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領土平定
第98話 再会 1人と2匹
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「いやぁ大将、お久しぶりですねぇ」
「その声は、ゴブーか! 久しぶりだな。最近顔を見なかったけど元気してるか?」
ゴブーは教師に配置替えした後は正式に軍を辞め、退役軍人としてゴブリンたちをはじめとする魔物相手に人間の言葉を教える教師として活躍していた。
また、魔物研究家のクローゼの養子であるゴブリンのシャーレと結婚し、4人の子供に恵まれ全員無事に成人するまで育て上げた。
戦場で活躍することはないものの、それなりにいい余生は送れている。
ただ軍拡一直線で軍の中心にいたマコトとは接点がかなり薄く、なかなか出会うことはできなかった。
「いやあ最近は目がかすんできて近くの物が見えにくくなってまして……年はとりたくないもんですぜ」
ゴブーは人間でいえば壮年から初老に入って来る頃で筋力の衰えなどの老化が始まっていた。
早く成長する分、早く年を取ってしまうのだ。
せっかくなのでお互いに積もる話をしていたところ、火のマナ炉と、それに併設される鍛冶場と公衆浴場の建設地という
ハシバ国でも類を見ない大規模な建設工事を行っている場所にやってきた。
火のマナ炉は大型の設備で、小屋ほどの大きさがある。旧エルフ文明ではもっと小型高出力化が出来たらしいが現在の技術ではこれが限界らしい。
その分パワーはあって鍛冶炉への熱供給に城への暖房、さらには公衆浴場への温水供給をしてもまだ余力があるほどだという。
「大将、そういやこの浴場って大将が特に力を入れてる施設じゃないですか。なんでまた風呂場にこだわるんですかね?」
「あ、ああ。風呂があれば衛生的になって病気も減るからな。それにいつまでも川の水で洗わせたりシューヴァルまで行かせるのは酷だろー。特に冬はなぁ」
マコトはそれらしい理由を付けたが、嘘のようなものだ。本当は日本人として風呂の無い生活があまりにも味気なかったためである。
「あれぇ!? そこにいるのはゴブーに大将じゃない! 元気してた?」
「その声は、お虎姐さんですかい!? いやあ久しぶりですな!」
ゴブーが聞きなれた声に振り返るとそこにはお虎がいた。偶然同じ場所に居合わせ、懐かしい声がするので探してみたら出会ったのだ。
「お虎か、ケンイチの乳母をしていた時以来だな。しばらく会ってない間、何かあったか?」
「詳しいことはメリルから聞いたらどうだい? 彼女とは今でも会ってるから詳しい話はそこから聞けると思うよ」
「へぇ、そうか。やっぱり母親ってことで波長が合うんだな。ところで昼飯はまだか? 良ければ一緒に食べようぜ。俺がおごるよ」
「お、良いですねぇ。行きやしょう」
「良いねぇ。一緒に行こうよ」
そうと決まれば話は早い。マコトは2人を連れてダイニングバー「月光」へと向かう。
「今日のメニューは……ええと?『レーズンパンにサラダを添えて』か。それを3人前頼む」
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
給仕はそう言って厨房へと向かう。今から作るらしい。
「そういえばオイラ達出会ってからずいぶん経ちやしたね。一緒に山賊狩りしてたのが懐かしいですわ」
「そうだなぁ。昔のアタシは結構暴れてたよね」
「ああ。昔のお前は『鬼』だったが『女』じゃなかったな。すげえ荒々しかったぜ。娘のお梅ちゃんが出来たらビックリするくらい急に丸くなったぜお前」
「ある程度自覚はあるけどそこまでかなぁ?」
「劇的に変化したぞ? 一瞬別人かと思ったくらいさ」
「談笑中のところ失礼いたします。『レーズンパンにサラダを添えて』3人分お持ちいたしました」
レーズンの入った焼き立ての温かいパンに葉野菜とゆでたトウモロコシを散らしたサラダが出てきた。
「そういやゴブー、アンタ老けたねぇ。完全にオッサンとジジイの中間地点じゃない」
「いやぁあっしはもう8歳になるんで完全に若者じゃあねえですな。最近は腰も痛くなりだして困ったもんですよ」
「お前いつの間にかクローゼさんとこのシャーレと結婚して子供までいるんだって? 遠慮しないで式やるときに呼んでくれれば駆け付けたのにさぁ」
「いやぁ。派手に結婚式やる金がなかったんでクローゼさんと3人だけで済ませましたよ。大将やお虎姐さんに知らせなかったってのはちょっとまずかったかもしれませんがね」
「そうだ、ゴブー。後で子供たちの事も紹介してくれよ」
3人はしゃべりながらレーズンのほのかな甘味がするパンを食べ、散らしたトウモロコシからの甘味がほんのりとするサラダを食べる。
今となってはそれぞれの道を歩む者たち、その再開の喜びを分かち合った。
【次回予告】
そこは半ば海賊団の奴隷と化した町であった。
そこを救うためにマコトは秘密兵器を用意する。
第99話 「航空母艦ソルディバイド」
「その声は、ゴブーか! 久しぶりだな。最近顔を見なかったけど元気してるか?」
ゴブーは教師に配置替えした後は正式に軍を辞め、退役軍人としてゴブリンたちをはじめとする魔物相手に人間の言葉を教える教師として活躍していた。
また、魔物研究家のクローゼの養子であるゴブリンのシャーレと結婚し、4人の子供に恵まれ全員無事に成人するまで育て上げた。
戦場で活躍することはないものの、それなりにいい余生は送れている。
ただ軍拡一直線で軍の中心にいたマコトとは接点がかなり薄く、なかなか出会うことはできなかった。
「いやあ最近は目がかすんできて近くの物が見えにくくなってまして……年はとりたくないもんですぜ」
ゴブーは人間でいえば壮年から初老に入って来る頃で筋力の衰えなどの老化が始まっていた。
早く成長する分、早く年を取ってしまうのだ。
せっかくなのでお互いに積もる話をしていたところ、火のマナ炉と、それに併設される鍛冶場と公衆浴場の建設地という
ハシバ国でも類を見ない大規模な建設工事を行っている場所にやってきた。
火のマナ炉は大型の設備で、小屋ほどの大きさがある。旧エルフ文明ではもっと小型高出力化が出来たらしいが現在の技術ではこれが限界らしい。
その分パワーはあって鍛冶炉への熱供給に城への暖房、さらには公衆浴場への温水供給をしてもまだ余力があるほどだという。
「大将、そういやこの浴場って大将が特に力を入れてる施設じゃないですか。なんでまた風呂場にこだわるんですかね?」
「あ、ああ。風呂があれば衛生的になって病気も減るからな。それにいつまでも川の水で洗わせたりシューヴァルまで行かせるのは酷だろー。特に冬はなぁ」
マコトはそれらしい理由を付けたが、嘘のようなものだ。本当は日本人として風呂の無い生活があまりにも味気なかったためである。
「あれぇ!? そこにいるのはゴブーに大将じゃない! 元気してた?」
「その声は、お虎姐さんですかい!? いやあ久しぶりですな!」
ゴブーが聞きなれた声に振り返るとそこにはお虎がいた。偶然同じ場所に居合わせ、懐かしい声がするので探してみたら出会ったのだ。
「お虎か、ケンイチの乳母をしていた時以来だな。しばらく会ってない間、何かあったか?」
「詳しいことはメリルから聞いたらどうだい? 彼女とは今でも会ってるから詳しい話はそこから聞けると思うよ」
「へぇ、そうか。やっぱり母親ってことで波長が合うんだな。ところで昼飯はまだか? 良ければ一緒に食べようぜ。俺がおごるよ」
「お、良いですねぇ。行きやしょう」
「良いねぇ。一緒に行こうよ」
そうと決まれば話は早い。マコトは2人を連れてダイニングバー「月光」へと向かう。
「今日のメニューは……ええと?『レーズンパンにサラダを添えて』か。それを3人前頼む」
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
給仕はそう言って厨房へと向かう。今から作るらしい。
「そういえばオイラ達出会ってからずいぶん経ちやしたね。一緒に山賊狩りしてたのが懐かしいですわ」
「そうだなぁ。昔のアタシは結構暴れてたよね」
「ああ。昔のお前は『鬼』だったが『女』じゃなかったな。すげえ荒々しかったぜ。娘のお梅ちゃんが出来たらビックリするくらい急に丸くなったぜお前」
「ある程度自覚はあるけどそこまでかなぁ?」
「劇的に変化したぞ? 一瞬別人かと思ったくらいさ」
「談笑中のところ失礼いたします。『レーズンパンにサラダを添えて』3人分お持ちいたしました」
レーズンの入った焼き立ての温かいパンに葉野菜とゆでたトウモロコシを散らしたサラダが出てきた。
「そういやゴブー、アンタ老けたねぇ。完全にオッサンとジジイの中間地点じゃない」
「いやぁあっしはもう8歳になるんで完全に若者じゃあねえですな。最近は腰も痛くなりだして困ったもんですよ」
「お前いつの間にかクローゼさんとこのシャーレと結婚して子供までいるんだって? 遠慮しないで式やるときに呼んでくれれば駆け付けたのにさぁ」
「いやぁ。派手に結婚式やる金がなかったんでクローゼさんと3人だけで済ませましたよ。大将やお虎姐さんに知らせなかったってのはちょっとまずかったかもしれませんがね」
「そうだ、ゴブー。後で子供たちの事も紹介してくれよ」
3人はしゃべりながらレーズンのほのかな甘味がするパンを食べ、散らしたトウモロコシからの甘味がほんのりとするサラダを食べる。
今となってはそれぞれの道を歩む者たち、その再開の喜びを分かち合った。
【次回予告】
そこは半ば海賊団の奴隷と化した町であった。
そこを救うためにマコトは秘密兵器を用意する。
第99話 「航空母艦ソルディバイド」
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