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若葉の芽生え
第4話 敵情視察
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リシア国滅亡を知ってマコト率いるハシバ国では緊急会合(と言っても人口3人だが)が開かれた。
「リシア国は俺らよりでかい国だった。しかも厄介な事にそこを飲み込んだことでアレンシア国は都市国家シューヴァルを挟んで隣同士……通じている道路からすれば遅かれ早かれ俺達とぶつかる事になる」
「で、どうするんだい、大将?」
お虎が尋ねる。
「これから元リシア国領に向かって敵情視察をしたいと思う。あと戦乱の中で何かおいしい仕事でも見つかればそれに越したことは無い。明日国を発つ。ついてきてくれ」
「何か火事場泥棒みてえじゃないですかおいらたち……」
「しゃあねえだろそうでもしねえと到底国力がつかないんだ。山賊退治ばっかりじゃいつまでたっても貧乏暮しさ。というわけで今日は早めに寝ろ」
「へいへい」
翌朝……都市国家シューヴァルを抜け、2時間かけて元リシア国領内へとたどり着いた。領内は平時に比べればにぎわっており、戦乱の最中という割にはわりと秩序だった様相だった。
「よう。あんた王だな? だったら俺を雇え。何を隠そう俺は薔薇の騎士団団長のディオール様だぜ?」
「ちょっと待ちな! あたいこそ本物のディオールさ! この男は偽物よ!」
領内についた一行を歓迎したのは、マコトを王と知って近づいてきた自称薔薇の騎士団団長ディオールと名乗る男や女たち。ちょっと市場を歩くだけで何人も出くわした。さしずめ街中はディオールの見本市といったところか。
マコトはその辺の住人に尋ねる。
「薔薇の騎士団団長ディオールか……何か知らないかい?」
「いやそれが……何も分からないとしか言いようがないんだ」
「本当に何も分からないのか? 男か女かくらいは分かるんじゃないのか?」
「それも分からん。俺も聞いただけで良く分からんがかなりの「たかいれありてぃ」とかいうものらしくて正体は極力隠していたみたいだよ」
この世界は「異界(要は地球)から召喚された王からすれば」全ての人や魔物はNからR、HR、VR、SR、そしてSSRの6等級でランク分けされている。
当然高レアリティは他所に知られると色々厄介になるので隠す事もあるだろう。その辺リシア国は徹底していたらしい。
ただあくまでレアリティを気にするのは異界の王だけであって一般人にはあまり関係の無い話なのだが。
「大将、ディオールは色々いやすがどれが本物なんですかい?」
「あるいは……全員偽物って言う事もありうる」
「ああ、そういう事も……」
「あぁ?」
ゴブーと話していたマコトの声を聞いてディオールと名乗る、人相がひときわ悪い男の一人がナイフを向ける。
「オイ兄ちゃん。本物のディオール様相手によくそんな口がきけるな」
「待ちな! ディオール様とやら。うちの大将に手ぇ出したら頭から喰うからね!」
「へっ。まぁいいさ。真贋を見極められないしょぼい目ん玉つけてる王なんてこちらから願い下げだね」
お虎が脅しをかけるが自称ディオールはどこ吹く風のふてぶてしい態度をとる。捨て台詞を吐いて彼は人ごみの中へと消えていった。一行は気にせずギルドへ行くことにした。
「フーム……ちょうどいいや。アンタらでもこなせそうな仕事があったぜ」
「山賊退治、か……」
「山賊退治と言うけど実際には敗残兵みたいなもんだな。みんなケガでボロボロらしいからアンタらでもこなせるだろう」
ギルドの依頼には山賊退治が目立つ。国を失い流浪の民と化した元兵士が山賊に身を落としているという寸法だろう。
それを狙って賞金目当ての腕自慢の傭兵たちや、引き抜きのための他の王、あるいはその配下があつまっているのが相場だ。ギルドの担当者が言うには自分たちの戦力でもこなせる程相手はボロボロらしい。
「報酬は……3000ゴールドか。よし、引き受けよう」
「おいらたちには少し荷が重いんじゃないんですかねぇ?」
「別に倒す必要はない。仲間に引き抜いても良いし、いざとなれば逃げればいい。元々敗残兵を拾うために受けたようなもんだし気楽に行こうぜ」
