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7月
第21話 ススムの息子と孫
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ウーーウウー、ウーーウウー、ウーーウウー……。
「!? なんだ!?」
進が休憩の時間にパトカーのサイレンがだんだんと近づき、そして急に止まった。
「け、警察!?」
施設の入り口前でパトカーが止まったのを見て、いても立ってもいられず進は走った。
たどり着くと彼の先輩である中年女が先に駆けつけていたので彼は聞いてみることにした。
「一体何があったんですか先輩!?」
「進君!? 何でもススムさんが言い争いをしていて、らちが明かなくなったから警察に通報したみたいよ」
「ススムさんが!?」
中庭に出るとススムと50代らしき男と、進と同じくらいの30代らしき男が言い争っていた。
すでに警官も到着しており、老人と男たちは彼らの手で引きはがされていた。
「お巡りさんちょうどよかった! 聞いてくださいよ! 俺友人の借金の保証人になって急にまとまったカネが必要になったんですよ。
自分一人ではどうしようもなくなってきたんで父さんに相談したら門前払いを食らったんですよ、酷くないですか?」
「お前は何回借金の保証人になれば気が済むんだ!? オレが覚えてるだけでももう8回はなっているぞ!?
臓器でも売って自力で何とかしろ! 50代の人間の臓器の値段なんてたかが知れてるがな」
「!! 皆さん聞きましたか!? 実の息子に向かって「臓器を売って借金を返せ」っていうんですよ!?
酷くないですか!? 酷いですよね!? 私は傷つきましたよ! 名誉棄損になりますよね!? 聞きましたよねさっきの発言! 証人になってくれますよねお巡りさん!?」
50代の男は悪びれる様子もなく周りの人間に叫ぶように語る。
次いで30代と思われる男がしゃべりだした。
「おじいちゃん! 俺仕事失ってマイホームのローンを払えなくなったんだよ! もうおじいちゃんだけが頼りなんだよ! 助けてくれよ! かわいい孫を助けてくれよ!」
「お前は何度仕事を失えば気が済むんだ!? そうやって嘘ついてまでオレからカネをむしり取るやつなぞオレの孫ではない!
家など売れ! それか自殺してでも金作れ!」
「皆さん聞きましたか!? 実の孫に自殺してでも金作れ! って言ったんですよ!?
酷いでしょ! もうこれは裁判を起こさないといけませんね! 皆さん証人になってくれますか!?」
「ハイハイわかりました落ち着いて」
警官は「まーた始まったか」という慣れた顔をして50代の男と30代の男をなだめすかしはじめた。
騒動が終わって自称ススムの息子や孫が施設を去ったあと、ススムは進を相手に語りだした。
「今日は見せたくないものを見せてしまったな。小僧、お前からしたら年上の男はオレの息子だ。
あの息子はまともに働きもしないで親のスネ、つまりはオレのスネをかじり続けて今では50半ばだ。
オレが死んだ後もオレの死体のスネ肉をかじり続けるだろうし、かじるスネ肉が無くなったら骨の髄までしゃぶりつくすだろう。
本当に愚かな息子だ。謙遜ではないぞ。本当の、本当の意味でバカな息子だ。
産むんじゃなかった、親として恥ずかしいバカもバカも大バカ者な息子だとハッキリと言えるよ」
ススムはハァッ。と大きく深いため息をつく。
「お前と同じくらいの年の男はあの息子の子供、つまりはオレの孫だ。
父親そっくりでロクに仕事もせずにブラブラしてて、事あるごとにオレに金を無心しに来ている。
この親にしてこの子あり。とは言ったもんだ。父親そっくりのクズだ。
『倹約家の泥棒はいない』とは言ったものでどいつもこいつも渡したらその日のうちに全額使うようなゴミクズのカス共だ。
仮に5000兆円あったしても3日もすれば全額使い果たすだろう」
「ど、泥棒って……実の息子さんやお孫さんですよね?」
「そうだ。あいつらは一応はオレの息子や孫だがやってることは泥棒と何一つ変わらん。
オレからいかに1円でも多くカネをむしり取るかを全力で考えている。こんな連中が泥棒とどこが違うのかオレの方が聞きたい位だ」
そこまで言って、ススムは再び大きなため息をつく。
「正直お前には見せたくなかったな。警察や施設の人たちに迷惑をかけてしまったし……すまなかったな」
「ススムさんが謝る必要はないですよ」
「そうか。ありがとうな」
そういえば目の前の老人から「ありがとう」だなんて言われるのは初めてな気がする。
「色々ありましたけど課題は進めますよ」
「うむ……そうだな、その意気だ。何があろうが自分のペースを崩してはいけないぞ」
ススムは目の前の若者に少し救われた。と思ったのだが、この時は墓場まで持っていこうと思っていたという。
【次回予告】
息子や孫の襲来で施設の職員とススムの間にわずかだが亀裂が入る。彼はどう出るのだろうか?
第22話 「カネのどこが汚い!? カネとは何かがわかってない!!」
「!? なんだ!?」
進が休憩の時間にパトカーのサイレンがだんだんと近づき、そして急に止まった。
「け、警察!?」
施設の入り口前でパトカーが止まったのを見て、いても立ってもいられず進は走った。
たどり着くと彼の先輩である中年女が先に駆けつけていたので彼は聞いてみることにした。
「一体何があったんですか先輩!?」
「進君!? 何でもススムさんが言い争いをしていて、らちが明かなくなったから警察に通報したみたいよ」
「ススムさんが!?」
中庭に出るとススムと50代らしき男と、進と同じくらいの30代らしき男が言い争っていた。
すでに警官も到着しており、老人と男たちは彼らの手で引きはがされていた。
「お巡りさんちょうどよかった! 聞いてくださいよ! 俺友人の借金の保証人になって急にまとまったカネが必要になったんですよ。
自分一人ではどうしようもなくなってきたんで父さんに相談したら門前払いを食らったんですよ、酷くないですか?」
「お前は何回借金の保証人になれば気が済むんだ!? オレが覚えてるだけでももう8回はなっているぞ!?
臓器でも売って自力で何とかしろ! 50代の人間の臓器の値段なんてたかが知れてるがな」
「!! 皆さん聞きましたか!? 実の息子に向かって「臓器を売って借金を返せ」っていうんですよ!?
酷くないですか!? 酷いですよね!? 私は傷つきましたよ! 名誉棄損になりますよね!? 聞きましたよねさっきの発言! 証人になってくれますよねお巡りさん!?」
50代の男は悪びれる様子もなく周りの人間に叫ぶように語る。
次いで30代と思われる男がしゃべりだした。
「おじいちゃん! 俺仕事失ってマイホームのローンを払えなくなったんだよ! もうおじいちゃんだけが頼りなんだよ! 助けてくれよ! かわいい孫を助けてくれよ!」
「お前は何度仕事を失えば気が済むんだ!? そうやって嘘ついてまでオレからカネをむしり取るやつなぞオレの孫ではない!
家など売れ! それか自殺してでも金作れ!」
「皆さん聞きましたか!? 実の孫に自殺してでも金作れ! って言ったんですよ!?
酷いでしょ! もうこれは裁判を起こさないといけませんね! 皆さん証人になってくれますか!?」
「ハイハイわかりました落ち着いて」
警官は「まーた始まったか」という慣れた顔をして50代の男と30代の男をなだめすかしはじめた。
騒動が終わって自称ススムの息子や孫が施設を去ったあと、ススムは進を相手に語りだした。
「今日は見せたくないものを見せてしまったな。小僧、お前からしたら年上の男はオレの息子だ。
あの息子はまともに働きもしないで親のスネ、つまりはオレのスネをかじり続けて今では50半ばだ。
オレが死んだ後もオレの死体のスネ肉をかじり続けるだろうし、かじるスネ肉が無くなったら骨の髄までしゃぶりつくすだろう。
本当に愚かな息子だ。謙遜ではないぞ。本当の、本当の意味でバカな息子だ。
産むんじゃなかった、親として恥ずかしいバカもバカも大バカ者な息子だとハッキリと言えるよ」
ススムはハァッ。と大きく深いため息をつく。
「お前と同じくらいの年の男はあの息子の子供、つまりはオレの孫だ。
父親そっくりでロクに仕事もせずにブラブラしてて、事あるごとにオレに金を無心しに来ている。
この親にしてこの子あり。とは言ったもんだ。父親そっくりのクズだ。
『倹約家の泥棒はいない』とは言ったものでどいつもこいつも渡したらその日のうちに全額使うようなゴミクズのカス共だ。
仮に5000兆円あったしても3日もすれば全額使い果たすだろう」
「ど、泥棒って……実の息子さんやお孫さんですよね?」
「そうだ。あいつらは一応はオレの息子や孫だがやってることは泥棒と何一つ変わらん。
オレからいかに1円でも多くカネをむしり取るかを全力で考えている。こんな連中が泥棒とどこが違うのかオレの方が聞きたい位だ」
そこまで言って、ススムは再び大きなため息をつく。
「正直お前には見せたくなかったな。警察や施設の人たちに迷惑をかけてしまったし……すまなかったな」
「ススムさんが謝る必要はないですよ」
「そうか。ありがとうな」
そういえば目の前の老人から「ありがとう」だなんて言われるのは初めてな気がする。
「色々ありましたけど課題は進めますよ」
「うむ……そうだな、その意気だ。何があろうが自分のペースを崩してはいけないぞ」
ススムは目の前の若者に少し救われた。と思ったのだが、この時は墓場まで持っていこうと思っていたという。
【次回予告】
息子や孫の襲来で施設の職員とススムの間にわずかだが亀裂が入る。彼はどう出るのだろうか?
第22話 「カネのどこが汚い!? カネとは何かがわかってない!!」
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