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天使の少女とサバト
scene.16 真理の日常
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今日も雅原家に清々しい朝がやってきた。
雅原真理は眠い目をこすりながら長い髪をくしでとかしていく。その後制服に着替えて下の居間へと降りて行った。
「おはよう。真理。降りてきたばっかりですまないが、恵理が起きて来ないんで起こしてくれないか?」
「うん。わかった」
父親にそう言うとまた2階に上がり、自分の部屋の隣にある妹の部屋に行く。
真理が強い声で起きるよう促すと布団がもぞもぞと動いて恵理に似た顔の少女が出てきた。
「恵理、起きなさい! 遅刻するわよ!」
「う~ん……おはよう。お姉ちゃん」
「下でお父さんとお母さんが待ってるから早く来てね」
「うん。わかった」
最愛の妹、恵理に下のテーブルに来るよう促す。
10分後、そう言って恵理が降りてきて家族全員が揃った。
「ごめん、遅れちゃった」
「よし。さあ祈ろう」
父親がやさしい声で食事前の祈りを捧げるよう促す。
「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意された物を祝福し、私達の心と身体を支える糧としてください。アーメン」
「「「アーメン」」」
父親に続き、母親、妹と共に祈りを捧げた。そして賑やかな食事が始まった。
パンとスープというシンプルながら栄養のとれた食事、それを他愛もない会話を弾ませながら食べていく。
今でこそ穏やかで大切な時間だったというのは分かるがあの頃は当たり前すぎて実感はわかなかった。
「ごきげんよう。お姉様」
「ごきげんよう」
学校が近づくにつれて多くなる聖ルクレチア女学院の女生徒たち。
彼女たちに必ずと言っていいほど真理は挨拶される。それだけ一目置かれる存在というわけだ。校門にたどり着くと生徒の一人が待っていた。
「あ、あの……。お姉様! これ、受け取って下さい!」
恥ずかしいのか顔をまっかにしながら目線を合わせる事なくそう言って真理に一通の便箋を渡して足早に走り去った。
「お姉ちゃんったら、相変わらずの人気者ね」
「恵理、からかわないでよ」
「じゃああたし下駄箱向こうだから、ごきげんよう。お姉様、なんてね」
そう言って恵理は真理とは反対側の下駄箱へと向かっていった。
真理が下駄箱を開ける手紙が何通か入っていた。多分校門で受け取ったのと同じ類の手紙だろうと思った。
学内では生徒会長よりも知名度の高い模範生徒である真理は女学院1の人気者だ。それゆえみんなのお姉様として尊敬されている。
「えっと……これは瀬川 有紫亜ね。この子ったらほんと飽きずに毎週手紙をよこしてくるのね。この子は……見かけない名前ね。中等部かしら? こっちは……」
ホームルームが始まる前に一応手紙は全部チェックするが、返事を書くことは無い。真理にそういう毛は無い、というかどちらかと言えば嫌いな方になるからだ。全て読んだ後は自宅のゴミ箱へと放り込まれる。
午前中の授業を終えて昼食の時間、皆が弁当を食べているところ真理は一人手を付けずに待っていた。
そこへ教室にやって来た恵理が声をかける。
「お姉ちゃん、一緒にお弁当食べよう」
昼食はいつも一緒。恵理が初等部に入学してからというものいつも一緒にご飯を食べている。姉妹水入らずの大切な時間だ。
弁当を食べていると唐突に真理が恵理に切り出した。
「友達とは仲良くやってる?」
「う、うん」
一瞬、ほんの一瞬だが間が開いた。姉にも気づかない程だが、間が開いた。
「そう。ならいいわ」
「あさってから夏休みね。しばらくお姉ちゃんと一緒に過ごせるね」
「そうね。でも宿題は手伝わないわよ。全部自分でやってね」
「うわお姉ちゃんきっつーい」
「当たり前でしょー。もう私やお父さんお母さんに泣きつくのはやめてよね。あなたもう16でしょ?」
そんな他愛もない会話を弾ませながら姉妹仲良く食事をする。
悪魔との戦いはあるものの、父と母、それに最愛の妹と過ごす日々。この日常がずっと続く。真理はそう思っていた。
……あの日、忘れたくても忘れられないあの出来事が起こるまでは。
雅原真理は眠い目をこすりながら長い髪をくしでとかしていく。その後制服に着替えて下の居間へと降りて行った。
「おはよう。真理。降りてきたばっかりですまないが、恵理が起きて来ないんで起こしてくれないか?」
「うん。わかった」
父親にそう言うとまた2階に上がり、自分の部屋の隣にある妹の部屋に行く。
真理が強い声で起きるよう促すと布団がもぞもぞと動いて恵理に似た顔の少女が出てきた。
「恵理、起きなさい! 遅刻するわよ!」
「う~ん……おはよう。お姉ちゃん」
「下でお父さんとお母さんが待ってるから早く来てね」
「うん。わかった」
最愛の妹、恵理に下のテーブルに来るよう促す。
10分後、そう言って恵理が降りてきて家族全員が揃った。
「ごめん、遅れちゃった」
「よし。さあ祈ろう」
父親がやさしい声で食事前の祈りを捧げるよう促す。
「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意された物を祝福し、私達の心と身体を支える糧としてください。アーメン」
「「「アーメン」」」
父親に続き、母親、妹と共に祈りを捧げた。そして賑やかな食事が始まった。
パンとスープというシンプルながら栄養のとれた食事、それを他愛もない会話を弾ませながら食べていく。
今でこそ穏やかで大切な時間だったというのは分かるがあの頃は当たり前すぎて実感はわかなかった。
「ごきげんよう。お姉様」
「ごきげんよう」
学校が近づくにつれて多くなる聖ルクレチア女学院の女生徒たち。
彼女たちに必ずと言っていいほど真理は挨拶される。それだけ一目置かれる存在というわけだ。校門にたどり着くと生徒の一人が待っていた。
「あ、あの……。お姉様! これ、受け取って下さい!」
恥ずかしいのか顔をまっかにしながら目線を合わせる事なくそう言って真理に一通の便箋を渡して足早に走り去った。
「お姉ちゃんったら、相変わらずの人気者ね」
「恵理、からかわないでよ」
「じゃああたし下駄箱向こうだから、ごきげんよう。お姉様、なんてね」
そう言って恵理は真理とは反対側の下駄箱へと向かっていった。
真理が下駄箱を開ける手紙が何通か入っていた。多分校門で受け取ったのと同じ類の手紙だろうと思った。
学内では生徒会長よりも知名度の高い模範生徒である真理は女学院1の人気者だ。それゆえみんなのお姉様として尊敬されている。
「えっと……これは瀬川 有紫亜ね。この子ったらほんと飽きずに毎週手紙をよこしてくるのね。この子は……見かけない名前ね。中等部かしら? こっちは……」
ホームルームが始まる前に一応手紙は全部チェックするが、返事を書くことは無い。真理にそういう毛は無い、というかどちらかと言えば嫌いな方になるからだ。全て読んだ後は自宅のゴミ箱へと放り込まれる。
午前中の授業を終えて昼食の時間、皆が弁当を食べているところ真理は一人手を付けずに待っていた。
そこへ教室にやって来た恵理が声をかける。
「お姉ちゃん、一緒にお弁当食べよう」
昼食はいつも一緒。恵理が初等部に入学してからというものいつも一緒にご飯を食べている。姉妹水入らずの大切な時間だ。
弁当を食べていると唐突に真理が恵理に切り出した。
「友達とは仲良くやってる?」
「う、うん」
一瞬、ほんの一瞬だが間が開いた。姉にも気づかない程だが、間が開いた。
「そう。ならいいわ」
「あさってから夏休みね。しばらくお姉ちゃんと一緒に過ごせるね」
「そうね。でも宿題は手伝わないわよ。全部自分でやってね」
「うわお姉ちゃんきっつーい」
「当たり前でしょー。もう私やお父さんお母さんに泣きつくのはやめてよね。あなたもう16でしょ?」
そんな他愛もない会話を弾ませながら姉妹仲良く食事をする。
悪魔との戦いはあるものの、父と母、それに最愛の妹と過ごす日々。この日常がずっと続く。真理はそう思っていた。
……あの日、忘れたくても忘れられないあの出来事が起こるまでは。
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