3 / 127
若葉の芽生え
第3話 盗賊の討伐
しおりを挟む
「3人組の盗賊討伐、報酬1000G、か」
スマホの画面を操作しながら今日の仕事の内容を決めていく。
この世界に持ち込めたスマホではギルドからの依頼や周辺国の情報を見る事が出来た。充電もしないのになぜか充電率は常に100%で1ヵ月使っていても電池切れが起こることは無かった。
なぜ充電しなくてもいいのかは全く分からないがとりあえず情報収集ツールとして使えるので存分に利用している。
「よしお前ら、仕事だ。盗賊退治だ。相手は人間だから油断は禁物だ。いくぞ!」
「へい!」
「よし、任せな」
マコト達はギルドで正式に依頼を請け負った際、被害届に書かれてあった盗賊の出没場所を行商を装い道を歩く。
3人ともローブを羽織り、身なりから盗賊討伐の為に来た冒険者であることを悟られないようにしている。しばらく辺りで休息するフリをしていると……
「おっと待ちな。先を行きたきゃ通行料を払ってもらおうか?」
予想通り、奴らが現れた。明らかに顔つきや身なりが悪く、ナタやマキ割り用の斧、あるいは包丁で武装した盗賊3名がマコト達の前に立ちふさがった。
通行料を払え、と来たから要は行商相手に「勝手に定めた通行料」を取るという商売なのだろう。
「通行料ねぇ。いくらだい?」
お虎が尋ねると盗賊は少しだけ考えて答えを出す。
「3000ゴールドだ」
「そうか、分かった」
彼女はそう言うと自分の得物である並の人間なら両手でないと扱えない程の大太刀を片手で振るい、盗賊の一人の首を斬り飛ばした。
「ゴブー!」
「分かってますぜ姐さん!」
続いてゴブーが引き絞っていた弓から矢を放つ。狙い通り首を斬り飛ばされた者ではない別の盗賊の左目に突き刺さった。彼は図体に似合わない情けない悲鳴をあげながら地面にうずくまる。
「いやぁすまないねぇ。持ち合わせがほんの少し足りなくてね。アンタら3人組で通行料が3000ゴールドって事は1人につき1000ゴールドの払いって事だろ? 1人いなくなったからこれで2000ゴールドで済むから、今なら払ってやれるよ」
「こ、この野郎! ふざけやがって!」
お虎が盗賊たちに彼らにも勝るとも劣らない位下種さにあふれる声を吐き捨てる。残りの1人が戦闘態勢に入った瞬間、急に牙を向いた獲物3人組のうち、1人がいない事に気付く。それと同時に彼の後ろから声がした。
「動くな。武器を捨てろ」
盗賊の首にはマコトが持つ冷たくて鋭いナタの刃が当たっている。彼はお虎が盗賊を斬って相手がそっちに注意が向いているのを見てそのスキに後ろに回り込んだのだ。
刃は鋭く砥がれており、ナタと言えど首を斬って致命傷を負わせるには十分だろう。盗賊はしばらく考えた後……舌打ちしながら武器を手放した。
「チッ」
「お利口さんで助かる。お虎、コイツらを縛り上げろ。言っとくが、くれぐれも暴れるなよ?」
マコト一行は盗賊2名を抵抗できないように縛って持ち物検査を始める。
「フーム。10ゴールド銅貨4枚に50ゴールド銅貨2枚に100ゴールド銅貨7枚、あとは……おっ、500ゴールド銀貨が1枚か」
「なかなかの臨時収入じゃないの。宴会でもやろうよ」
「そうだな。たまにはいいだろう。今日は早めに帰るぞ」
いつものように街……都市国家シューヴァルにあるギルドからの依頼をこなしたマコトのスマホが今まで聞いたことのない着信メロディを奏でた。
「何だ?」
マコトが不思議そうにスマホを開く。そこには相変わらず無機質な、だが見たことが無いメッセージが書かれていた。
「リシア国がアレンシア国に攻め込まれ滅亡しました」
「……あのリシア国が、滅んだだと?」
「オイ、何だその四角い板は?」
「お前には関係ない事だ。街に行くぞ。とっとと歩け」
マコトはスマホを不思議そうに見た盗賊を軽くあしらいつつ、今後の予定をどうするか頭の中で考えることにした。
自分たちよりも大きな国であるリシア国が滅んだ。この流れはまずい。あまり良く無い知らせだとも思っていた。
