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激闘 ヴェルガノン帝国
第114話 かたき討ち
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クルスはランカ領を奪還するための部隊に組み込まれていた。
マコト率いるミサワ領の奪還部隊同様、砲撃で城壁を崩し野戦に引きずり出す。だがそこから違っていた。
望遠鏡で敵を見ていたクルスは敵の群れの中に肌が青白い左目に大きな傷を受けて潰れているハゲ頭のオークを見つけた……間違いない。彼にとっての先生やチビ共の仇だ!
純粋な怒りは持続しない。どんなに腹立たしい相手であろうが新たな燃料を投下されない限り、やがて忘れ去られる。そうでないと人間はいともたやすく狂ってしまうからだ。
だが憎しみには限りはないし、いつまでも持続する。同じ相手を死ぬまで憎み続ける事は可能だしそれで人間はいともたやすく狂う。
「待ってたぜ……この日のために俺は強くなった。今こそ復讐してやるぜ!」
「クルス様、いかがなさいました?」
「お前たち! 気合入れて行けよ!」
「ハッ!」
兵士としてそれなりに手柄を立て小隊長の地位にいたクルスは年齢としては年上の配下にそう伝える。
ハシバ国軍とヴェルガノン帝国軍、お互いの距離が十分に近づいたところでクルスは小隊員たちに合図を送る。
「総員構え! 撃てぇ!」
まずは雑魚の掃討から。青白いオークの周りにいる敵兵を片づける。相手がこちら側へと駆けてくるところを横殴りの銃弾の雨を食らわせる。
ゾンビの兵士、スケルトンの弓兵が次々と弾を食らって動かなくなる。
ここまでは順調だった。問題はこの後だ。
雑魚を蹴散らした後、親玉である青白いオークに狙いを定め、銃を撃つ。
だが分厚い鋼の板を曲げただけのような無粋な盾で銃弾が弾かれ、届かない。
それどころかランスを構えて突進してくる騎兵のように駆け、こちら側に肉薄した後常人ではとてもじゃないが片手では扱えやしないほどの大型のナタでハシバ国軍兵士を斬り殺した。
「クッ!」
クルスは仇の鮮やかな動きに動揺するも銃を構えて撃つ。銃弾がオークの脳天を直撃するが、数秒経てば頭から弾が抜け落ち、傷が癒えてしまう。逆にオークの反撃で前に出ていたクルスの配下の1人が犠牲になってしまった。
(まさか、不死化か!?)
以前参加したオレイカルコス連合との戦争でマコトが使ったという「不死化」の施術……不死者なのに「不死化」というのもおかしな話だが傷が癒える早さから見てもそうとしか考えられない。
銃弾では致命傷を与えることが出来ないなら、斬撃で相手の身体を切断するしかない!
クルスはそう思い銃をしまい、最近の戦場ではあまり出番は無いが常に背負っているバトルアックスを手に取った。
「うおおおお!」
雄たけびをあげながら彼はバトルアックスで青白いオークに斬りかかる。だが相手は手慣れだ。盾でたやすく受け止め、反撃に出る。
「ぐえっ!」
腹をナタで割かれクルスは地面へと転がった。青白いオークはちらり、とクルスを見てじきに死ぬだろうと思い視線をハシバ国兵士たちに向けた。
倒れたクルスは敵が自分に背を向けたのを確認して急に立ち上がる。オークのヴェイクにやられたと思ったクルスは……生きていた。
(よし、騙せた。後ろから襲うのは卑怯かもしれんが、先生やチビ共を殺したお前にはふさわしい最期だ! くたばれ!)
彼は渾身の力を込めてバトルアックスでオークの頭をかち割ることが出来た。
「!?」
突然の不意打ち。予想外のそれには反応できなかった敵はぐらりとバランスを崩し、ドサッという音と共に倒れ、動かなくなった。
「ハァ……ハァ……やった……うっ……」
傷が比較的浅いとはいえ腹を斬られて血を出し続けているクルスは失血で意識を失い地面へと倒れた。
◇◇◇
「クルス……クルス……」
何もない暗い空間をクルスは歩いていた。その目の前には先生がいた。
「先生……」
「クルス、どこへ行くの?」
「先生のいるところに行きたい」
そう答えると彼女は少し悲しそうな顔をする。そして諭すように言う。
「クルス、あなたは本当はどこへ行きたいの? よく考えて、本当のことを言いなさい」
クルスはしばらく考えると、妻と母親の顔が浮かんだ。
「ハシバ国に行きたい」
そう言った直後……。
「ハッ!」
気が付くと病院にいた。失血で身体がなまっているのか起こそうとしてもうまくいかない。
(何だったんだ? 夢……なのか?)
しばらく横になっていると大きなお腹をしていたメリルとアッシュがやってくる。
「母さん……アッシュ……」
2人はクルスの無事を確認すると彼女らは……怒っていた。
「クルス! 話は聞いたわよ! 戦場で無茶して! 死んじゃったらどうするつもりなのよ!」
「クルス! 私を未亡人にしないでよ! せっかく会えたのに死に別れるなんて嫌だからね!」
2人は自分の事を大切に思っているからこそ、今回の戦のような無茶をしたことに怒っている。クルスはそう感じていた。
「分かったよ。悪かった。俺が悪かったよ。もう無茶はしないから」
「「本当に反省してる!?」」
「してるよ。悪かったよ、謝るからさぁ」
この後2人からきつい説教を受ける羽目になるのだがクルスはありがたくそれを聞き続けるのだった。
【次回予告】
ペク国まで追い込まれたヴェルガノン帝国。そこへ国の重鎮が姿を現した。
第115話 「皇帝 出陣」
マコト率いるミサワ領の奪還部隊同様、砲撃で城壁を崩し野戦に引きずり出す。だがそこから違っていた。
望遠鏡で敵を見ていたクルスは敵の群れの中に肌が青白い左目に大きな傷を受けて潰れているハゲ頭のオークを見つけた……間違いない。彼にとっての先生やチビ共の仇だ!
純粋な怒りは持続しない。どんなに腹立たしい相手であろうが新たな燃料を投下されない限り、やがて忘れ去られる。そうでないと人間はいともたやすく狂ってしまうからだ。
だが憎しみには限りはないし、いつまでも持続する。同じ相手を死ぬまで憎み続ける事は可能だしそれで人間はいともたやすく狂う。
「待ってたぜ……この日のために俺は強くなった。今こそ復讐してやるぜ!」
「クルス様、いかがなさいました?」
「お前たち! 気合入れて行けよ!」
「ハッ!」
兵士としてそれなりに手柄を立て小隊長の地位にいたクルスは年齢としては年上の配下にそう伝える。
ハシバ国軍とヴェルガノン帝国軍、お互いの距離が十分に近づいたところでクルスは小隊員たちに合図を送る。
「総員構え! 撃てぇ!」
まずは雑魚の掃討から。青白いオークの周りにいる敵兵を片づける。相手がこちら側へと駆けてくるところを横殴りの銃弾の雨を食らわせる。
ゾンビの兵士、スケルトンの弓兵が次々と弾を食らって動かなくなる。
ここまでは順調だった。問題はこの後だ。
雑魚を蹴散らした後、親玉である青白いオークに狙いを定め、銃を撃つ。
だが分厚い鋼の板を曲げただけのような無粋な盾で銃弾が弾かれ、届かない。
それどころかランスを構えて突進してくる騎兵のように駆け、こちら側に肉薄した後常人ではとてもじゃないが片手では扱えやしないほどの大型のナタでハシバ国軍兵士を斬り殺した。
「クッ!」
クルスは仇の鮮やかな動きに動揺するも銃を構えて撃つ。銃弾がオークの脳天を直撃するが、数秒経てば頭から弾が抜け落ち、傷が癒えてしまう。逆にオークの反撃で前に出ていたクルスの配下の1人が犠牲になってしまった。
(まさか、不死化か!?)
以前参加したオレイカルコス連合との戦争でマコトが使ったという「不死化」の施術……不死者なのに「不死化」というのもおかしな話だが傷が癒える早さから見てもそうとしか考えられない。
銃弾では致命傷を与えることが出来ないなら、斬撃で相手の身体を切断するしかない!
クルスはそう思い銃をしまい、最近の戦場ではあまり出番は無いが常に背負っているバトルアックスを手に取った。
「うおおおお!」
雄たけびをあげながら彼はバトルアックスで青白いオークに斬りかかる。だが相手は手慣れだ。盾でたやすく受け止め、反撃に出る。
「ぐえっ!」
腹をナタで割かれクルスは地面へと転がった。青白いオークはちらり、とクルスを見てじきに死ぬだろうと思い視線をハシバ国兵士たちに向けた。
倒れたクルスは敵が自分に背を向けたのを確認して急に立ち上がる。オークのヴェイクにやられたと思ったクルスは……生きていた。
(よし、騙せた。後ろから襲うのは卑怯かもしれんが、先生やチビ共を殺したお前にはふさわしい最期だ! くたばれ!)
彼は渾身の力を込めてバトルアックスでオークの頭をかち割ることが出来た。
「!?」
突然の不意打ち。予想外のそれには反応できなかった敵はぐらりとバランスを崩し、ドサッという音と共に倒れ、動かなくなった。
「ハァ……ハァ……やった……うっ……」
傷が比較的浅いとはいえ腹を斬られて血を出し続けているクルスは失血で意識を失い地面へと倒れた。
◇◇◇
「クルス……クルス……」
何もない暗い空間をクルスは歩いていた。その目の前には先生がいた。
「先生……」
「クルス、どこへ行くの?」
「先生のいるところに行きたい」
そう答えると彼女は少し悲しそうな顔をする。そして諭すように言う。
「クルス、あなたは本当はどこへ行きたいの? よく考えて、本当のことを言いなさい」
クルスはしばらく考えると、妻と母親の顔が浮かんだ。
「ハシバ国に行きたい」
そう言った直後……。
「ハッ!」
気が付くと病院にいた。失血で身体がなまっているのか起こそうとしてもうまくいかない。
(何だったんだ? 夢……なのか?)
しばらく横になっていると大きなお腹をしていたメリルとアッシュがやってくる。
「母さん……アッシュ……」
2人はクルスの無事を確認すると彼女らは……怒っていた。
「クルス! 話は聞いたわよ! 戦場で無茶して! 死んじゃったらどうするつもりなのよ!」
「クルス! 私を未亡人にしないでよ! せっかく会えたのに死に別れるなんて嫌だからね!」
2人は自分の事を大切に思っているからこそ、今回の戦のような無茶をしたことに怒っている。クルスはそう感じていた。
「分かったよ。悪かった。俺が悪かったよ。もう無茶はしないから」
「「本当に反省してる!?」」
「してるよ。悪かったよ、謝るからさぁ」
この後2人からきつい説教を受ける羽目になるのだがクルスはありがたくそれを聞き続けるのだった。
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ペク国まで追い込まれたヴェルガノン帝国。そこへ国の重鎮が姿を現した。
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