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お荷物テイマーだけどテンプレ通り最強になってざまぁします
第1話 読者が最終的にスカッとするための準備期間なんだから我慢しろってか?
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ある日の夜。宿屋の寝室で騒ぎが起きる。
「ナーダ。ボクは24番のコロンを買ってきて、と言ったんだけど何で25番なの?」
「だってそれしか無かったんだよ!」
「ファイアーボール!」
魔女の手から繰り出されたナーダの握りこぶしほどもある火球が彼の顔面を直撃する。彼の赤茶色いくせ毛に燃え移らなかったのは幸いだ。
「ちょっとナーダ! これアグアの基礎化粧品じゃないでしょ! 私の肌はアグアじゃないと受け付けないんだからね!」
続いて聖女がナーダが買ってきた化粧品に不満をこぼす。
「それも町中の店を訪ねたけどなかったんですよ! 姉妹ブランドだから……」
「ホーリーライトニング!」
白い光がナーダの腹に突き刺さった。
「ホント能無しで使えないよねナーダは!」
勇者パーティのメンバーである聖女は魔女と結託して、この辺の店は24番のコロンもアグアの基礎化粧品も扱っていないことを承知の上で買いに行かせたのだ。
追放元のパーティメンバーらしく性格もねじくれているという設定らしい。そうじゃねえとざまぁの快楽が薄くなるからな。ひでぇことしやがる。
「おいナーダ、昼間俺たちが魔物退治をやってて、その留守番の最中に働いてカネを貯めたそうじゃないか。全額貸してくないか?」
さらにパーティのリーダーである勇者がナーダからカネを借りたいと申しでる。
「貸してくれだと? お前の場合返してくれないから『くれ』って言ってるようなものじゃないか!」
「そりゃそうさ。お前のカネはオレの物に決まってるじゃないか。こんなの3歳児でも知ってる世界の常識だぞ?」
「テメェ! 勇者のくせにカツアゲしている自覚はねえのかよ!」
「カツアゲじゃねえよ、だってそれは犯罪だろ? 「喜捨してくれ」って頼んでるだけじゃねえか」
そう言って彼はナーダに対し何のためらいもなく、それが当たり前のように殴る蹴るの暴行を加える。ぐったりしたナーダの懐を探ってカネを巻き上げた。
「ナーダ、お前に足りないのは感謝だよ」
「感謝……だと?」
ボロぞうきん状態になったナーダが絞るようにそう漏らす。
「そうだ。犬1匹テイム出来ないテイマーが世界を救う勇者のために働けることを感謝しろ。普通の人間には絶対できない名誉ある仕事なんだぞ?」
「傲慢な奴め……」
事の発端はとある王国の第3王子が15歳になり勇者として旅立つ時、国王の手の届く範囲で最も優秀な僧侶と魔法使いである聖女と魔女の2人を呼び寄せ、人類の夢である魔王討伐をその双肩に賭けたのだ。
その「伝説の勇者」の肩書は伊達ではなく吟遊詩人に語られるような大事業を次々と成す事となった。
彼らが旅立つ際に勇者様が言うには「幼馴染」だというナーダをお目付け役……実際にはストレス解消のためのサンドバッグとして取り込んだのだ。
王子やその仲間の性格の悪さは祖国の連中誰もが知っており、なぜナーダを連れていくかも熟知していた。だが、それを止める者は1人もいなかった。
何せ相手は世界を救う勇者様のパーティだ。彼らが世界を救うために必要な「生け贄」の1つ用意するのは「大事の前の小事」だ。
ましてやナーダは表向きの職業はテイマーだが犬1匹テイム出来ない、無職と言える位にありとあらゆる職業の才能がなかったのだ。
だから世界を救う勇者様のストレス解消役になれることを誇りに思え、と親兄弟親戚を含めた国中の人間から脅されたのだ。
勇者パーティは3人ともそろいもそろって弱者をいたぶることが最高のエンターテイメントという性格がクズな連中ばかりだが、
魔王を討伐してから100年ほど経ち、勇者たち本人を含めて関係者全員がいなくなり伝説となればその性格の悪さを言い伝える人間はいなくなり美化される。
英雄なんてそんなもんだ。
そんなわけでナーダの扱いは「奴隷の方がはるかにマシ」とハッキリと言えるほどだった。
奴隷なら多くの国で「奴隷虐待防止法」があるし、働けば給料が出てそれを貯める事も出来るし、それで自分の身を買って自由になることだってできる。ナーダの場合はそれらが一切できない。
あくまで「パーティメンバー」であって「奴隷ではない」から「『奴隷』虐待防止法」の対象外だし、給金は無しで最低限の食事が出される程度、他所で働いたらその賃金は全て巻き上げられる毎日だった。
これなら「奴隷がうらやましい」程には生活水準は低かった。
……とまぁ悲惨なこと書いてるけど、主人公である俺のパーティメンバーにはここまで読者からのヘイトをためてもらわないと「ざまぁ」の快感が薄れるから仕方ないよなぁ。
読者のみんな性格濃いよなー。
【次回予告】
例によって例のごとく主人公こと俺を切り捨てて逃げ出す勇者様御一行。これでチートスキルに目覚めるはず。目覚める……はず……だよね? 何か不穏なタイトルなんだけど。
第2話 「切り捨てられたんだから当然チートスキルに目覚めたりするよね? え? 無し?」
「ナーダ。ボクは24番のコロンを買ってきて、と言ったんだけど何で25番なの?」
「だってそれしか無かったんだよ!」
「ファイアーボール!」
魔女の手から繰り出されたナーダの握りこぶしほどもある火球が彼の顔面を直撃する。彼の赤茶色いくせ毛に燃え移らなかったのは幸いだ。
「ちょっとナーダ! これアグアの基礎化粧品じゃないでしょ! 私の肌はアグアじゃないと受け付けないんだからね!」
続いて聖女がナーダが買ってきた化粧品に不満をこぼす。
「それも町中の店を訪ねたけどなかったんですよ! 姉妹ブランドだから……」
「ホーリーライトニング!」
白い光がナーダの腹に突き刺さった。
「ホント能無しで使えないよねナーダは!」
勇者パーティのメンバーである聖女は魔女と結託して、この辺の店は24番のコロンもアグアの基礎化粧品も扱っていないことを承知の上で買いに行かせたのだ。
追放元のパーティメンバーらしく性格もねじくれているという設定らしい。そうじゃねえとざまぁの快楽が薄くなるからな。ひでぇことしやがる。
「おいナーダ、昼間俺たちが魔物退治をやってて、その留守番の最中に働いてカネを貯めたそうじゃないか。全額貸してくないか?」
さらにパーティのリーダーである勇者がナーダからカネを借りたいと申しでる。
「貸してくれだと? お前の場合返してくれないから『くれ』って言ってるようなものじゃないか!」
「そりゃそうさ。お前のカネはオレの物に決まってるじゃないか。こんなの3歳児でも知ってる世界の常識だぞ?」
「テメェ! 勇者のくせにカツアゲしている自覚はねえのかよ!」
「カツアゲじゃねえよ、だってそれは犯罪だろ? 「喜捨してくれ」って頼んでるだけじゃねえか」
そう言って彼はナーダに対し何のためらいもなく、それが当たり前のように殴る蹴るの暴行を加える。ぐったりしたナーダの懐を探ってカネを巻き上げた。
「ナーダ、お前に足りないのは感謝だよ」
「感謝……だと?」
ボロぞうきん状態になったナーダが絞るようにそう漏らす。
「そうだ。犬1匹テイム出来ないテイマーが世界を救う勇者のために働けることを感謝しろ。普通の人間には絶対できない名誉ある仕事なんだぞ?」
「傲慢な奴め……」
事の発端はとある王国の第3王子が15歳になり勇者として旅立つ時、国王の手の届く範囲で最も優秀な僧侶と魔法使いである聖女と魔女の2人を呼び寄せ、人類の夢である魔王討伐をその双肩に賭けたのだ。
その「伝説の勇者」の肩書は伊達ではなく吟遊詩人に語られるような大事業を次々と成す事となった。
彼らが旅立つ際に勇者様が言うには「幼馴染」だというナーダをお目付け役……実際にはストレス解消のためのサンドバッグとして取り込んだのだ。
王子やその仲間の性格の悪さは祖国の連中誰もが知っており、なぜナーダを連れていくかも熟知していた。だが、それを止める者は1人もいなかった。
何せ相手は世界を救う勇者様のパーティだ。彼らが世界を救うために必要な「生け贄」の1つ用意するのは「大事の前の小事」だ。
ましてやナーダは表向きの職業はテイマーだが犬1匹テイム出来ない、無職と言える位にありとあらゆる職業の才能がなかったのだ。
だから世界を救う勇者様のストレス解消役になれることを誇りに思え、と親兄弟親戚を含めた国中の人間から脅されたのだ。
勇者パーティは3人ともそろいもそろって弱者をいたぶることが最高のエンターテイメントという性格がクズな連中ばかりだが、
魔王を討伐してから100年ほど経ち、勇者たち本人を含めて関係者全員がいなくなり伝説となればその性格の悪さを言い伝える人間はいなくなり美化される。
英雄なんてそんなもんだ。
そんなわけでナーダの扱いは「奴隷の方がはるかにマシ」とハッキリと言えるほどだった。
奴隷なら多くの国で「奴隷虐待防止法」があるし、働けば給料が出てそれを貯める事も出来るし、それで自分の身を買って自由になることだってできる。ナーダの場合はそれらが一切できない。
あくまで「パーティメンバー」であって「奴隷ではない」から「『奴隷』虐待防止法」の対象外だし、給金は無しで最低限の食事が出される程度、他所で働いたらその賃金は全て巻き上げられる毎日だった。
これなら「奴隷がうらやましい」程には生活水準は低かった。
……とまぁ悲惨なこと書いてるけど、主人公である俺のパーティメンバーにはここまで読者からのヘイトをためてもらわないと「ざまぁ」の快感が薄れるから仕方ないよなぁ。
読者のみんな性格濃いよなー。
【次回予告】
例によって例のごとく主人公こと俺を切り捨てて逃げ出す勇者様御一行。これでチートスキルに目覚めるはず。目覚める……はず……だよね? 何か不穏なタイトルなんだけど。
第2話 「切り捨てられたんだから当然チートスキルに目覚めたりするよね? え? 無し?」
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