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激闘 ヴェルガノン帝国
第113話 反攻作戦
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「閣下。戦と行軍続きで兵たちに疲れが見えています。休息をとらせてはいかがでしょうか?」
「ふむ、仕方ないな。しばらく休暇を取らせよう。制圧された領土を最大限に注意深く監視してくれ。あいつらは何を持ち出してくるかわかったもんじゃないからな」
「ハッ」
首都陥落の危機は去った。だが依然ヴェルガノン帝国はミサワ領、ランカ領、そしてペク国を制圧中であり、何とかして彼らを追い出さなくてはならない。
だが戦や行軍続きでは兵士の士気に悪影響が出るので、マコトは10日の休息を与えることにした。
「いかがなさいますかティアラ様?」
「今回の作戦は相手の隙を見て首都を陥落させることが狙いだったが、それが失敗したとなれば正直負け戦だ。
無論このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。敵将の1人でも引き込むくらいの事はしないとデューク様に面目が立たない」
首なし騎士のティアラは苦い顔をしながらも指示をする。
今の自分たちは敗残兵のようなものだが、戦果の1つあげずに帰るわけにもいかないと思っていたからだ。彼女は皇帝デュークに並々ならぬ忠誠心を持っていたがため、特に。
「……城壁ごと相手を崩す、と? 出来るのか?」
「はい。せっかく築いたペク国の城壁を壊すことになりますけどよろしいですか? 修繕費は出しますよ」
「マコトよ、お主がそう言うのなら構わん。領土解放のためだ、好きにしてくれ」
「ありがとうございます」
マコトはペク国の老師と話をしていた。彼が言うには城壁ごと相手を崩すつもりらしい。それだけの兵器を彼は持っていたのだ。
ハシバ国本隊が帰還してから10日後。辺りはすっかり冬の空気になった中をハシバ国の軍が領土解放のために動き出す。まずはミサワ領とランカ領の解放のため本隊を2つに分けて攻め込んだ。
「閣下、各員戦闘配備につきました。ご指示を」
「分かった。砲撃を開始してくれ」
ミサワ国を攻め込む隊の総司令であるマコトが砲撃開始の指示を送る。
10門ある大砲が次々と砲弾を撃ち出し城壁に叩きつける。砲弾が1発当たるだけで壁にヒビが入るほどの威力を持ったものを断続的ではあるが飛ばし続ける。
ヒビの入った壁に続けて食らえば城壁の石は砕けはがれ落ち、徐々に浸食されていく。
ドワーフたちが開発した大砲は戦場の光景を大きく塗りかえた。大砲から発射される砲弾は石でできた城壁を砕くほどの威力があり、従来の城や城壁での籠城は不可能となった。
マコトは以前、大砲の技術を持つオレイカルコス連合との戦いでは「大砲の前では城壁は何の意味も無い」事を知っており、極力防衛戦をしないよう采配を振るっていた。
「ティアラ様! このままでは城壁が持ちません!」
「クッ! やむを得ん! 野戦をするぞ!」
(これでは『引きずり出された』格好になるな……籠城すれば城壁ごと崩され、野戦に出れば相手を倒すには数が足りない……クッ! どうすれば!)
ティアラは苦虫を噛み潰したような渋い顔をして采配を振るう。たとえ自分達が大きく不利であるというのを知っていてもなお。
「閣下、敵部隊が城壁から出て来る模様です」
「そうか。野戦の用意をしとけ!」
マコトは明るい顔をしながら指示を出す。
以前イルバーン防衛戦で勝った経験に加え、今回の戦では首都防衛戦で援護してくれた僧兵たちがいることもあって、特別に不利な要素でもなければ勝てるだろうと踏んでいたのだ。
「グゥア!」
「アガガ! アガ……ガ……ガ……」
弓矢の射程外から聖別された銃弾、並びに聖なる魔法が絶え間なく撃ち出され、次々と不死者の兵隊たちが倒されていく。
射程外からの一方的な攻撃を仮に突破できたとしても、接近戦においてはヴェルガノン帝国軍の天敵とでもいえる僧兵が待ち受けるマコトの軍は、彼らにとって真正面から打ち破るのはほぼ不可能な存在だった。
「ティアラ様! 我が隊の残存兵残り僅かです!」
次々と上がってくる報告は自分たちが苦戦、不利な状況であることを伝える物ばかり。明るいニュースは皆無だ。
「クソッ! ここまでか! 総員に退却命令を。再び山脈を超えて本国まで撤退する!」
彼女は苦渋の決断を下した、いや下さざるを得なかった。
「閣下。すんなり勝てましたね」
「ま、勝った勝ったともてはやされるような戦いってのは危ないものさ。勝って当然、勝てて当たり前の勝利こそ本当の勝利ってやつなのさ」
「この調子だとヴェルガノン帝国とやらも案外大したことなさそうに見えてきましたよ。山脈越えは慌てましたけどそれ以外はどうってことないですね。ま、いわゆる1発屋ってやつですかね?」
「……だといいがな。勝ち戦でも調子に乗るなと伝えてくれ」
「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。連戦連勝続きであるハシバ国軍だがいつそれが崩れるかはわからない。用心するに越したことはないとマコトの感が告げていた。