一行は気楽に向かっていった。……特大の大当たりを引くことも知らずに。
「リシア国は俺らよりでかい国だった。しかも厄介な事にそこを飲み込んだことでアレンシア国は都市国家シューヴァルを挟んで隣同士……通じている道路からすれば遅かれ早かれ俺達とぶつかる事になる」
「で、どうするんだい、大将?」
お虎が尋ねる。
「これから元リシア国領に向かって敵情視察をしたいと思う。あと戦乱の中で何かおいしい仕事でも見つかればそれに越したことは無い。明日国を発つ。ついてきてくれ」
「何か火事場泥棒みてえじゃないですかおいらたち……」
「しゃあねえだろそうでもしねえと到底国力がつかないんだ。山賊退治ばっかりじゃいつまでたっても貧乏暮しさ。というわけで今日は早めに寝ろ」
「へいへい」
翌朝……都市国家シューヴァルを抜け、2時間かけて元リシア国領内へとたどり着いた。領内は平時に比べればにぎわっており、戦乱の最中という割にはわりと秩序だった様相だった。
「よう。あんた王だな? だったら俺を雇え。何を隠そう俺は薔薇の騎士団団長のディオール様だぜ?」
「ちょっと待ちな! あたいこそ本物のディオールさ! この男は偽物よ!」
領内についた一行を歓迎したのは、マコトを王と知って近づいてきた自称薔薇の騎士団団長ディオールと名乗る男や女たち。ちょっと市場を歩くだけで何人も出くわした。さしずめ街中はディオールの見本市といったところか。
マコトはその辺の住人に尋ねる。
「薔薇の騎士団団長ディオールか……何か知らないかい?」
「いやそれが……何も分からないとしか言いようがないんだ」
「本当に何も分からないのか? 男か女かくらいは分かるんじゃないのか?」
「それも分からん。俺も聞いただけで良く分からんがかなりの「たかいれありてぃ」とかいうものらしくて正体は極力隠していたみたいだよ」
この世界は「異界(要は地球)から召喚された王からすれば」全ての人や魔物はNからR、HR、VR、SR、そしてSSRの6等級でランク分けされている。
当然高レアリティは他所に知られると色々厄介になるので隠す事もあるだろう。その辺リシア国は徹底していたらしい。
ただあくまでレアリティを気にするのは異界の王だけであって一般人にはあまり関係の無い話なのだが。
「大将、ディオールは色々いやすがどれが本物なんですかい?」
「あるいは……全員偽物って言う事もありうる」
「ああ、そういう事も……」
「あぁ?」
ゴブーと話していたマコトの声を聞いてディオールと名乗る、人相がひときわ悪い男の一人がナイフを向ける。
「オイ兄ちゃん。本物のディオール様相手によくそんな口がきけるな」
「待ちな! ディオール様とやら。うちの大将に手ぇ出したら頭から喰うからね!」
「へっ。まぁいいさ。真贋を見極められないしょぼい目ん玉つけてる王なんてこちらから願い下げだね」
お虎が脅しをかけるが自称ディオールはどこ吹く風のふてぶてしい態度をとる。捨て台詞を吐いて彼は人ごみの中へと消えていった。一行は気にせずギルドへ行くことにした。
「フーム……ちょうどいいや。アンタらでもこなせそうな仕事があったぜ」
「山賊退治、か……」
「山賊退治と言うけど実際には敗残兵みたいなもんだな。みんなケガでボロボロらしいからアンタらでもこなせるだろう」
ギルドの依頼には山賊退治が目立つ。国を失い流浪の民と化した元兵士が山賊に身を落としているという寸法だろう。
それを狙って賞金目当ての腕自慢の傭兵たちや、引き抜きのための他の王、あるいはその配下があつまっているのが相場だ。ギルドの担当者が言うには自分たちの戦力でもこなせる程相手はボロボロらしい。
「報酬は……3000ゴールドか。よし、引き受けよう」
「おいらたちには少し荷が重いんじゃないんですかねぇ?」
「別に倒す必要はない。仲間に引き抜いても良いし、いざとなれば逃げればいい。元々敗残兵を拾うために受けたようなもんだし気楽に行こうぜ」
一行は気楽に向かっていった。……特大の大当たりを引くことも知らずに。
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