スマホの画面を操作しながら今日の仕事の内容を決めていく。
この世界に持ち込めたスマホではギルドからの依頼や周辺国の情報を見る事が出来た。充電もしないのになぜか充電率は常に100%で1ヵ月使っていても電池切れが起こることは無かった。
なぜ充電しなくてもいいのかは全く分からないがとりあえず情報収集ツールとして使えるので存分に利用している。
「よしお前ら、仕事だ。盗賊退治だ。相手は人間だから油断は禁物だ。いくぞ!」
「へい!」
「よし、任せな」
マコト達はギルドで正式に依頼を請け負った際、被害届に書かれてあった盗賊の出没場所を行商を装い道を歩く。
3人ともローブを羽織り、身なりから盗賊討伐の為に来た冒険者であることを悟られないようにしている。しばらく辺りで休息するフリをしていると……
「おっと待ちな。先を行きたきゃ通行料を払ってもらおうか?」
予想通り、奴らが現れた。明らかに顔つきや身なりが悪く、ナタやマキ割り用の斧、あるいは包丁で武装した盗賊3名がマコト達の前に立ちふさがった。
通行料を払え、と来たから要は行商相手に「勝手に定めた通行料」を取るという商売なのだろう。
「通行料ねぇ。いくらだい?」
お虎が尋ねると盗賊は少しだけ考えて答えを出す。
「3000ゴールドだ」
「そうか、分かった」
彼女はそう言うと自分の得物である並の人間なら両手でないと扱えない程の大太刀を片手で振るい、盗賊の一人の首を斬り飛ばした。
「ゴブー!」
「分かってますぜ姐さん!」
続いてゴブーが引き絞っていた弓から矢を放つ。狙い通り首を斬り飛ばされた者ではない別の盗賊の左目に突き刺さった。彼は図体に似合わない情けない悲鳴をあげながら地面にうずくまる。
「いやぁすまないねぇ。持ち合わせがほんの少し足りなくてね。アンタら3人組で通行料が3000ゴールドって事は1人につき1000ゴールドの払いって事だろ? 1人いなくなったからこれで2000ゴールドで済むから、今なら払ってやれるよ」
「こ、この野郎! ふざけやがって!」
お虎が盗賊たちに彼らにも勝るとも劣らない位下種さにあふれる声を吐き捨てる。残りの1人が戦闘態勢に入った瞬間、急に牙を向いた獲物3人組のうち、1人がいない事に気付く。それと同時に彼の後ろから声がした。
「動くな。武器を捨てろ」
盗賊の首にはマコトが持つ冷たくて鋭いナタの刃が当たっている。彼はお虎が盗賊を斬って相手がそっちに注意が向いているのを見てそのスキに後ろに回り込んだのだ。
刃は鋭く砥がれており、ナタと言えど首を斬って致命傷を負わせるには十分だろう。盗賊はしばらく考えた後……舌打ちしながら武器を手放した。
「チッ」
「お利口さんで助かる。お虎、コイツらを縛り上げろ。言っとくが、くれぐれも暴れるなよ?」
マコト一行は盗賊2名を抵抗できないように縛って持ち物検査を始める。
「フーム。10ゴールド銅貨4枚に50ゴールド銅貨2枚に100ゴールド銅貨7枚、あとは……おっ、500ゴールド銀貨が1枚か」
「なかなかの臨時収入じゃないの。宴会でもやろうよ」
「そうだな。たまにはいいだろう。今日は早めに帰るぞ」
いつものように街……都市国家シューヴァルにあるギルドからの依頼をこなしたマコトのスマホが今まで聞いたことのない着信メロディを奏でた。
「何だ?」
マコトが不思議そうにスマホを開く。そこには相変わらず無機質な、だが見たことが無いメッセージが書かれていた。
「リシア国がアレンシア国に攻め込まれ滅亡しました」
「……あのリシア国が、滅んだだと?」
「オイ、何だその四角い板は?」
「お前には関係ない事だ。街に行くぞ。とっとと歩け」
マコトはスマホを不思議そうに見た盗賊を軽くあしらいつつ、今後の予定をどうするか頭の中で考えることにした。
自分たちよりも大きな国であるリシア国が滅んだ。この流れはまずい。あまり良く無い知らせだとも思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる