58 / 67
お荷物テイマーだけどテンプレ通り最強になってざまぁします
第1話 読者が最終的にスカッとするための準備期間なんだから我慢しろってか?
しおりを挟む
ある日の夜。宿屋の寝室で騒ぎが起きる。
「ナーダ。ボクは24番のコロンを買ってきて、と言ったんだけど何で25番なの?」
「だってそれしか無かったんだよ!」
「ファイアーボール!」
魔女の手から繰り出されたナーダの握りこぶしほどもある火球が彼の顔面を直撃する。彼の赤茶色いくせ毛に燃え移らなかったのは幸いだ。
「ちょっとナーダ! これアグアの基礎化粧品じゃないでしょ! 私の肌はアグアじゃないと受け付けないんだからね!」
続いて聖女がナーダが買ってきた化粧品に不満をこぼす。
「それも町中の店を訪ねたけどなかったんですよ! 姉妹ブランドだから……」
「ホーリーライトニング!」
白い光がナーダの腹に突き刺さった。
「ホント能無しで使えないよねナーダは!」
勇者パーティのメンバーである聖女は魔女と結託して、この辺の店は24番のコロンもアグアの基礎化粧品も扱っていないことを承知の上で買いに行かせたのだ。
追放元のパーティメンバーらしく性格もねじくれているという設定らしい。そうじゃねえとざまぁの快楽が薄くなるからな。ひでぇことしやがる。
「おいナーダ、昼間俺たちが魔物退治をやってて、その留守番の最中に働いてカネを貯めたそうじゃないか。全額貸してくないか?」
さらにパーティのリーダーである勇者がナーダからカネを借りたいと申しでる。
「貸してくれだと? お前の場合返してくれないから『くれ』って言ってるようなものじゃないか!」
「そりゃそうさ。お前のカネはオレの物に決まってるじゃないか。こんなの3歳児でも知ってる世界の常識だぞ?」
「テメェ! 勇者のくせにカツアゲしている自覚はねえのかよ!」
「カツアゲじゃねえよ、だってそれは犯罪だろ? 「喜捨してくれ」って頼んでるだけじゃねえか」
そう言って彼はナーダに対し何のためらいもなく、それが当たり前のように殴る蹴るの暴行を加える。ぐったりしたナーダの懐を探ってカネを巻き上げた。
「ナーダ、お前に足りないのは感謝だよ」
「感謝……だと?」
ボロぞうきん状態になったナーダが絞るようにそう漏らす。
「そうだ。犬1匹テイム出来ないテイマーが世界を救う勇者のために働けることを感謝しろ。普通の人間には絶対できない名誉ある仕事なんだぞ?」
「傲慢な奴め……」
事の発端はとある王国の第3王子が15歳になり勇者として旅立つ時、国王の手の届く範囲で最も優秀な僧侶と魔法使いである聖女と魔女の2人を呼び寄せ、人類の夢である魔王討伐をその双肩に賭けたのだ。
その「伝説の勇者」の肩書は伊達ではなく吟遊詩人に語られるような大事業を次々と成す事となった。
彼らが旅立つ際に勇者様が言うには「幼馴染」だというナーダをお目付け役……実際にはストレス解消のためのサンドバッグとして取り込んだのだ。
王子やその仲間の性格の悪さは祖国の連中誰もが知っており、なぜナーダを連れていくかも熟知していた。だが、それを止める者は1人もいなかった。
何せ相手は世界を救う勇者様のパーティだ。彼らが世界を救うために必要な「生け贄」の1つ用意するのは「大事の前の小事」だ。
ましてやナーダは表向きの職業はテイマーだが犬1匹テイム出来ない、無職と言える位にありとあらゆる職業の才能がなかったのだ。
だから世界を救う勇者様のストレス解消役になれることを誇りに思え、と親兄弟親戚を含めた国中の人間から脅されたのだ。
勇者パーティは3人ともそろいもそろって弱者をいたぶることが最高のエンターテイメントという性格がクズな連中ばかりだが、
魔王を討伐してから100年ほど経ち、勇者たち本人を含めて関係者全員がいなくなり伝説となればその性格の悪さを言い伝える人間はいなくなり美化される。
英雄なんてそんなもんだ。
そんなわけでナーダの扱いは「奴隷の方がはるかにマシ」とハッキリと言えるほどだった。
奴隷なら多くの国で「奴隷虐待防止法」があるし、働けば給料が出てそれを貯める事も出来るし、それで自分の身を買って自由になることだってできる。ナーダの場合はそれらが一切できない。
あくまで「パーティメンバー」であって「奴隷ではない」から「『奴隷』虐待防止法」の対象外だし、給金は無しで最低限の食事が出される程度、他所で働いたらその賃金は全て巻き上げられる毎日だった。
これなら「奴隷がうらやましい」程には生活水準は低かった。
……とまぁ悲惨なこと書いてるけど、主人公である俺のパーティメンバーにはここまで読者からのヘイトをためてもらわないと「ざまぁ」の快感が薄れるから仕方ないよなぁ。
読者のみんな性格濃いよなー。
【次回予告】
例によって例のごとく主人公こと俺を切り捨てて逃げ出す勇者様御一行。これでチートスキルに目覚めるはず。目覚める……はず……だよね? 何か不穏なタイトルなんだけど。
第2話 「切り捨てられたんだから当然チートスキルに目覚めたりするよね? え? 無し?」
「ナーダ。ボクは24番のコロンを買ってきて、と言ったんだけど何で25番なの?」
「だってそれしか無かったんだよ!」
「ファイアーボール!」
魔女の手から繰り出されたナーダの握りこぶしほどもある火球が彼の顔面を直撃する。彼の赤茶色いくせ毛に燃え移らなかったのは幸いだ。
「ちょっとナーダ! これアグアの基礎化粧品じゃないでしょ! 私の肌はアグアじゃないと受け付けないんだからね!」
続いて聖女がナーダが買ってきた化粧品に不満をこぼす。
「それも町中の店を訪ねたけどなかったんですよ! 姉妹ブランドだから……」
「ホーリーライトニング!」
白い光がナーダの腹に突き刺さった。
「ホント能無しで使えないよねナーダは!」
勇者パーティのメンバーである聖女は魔女と結託して、この辺の店は24番のコロンもアグアの基礎化粧品も扱っていないことを承知の上で買いに行かせたのだ。
追放元のパーティメンバーらしく性格もねじくれているという設定らしい。そうじゃねえとざまぁの快楽が薄くなるからな。ひでぇことしやがる。
「おいナーダ、昼間俺たちが魔物退治をやってて、その留守番の最中に働いてカネを貯めたそうじゃないか。全額貸してくないか?」
さらにパーティのリーダーである勇者がナーダからカネを借りたいと申しでる。
「貸してくれだと? お前の場合返してくれないから『くれ』って言ってるようなものじゃないか!」
「そりゃそうさ。お前のカネはオレの物に決まってるじゃないか。こんなの3歳児でも知ってる世界の常識だぞ?」
「テメェ! 勇者のくせにカツアゲしている自覚はねえのかよ!」
「カツアゲじゃねえよ、だってそれは犯罪だろ? 「喜捨してくれ」って頼んでるだけじゃねえか」
そう言って彼はナーダに対し何のためらいもなく、それが当たり前のように殴る蹴るの暴行を加える。ぐったりしたナーダの懐を探ってカネを巻き上げた。
「ナーダ、お前に足りないのは感謝だよ」
「感謝……だと?」
ボロぞうきん状態になったナーダが絞るようにそう漏らす。
「そうだ。犬1匹テイム出来ないテイマーが世界を救う勇者のために働けることを感謝しろ。普通の人間には絶対できない名誉ある仕事なんだぞ?」
「傲慢な奴め……」
事の発端はとある王国の第3王子が15歳になり勇者として旅立つ時、国王の手の届く範囲で最も優秀な僧侶と魔法使いである聖女と魔女の2人を呼び寄せ、人類の夢である魔王討伐をその双肩に賭けたのだ。
その「伝説の勇者」の肩書は伊達ではなく吟遊詩人に語られるような大事業を次々と成す事となった。
彼らが旅立つ際に勇者様が言うには「幼馴染」だというナーダをお目付け役……実際にはストレス解消のためのサンドバッグとして取り込んだのだ。
王子やその仲間の性格の悪さは祖国の連中誰もが知っており、なぜナーダを連れていくかも熟知していた。だが、それを止める者は1人もいなかった。
何せ相手は世界を救う勇者様のパーティだ。彼らが世界を救うために必要な「生け贄」の1つ用意するのは「大事の前の小事」だ。
ましてやナーダは表向きの職業はテイマーだが犬1匹テイム出来ない、無職と言える位にありとあらゆる職業の才能がなかったのだ。
だから世界を救う勇者様のストレス解消役になれることを誇りに思え、と親兄弟親戚を含めた国中の人間から脅されたのだ。
勇者パーティは3人ともそろいもそろって弱者をいたぶることが最高のエンターテイメントという性格がクズな連中ばかりだが、
魔王を討伐してから100年ほど経ち、勇者たち本人を含めて関係者全員がいなくなり伝説となればその性格の悪さを言い伝える人間はいなくなり美化される。
英雄なんてそんなもんだ。
そんなわけでナーダの扱いは「奴隷の方がはるかにマシ」とハッキリと言えるほどだった。
奴隷なら多くの国で「奴隷虐待防止法」があるし、働けば給料が出てそれを貯める事も出来るし、それで自分の身を買って自由になることだってできる。ナーダの場合はそれらが一切できない。
あくまで「パーティメンバー」であって「奴隷ではない」から「『奴隷』虐待防止法」の対象外だし、給金は無しで最低限の食事が出される程度、他所で働いたらその賃金は全て巻き上げられる毎日だった。
これなら「奴隷がうらやましい」程には生活水準は低かった。
……とまぁ悲惨なこと書いてるけど、主人公である俺のパーティメンバーにはここまで読者からのヘイトをためてもらわないと「ざまぁ」の快感が薄れるから仕方ないよなぁ。
読者のみんな性格濃いよなー。
【次回予告】
例によって例のごとく主人公こと俺を切り捨てて逃げ出す勇者様御一行。これでチートスキルに目覚めるはず。目覚める……はず……だよね? 何か不穏なタイトルなんだけど。
第2話 「切り捨てられたんだから当然チートスキルに目覚めたりするよね? え? 無し?」
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる