47 / 56
終章
Scene.47 篠崎の最期
しおりを挟む
美歌がアメリカに渡航して、7か月ほど経った。ミストと真理は2人とも無事に臨月を迎えた。そろそろ産まれてきてもおかしくない頃だ。
「2人とももう臨月か」
乃亜は大きく張り出した2人のお腹をそっと撫でる。超音波エコーでもう性別もわかっており、ミストには男の子が、真理には女の子がいるそうだ。
名前も既に決まってて男の子は優、女の子は愛と名付ける予定だ。幸せな日常だった。だがそれは1本の電話でバラバラと崩れていく。
乃亜のスマホが鳴った。かけてきたのは木林 麗だった。
「もしもし、乃亜? 今大丈夫?」
「大丈夫だけど……何かあったか?」
「……気を付けて。今アイツ空港に着いたみたいよ」
奴が、日本に戻ってきた。
「……久々だな、日本は。やっぱり故郷の空気は違うねぇ」
「あーん美歌ちゃーん! 会いたかったよー!」
ロリコンの気質がある専属カメラマンが人一倍キモい挙動で美歌を出迎える。それを適当にあしらいつつ待っていた人たちに手を振る。彼女が空港を出てすぐ、篠崎が待ち構えていた。
(舞、みんなを連れて逃げて。アイツは私一人で何とかする)
(……わかりました、美歌さん、気を付けて)
彼の姿を見るなり舞にみんなを避難させるよう指示を出す。邪魔者がいなくなったところで美歌は素の自分をさらけ出す。
「何の用だ? まぁ試運転にはちょうどいいか」
「……待ってたぜ、この時を。リリムの仇だ。俺はテメェをこの手でぶっ殺せる日をずっと待ってたんだ!」
「カ・タ・キ・ウ・チィ!? ウヒャヒャハハハ! バッカじゃねえの!? そんな原始時代の風習持ち出してくる化石レベルのバカがいるなんてある意味奇跡だわ!」
「笑ってられんのも今のうちだぞ」
≪超常者の怪力≫ににた能力に≪魔力集中≫を重ねがけする。それに加えて篠崎はミストに開発してもらった能力をさらに重ねる。
≪過剰強化≫
自らの寿命を削る代わりに驚異的な力を得る、という両刃の剣である能力を。
「お、何だ? 新能力か?」
「ああ。テメエ専用に作ってもらったんだ。……覚悟はいいな!?」
篠崎は削った寿命と持てる限りの魔力を右の拳に込めて美歌に襲い掛かる! それをまともに受けた彼女は……
指3本で防いだ。
「へー。やるじゃん。指1本で済まそうと思ったけど3本も使わせるなんてオメーにしちゃ良くやったよ。上出来上出来」
圧倒的に残酷すぎる現実。篠崎の頭の中では彼女を叩き潰していたはずなのに……現実は非情だった。再び殴りつける篠崎だったがそれもまた指3本で防がれた。
「ふざけんなああああああああああああ!!!!!」
「ふざけんな。だって? おめぇバカじゃねえの? ふざけてんのはオメエだろ?
この世にはオレの横に並ぶ者すらいてはいけないのに、オレに勝てるなんて一瞬でも考えるなんておごがましいにも程があるぜ?