【次回予告】
ランカ領を奪還する部隊に組み込まれていたクルス。そこで彼は全てのきっかけをなった相手と出会う。
第114話 「かたき討ち」
「ふむ、仕方ないな。しばらく休暇を取らせよう。制圧された領土を最大限に注意深く監視してくれ。あいつらは何を持ち出してくるかわかったもんじゃないからな」
「ハッ」
首都陥落の危機は去った。だが依然ヴェルガノン帝国はミサワ領、ランカ領、そしてペク国を制圧中であり、何とかして彼らを追い出さなくてはならない。
だが戦や行軍続きでは兵士の士気に悪影響が出るので、マコトは10日の休息を与えることにした。
「いかがなさいますかティアラ様?」
「今回の作戦は相手の隙を見て首都を陥落させることが狙いだったが、それが失敗したとなれば正直負け戦だ。
無論このまま手ぶらで帰るわけにはいかない。敵将の1人でも引き込むくらいの事はしないとデューク様に面目が立たない」
首なし騎士のティアラは苦い顔をしながらも指示をする。
今の自分たちは敗残兵のようなものだが、戦果の1つあげずに帰るわけにもいかないと思っていたからだ。彼女は皇帝デュークに並々ならぬ忠誠心を持っていたがため、特に。
「……城壁ごと相手を崩す、と? 出来るのか?」
「はい。せっかく築いたペク国の城壁を壊すことになりますけどよろしいですか? 修繕費は出しますよ」
「マコトよ、お主がそう言うのなら構わん。領土解放のためだ、好きにしてくれ」
「ありがとうございます」
マコトはペク国の老師と話をしていた。彼が言うには城壁ごと相手を崩すつもりらしい。それだけの兵器を彼は持っていたのだ。
ハシバ国本隊が帰還してから10日後。辺りはすっかり冬の空気になった中をハシバ国の軍が領土解放のために動き出す。まずはミサワ領とランカ領の解放のため本隊を2つに分けて攻め込んだ。
「閣下、各員戦闘配備につきました。ご指示を」
「分かった。砲撃を開始してくれ」
ミサワ国を攻め込む隊の総司令であるマコトが砲撃開始の指示を送る。
10門ある大砲が次々と砲弾を撃ち出し城壁に叩きつける。砲弾が1発当たるだけで壁にヒビが入るほどの威力を持ったものを断続的ではあるが飛ばし続ける。
ヒビの入った壁に続けて食らえば城壁の石は砕けはがれ落ち、徐々に浸食されていく。
ドワーフたちが開発した大砲は戦場の光景を大きく塗りかえた。大砲から発射される砲弾は石でできた城壁を砕くほどの威力があり、従来の城や城壁での籠城は不可能となった。
マコトは以前、大砲の技術を持つオレイカルコス連合との戦いでは「大砲の前では城壁は何の意味も無い」事を知っており、極力防衛戦をしないよう采配を振るっていた。
「ティアラ様! このままでは城壁が持ちません!」
「クッ! やむを得ん! 野戦をするぞ!」
(これでは『引きずり出された』格好になるな……籠城すれば城壁ごと崩され、野戦に出れば相手を倒すには数が足りない……クッ! どうすれば!)
ティアラは苦虫を噛み潰したような渋い顔をして采配を振るう。たとえ自分達が大きく不利であるというのを知っていてもなお。
「閣下、敵部隊が城壁から出て来る模様です」
「そうか。野戦の用意をしとけ!」
マコトは明るい顔をしながら指示を出す。
以前イルバーン防衛戦で勝った経験に加え、今回の戦では首都防衛戦で援護してくれた僧兵たちがいることもあって、特別に不利な要素でもなければ勝てるだろうと踏んでいたのだ。
「グゥア!」
「アガガ! アガ……ガ……ガ……」
弓矢の射程外から聖別された銃弾、並びに聖なる魔法が絶え間なく撃ち出され、次々と不死者の兵隊たちが倒されていく。
射程外からの一方的な攻撃を仮に突破できたとしても、接近戦においてはヴェルガノン帝国軍の天敵とでもいえる僧兵が待ち受けるマコトの軍は、彼らにとって真正面から打ち破るのはほぼ不可能な存在だった。
「ティアラ様! 我が隊の残存兵残り僅かです!」
次々と上がってくる報告は自分たちが苦戦、不利な状況であることを伝える物ばかり。明るいニュースは皆無だ。
「クソッ! ここまでか! 総員に退却命令を。再び山脈を超えて本国まで撤退する!」
彼女は苦渋の決断を下した、いや下さざるを得なかった。
「閣下。すんなり勝てましたね」
「ま、勝った勝ったともてはやされるような戦いってのは危ないものさ。勝って当然、勝てて当たり前の勝利こそ本当の勝利ってやつなのさ」
「この調子だとヴェルガノン帝国とやらも案外大したことなさそうに見えてきましたよ。山脈越えは慌てましたけどそれ以外はどうってことないですね。ま、いわゆる1発屋ってやつですかね?」
「……だといいがな。勝ち戦でも調子に乗るなと伝えてくれ」
「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。連戦連勝続きであるハシバ国軍だがいつそれが崩れるかはわからない。用心するに越したことはないとマコトの感が告げていた。
【次回予告】
ランカ領を奪還する部隊に組み込まれていたクルス。そこで彼は全てのきっかけをなった相手と出会う。
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