノの大失態に関しては、ソル王国がデラッザ王国に多額の賠償金を払うことで一応の決着はついた。だがこれがセレーノに対しダメ押しとなるのを彼は知らない。
【次回予告】
国民の怒りは限界を超えていた。もはや「ソル王国にはセレーノは不要だ」と言わせるくらいには、はらわたが煮えくり返るような憎悪を抱いていた。
最終話 「革命」
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