っていうか新能力とか言うオモチャを手にしてイキってんじゃねえよ。カスはどう頑張ってもカスなんだよ。カスが成長したと言ってもせいぜいレベルが1つ上がった程度だぜ? それが一体何になる?」
「畜生! 畜生畜生畜生畜生チクショウチクショウチクショウチクショウチクショオオオオオオオオオオオオ!」
篠崎がヤケを起こして駄々をごねる子供のように美歌に殴りかかる。が、虚しくも彼女にはかすり傷一つつける事さえ出来ない。
彼は涙を浮かべた。己の無力さに、相手の強さに、感情が爆発して涙という形で現れた。
「うう……うぐう……」
「おやおやー、大の大人が泣いちゃうなんて情けないでちゅねー。どうしちゃったんでちゅかー?」
「この野郎おおおおおおおおおお!」
篠崎は渾身の力を込めて美歌をぶん殴る。が、ダメージは無い。
「無様だな。お前」
美歌は篠崎の頭を掴む。そして首の可動範囲を大きく超える程、ひねった。「ごきり」という鈍い音が首から聞こえた後、彼は2度と動くことは無かった。
「こりゃひょっとしたら前より強くなったかもな?」
自分の強さに惚れ惚れしながら彼女が立ち去ろうとした瞬間、後ろから何者かの気配を感じて振り返る。
「オオオオオオオオオオオオ!!!!」
「しつこいんだよ。お前」
半透明の人の様な存在が、そこにはいた。執念だ。執念で篠崎は亡霊となって再び美歌の前に立ちふさがった。それを心底うっとおしそうに思いながら美歌は拳から白い光線を放つ。光は篠崎の霊体の頭部に大きな穴を開けた。
「オオオオオオオ……」
それだけだった。篠崎の霊体はチリのようにぼろぼろに崩れ、消滅していった。まるで何事も無かったかのように、美歌は変身と結界を解除し、タクシーに乗って自宅へと向かっていった。
麗と乃亜が到着したのはそれから1時間後の事だった。空港前という場所からか既に多数の警察官が集まり、野次馬やテレビの取材陣も数多く駆けつけて辺りは騒然としていた。
「遅かったか!」
「篠崎の奴! あれだけ1人で行動するなって言ったのに!」
篠崎の遺体をみてほぼ2人同時に声をあげる。
「これで幹部は私達だけか……10年かけて集めた人材をほんの1年かそこらで……」
「これからどうする?」
「どうするもこうするも、私たちだけで何とか美歌に対抗するしかないでしょ? 敗北するときは、死ぬときよ」
美歌は無傷なのに対し、こちらは次々と幹部たちがやられていく。次は自分たちの首を掻かれる番か。と薄々思いながらも何とかそれを振り払って現場を後にした。
「2人とももう臨月か」
乃亜は大きく張り出した2人のお腹をそっと撫でる。超音波エコーでもう性別もわかっており、ミストには男の子が、真理には女の子がいるそうだ。
名前も既に決まってて男の子は優、女の子は愛と名付ける予定だ。幸せな日常だった。だがそれは1本の電話でバラバラと崩れていく。
乃亜のスマホが鳴った。かけてきたのは木林 麗だった。
「もしもし、乃亜? 今大丈夫?」
「大丈夫だけど……何かあったか?」
「……気を付けて。今アイツ空港に着いたみたいよ」
奴が、日本に戻ってきた。
「……久々だな、日本は。やっぱり故郷の空気は違うねぇ」
「あーん美歌ちゃーん! 会いたかったよー!」
ロリコンの気質がある専属カメラマンが人一倍キモい挙動で美歌を出迎える。それを適当にあしらいつつ待っていた人たちに手を振る。彼女が空港を出てすぐ、篠崎が待ち構えていた。
(舞、みんなを連れて逃げて。アイツは私一人で何とかする)
(……わかりました、美歌さん、気を付けて)
彼の姿を見るなり舞にみんなを避難させるよう指示を出す。邪魔者がいなくなったところで美歌は素の自分をさらけ出す。
「何の用だ? まぁ試運転にはちょうどいいか」
「……待ってたぜ、この時を。リリムの仇だ。俺はテメェをこの手でぶっ殺せる日をずっと待ってたんだ!」
「カ・タ・キ・ウ・チィ!? ウヒャヒャハハハ! バッカじゃねえの!? そんな原始時代の風習持ち出してくる化石レベルのバカがいるなんてある意味奇跡だわ!」
「笑ってられんのも今のうちだぞ」
≪超常者の怪力≫ににた能力に≪魔力集中≫を重ねがけする。それに加えて篠崎はミストに開発してもらった能力をさらに重ねる。
≪過剰強化≫
自らの寿命を削る代わりに驚異的な力を得る、という両刃の剣である能力を。
「お、何だ? 新能力か?」
「ああ。テメエ専用に作ってもらったんだ。……覚悟はいいな!?」
篠崎は削った寿命と持てる限りの魔力を右の拳に込めて美歌に襲い掛かる! それをまともに受けた彼女は……
指3本で防いだ。
「へー。やるじゃん。指1本で済まそうと思ったけど3本も使わせるなんてオメーにしちゃ良くやったよ。上出来上出来」
圧倒的に残酷すぎる現実。篠崎の頭の中では彼女を叩き潰していたはずなのに……現実は非情だった。再び殴りつける篠崎だったがそれもまた指3本で防がれた。
「ふざけんなああああああああああああ!!!!!」
「ふざけんな。だって? おめぇバカじゃねえの? ふざけてんのはオメエだろ?
この世にはオレの横に並ぶ者すらいてはいけないのに、オレに勝てるなんて一瞬でも考えるなんておごがましいにも程があるぜ?
っていうか新能力とか言うオモチャを手にしてイキってんじゃねえよ。カスはどう頑張ってもカスなんだよ。カスが成長したと言ってもせいぜいレベルが1つ上がった程度だぜ? それが一体何になる?」
「畜生! 畜生畜生畜生畜生チクショウチクショウチクショウチクショウチクショオオオオオオオオオオオオ!」
篠崎がヤケを起こして駄々をごねる子供のように美歌に殴りかかる。が、虚しくも彼女にはかすり傷一つつける事さえ出来ない。
彼は涙を浮かべた。己の無力さに、相手の強さに、感情が爆発して涙という形で現れた。
「うう……うぐう……」
「おやおやー、大の大人が泣いちゃうなんて情けないでちゅねー。どうしちゃったんでちゅかー?」
「この野郎おおおおおおおおおお!」
篠崎は渾身の力を込めて美歌をぶん殴る。が、ダメージは無い。
「無様だな。お前」
美歌は篠崎の頭を掴む。そして首の可動範囲を大きく超える程、ひねった。「ごきり」という鈍い音が首から聞こえた後、彼は2度と動くことは無かった。
「こりゃひょっとしたら前より強くなったかもな?」
自分の強さに惚れ惚れしながら彼女が立ち去ろうとした瞬間、後ろから何者かの気配を感じて振り返る。
「オオオオオオオオオオオオ!!!!」
「しつこいんだよ。お前」
半透明の人の様な存在が、そこにはいた。執念だ。執念で篠崎は亡霊となって再び美歌の前に立ちふさがった。それを心底うっとおしそうに思いながら美歌は拳から白い光線を放つ。光は篠崎の霊体の頭部に大きな穴を開けた。
「オオオオオオオ……」
それだけだった。篠崎の霊体はチリのようにぼろぼろに崩れ、消滅していった。まるで何事も無かったかのように、美歌は変身と結界を解除し、タクシーに乗って自宅へと向かっていった。
麗と乃亜が到着したのはそれから1時間後の事だった。空港前という場所からか既に多数の警察官が集まり、野次馬やテレビの取材陣も数多く駆けつけて辺りは騒然としていた。
「遅かったか!」
「篠崎の奴! あれだけ1人で行動するなって言ったのに!」
篠崎の遺体をみてほぼ2人同時に声をあげる。
「これで幹部は私達だけか……10年かけて集めた人材をほんの1年かそこらで……」
「これからどうする?」
「どうするもこうするも、私たちだけで何とか美歌に対抗するしかないでしょ? 敗北するときは、死ぬときよ」
美歌は無傷なのに対し、こちらは次々と幹部たちがやられていく。次は自分たちの首を掻かれる番か。と薄々思いながらも何とかそれを振り払って現場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる