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激闘 ヴェルガノン帝国
第123話 『渇き』 降臨
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ヴェルガノン帝国皇帝デュークが発動させた仕掛けで帝都に張り巡らされた魔法陣が起動し、集められた瘴気がその中心の上空の空間に集まる。
それからしばらくして、何もない空間にひびが入る。それはどんどん大きくなり黒い空間から左右1対の巨大な腕が出てきて、ヒビを押し広げる。
やがて、手足や全身が枯れ木のようにやせ細り、胸には人間でいうあばら骨が浮かんだ灰色の巨大な竜が空間から姿を現し、翼を広げて緩やかに着地した。
「さあ行け……『渇き』よ! 全ての人間を滅ぼせ! あの汚らわしい生き物を……この世から根絶させるんだ!」
ヴェルガノン帝国皇帝デュークはそこまで言って、息絶えた。
「集めた瘴気ってのは『渇き』の復活のためだったのか! ヴァジュラヘッドの砲兵に伝えろ! あのドラゴンを狙って、撃って撃って撃ちまくれ! 他の兵は下手に近づかずに守りに徹しろと伝えろ!」
マコトは慌ててヴァジュラに戻り、戦闘態勢に入る。
「!! な、なんて奴だ!」
ダークエルフを率いるエルフェンがその怪物を目の前にしてたじろく。
見た目こそ枯れ木のようにやせ衰えているように見えるがそこから発する莫大な魔力、それに瘴気は今までに見たどんな怪物をも上回っていた。
「各員守りに徹しろ! 防御魔法の展開準備を急げ! ヴァジュラヘッドを守るんだ!」
彼はおびえながらもそれを隠しながら指示を飛ばした。
『渇き』は4000年の眠りから覚めても意識ははっきりとしていたし、力が衰えているわけでもなかった。
口から白い霧の塊のようなブレスを吐く。それに触れた逃げ遅れた兵士たちは全身の水分と養分が干からび、ミイラのようになって倒れ、食人鬼としてよみがえる。
「ひるむな! 撃て! 撃てぇ!」
ヴァジュラと合計4門に増えたヴァジュラヘッドが砲弾を放つ。2発は胴体に、1発は足に命中する。貫通こそしないが身体に深くめり込んだ。
「グルルルル……!」
『渇き』が弾を放った砲をにごった灰色の目で見る。自分を傷つけることが出来る兵器を危険と判断する知能はあるようだ。
今度はヴァジュラに向けてブレスを放つ。それは戦車を直撃し、マコトたちには硬い岩がぶつかってきたような衝撃が走る。
「ぐっ!」
「大丈夫だ! ヴァジュラはシールドで守られている。この程度のブレス何てことねえさ!」
ヴァジュラに乗り込んでいた設計主であるグレムリンのギズモが計器類と格闘しながら叫ぶ。
「俺が前に出て奴の注意を引き付ける! その間にヴァジュラヘッドの砲弾を食らわせてやれ!」
マコトは配下にそう告げてヴァジュラを前進させる。取り巻きの兵もそれに続き、死にたてホヤホヤの食人鬼相手に王を守るため戦いだした。
「各員、ヴァジュラとヴァジュラヘッドを守れ! 無理してあのドラゴンと戦わなくてもいい!」
マコトの配下たちはそう指示し、防御の構えを取る。並みの人間の力程度ではいくら束になろうが到底あのドラゴンにかすり傷一つつけることすらできない。
ヴァジュラやヴァジュラヘッドといった対『渇き』用の兵器でもなければ到底太刀打ち出来ないと思ったからだ。
戦いが始まってしばらく……戦場に砲弾が発射される轟音が響く事、数十回。軽く15発を超える砲弾が『渇き』の身体に命中した。
それでも奴は攻撃の手を緩めない。ヴァジュラは何度も『渇き』からのブレスを浴びているが、耐え抜いている。
「またブレス来るぞ! 各員! ショック態勢!」
「ぐっ!」
「痛ててて……カシラァ! シールド出力低下! あと20%程度しか残っておりませんぜ!」
「そうか、ここまでか。後退する! 後退中でも準備が出来次第砲を撃て! 休んでる暇はないぞ!」
「閣下、はたして砲弾は効いているんですか?」
「んー。素人目からしても効いてると思うぞ。奴は今4つ足で何とか立ってる状態だからな」
砲兵がブレスの間隔が長くならないのを見てマコトに問う。
マコトが見る限りでは登場当初は後ろ脚だけで立っていた『渇き』が、今ではいつの間にか4つ足で何とか立っている状態で、2本足では立てない程度には弱っているらしい。
そんな中、突如『渇き』は背中についた大きな翼を広げ、羽ばたく。やがて巨体は宙に浮かんだ。
「クソッ! 逃げる気か! 最後に1発撃て!」
「ダメです! もう既に射界の外です! 届きません!」
マコトが逃げ出すことに気づいた時には既に射界の外に出てしまい、撃つことが出来なかった。そのまま『渇き』は翼を羽ばたかせ、どこかへと飛び去ってしまった。
しばらくして、マコトがヴァジュラの外へと出る。
「逃げられたか……全軍に退却命令を出せ、ハシバ国に帰還する。偵察隊の一部は『渇き』の行方を追ってくれ」
そろそろ帰らないと収穫の時期に間に合わなくなる。今は国民に従軍させるはこの辺が限界だろうと判断したのだ。
とりあえず現状でも一方的な試合ではなく、相手をあと1歩まで追い詰めるほどにはいい勝負ができることが分かっただけでも幸いか……もちろん出来れば倒したかったというのが本音だが。
【次回予告】
4000年の眠りから覚めた厄災に、生者は抵抗する。名前を変えるのもその策の一つだ。
第124話 「ヴリトラ」
それからしばらくして、何もない空間にひびが入る。それはどんどん大きくなり黒い空間から左右1対の巨大な腕が出てきて、ヒビを押し広げる。
やがて、手足や全身が枯れ木のようにやせ細り、胸には人間でいうあばら骨が浮かんだ灰色の巨大な竜が空間から姿を現し、翼を広げて緩やかに着地した。
「さあ行け……『渇き』よ! 全ての人間を滅ぼせ! あの汚らわしい生き物を……この世から根絶させるんだ!」
ヴェルガノン帝国皇帝デュークはそこまで言って、息絶えた。
「集めた瘴気ってのは『渇き』の復活のためだったのか! ヴァジュラヘッドの砲兵に伝えろ! あのドラゴンを狙って、撃って撃って撃ちまくれ! 他の兵は下手に近づかずに守りに徹しろと伝えろ!」
マコトは慌ててヴァジュラに戻り、戦闘態勢に入る。
「!! な、なんて奴だ!」
ダークエルフを率いるエルフェンがその怪物を目の前にしてたじろく。
見た目こそ枯れ木のようにやせ衰えているように見えるがそこから発する莫大な魔力、それに瘴気は今までに見たどんな怪物をも上回っていた。
「各員守りに徹しろ! 防御魔法の展開準備を急げ! ヴァジュラヘッドを守るんだ!」
彼はおびえながらもそれを隠しながら指示を飛ばした。
『渇き』は4000年の眠りから覚めても意識ははっきりとしていたし、力が衰えているわけでもなかった。
口から白い霧の塊のようなブレスを吐く。それに触れた逃げ遅れた兵士たちは全身の水分と養分が干からび、ミイラのようになって倒れ、食人鬼としてよみがえる。
「ひるむな! 撃て! 撃てぇ!」
ヴァジュラと合計4門に増えたヴァジュラヘッドが砲弾を放つ。2発は胴体に、1発は足に命中する。貫通こそしないが身体に深くめり込んだ。
「グルルルル……!」
『渇き』が弾を放った砲をにごった灰色の目で見る。自分を傷つけることが出来る兵器を危険と判断する知能はあるようだ。
今度はヴァジュラに向けてブレスを放つ。それは戦車を直撃し、マコトたちには硬い岩がぶつかってきたような衝撃が走る。
「ぐっ!」
「大丈夫だ! ヴァジュラはシールドで守られている。この程度のブレス何てことねえさ!」
ヴァジュラに乗り込んでいた設計主であるグレムリンのギズモが計器類と格闘しながら叫ぶ。
「俺が前に出て奴の注意を引き付ける! その間にヴァジュラヘッドの砲弾を食らわせてやれ!」
マコトは配下にそう告げてヴァジュラを前進させる。取り巻きの兵もそれに続き、死にたてホヤホヤの食人鬼相手に王を守るため戦いだした。
「各員、ヴァジュラとヴァジュラヘッドを守れ! 無理してあのドラゴンと戦わなくてもいい!」
マコトの配下たちはそう指示し、防御の構えを取る。並みの人間の力程度ではいくら束になろうが到底あのドラゴンにかすり傷一つつけることすらできない。
ヴァジュラやヴァジュラヘッドといった対『渇き』用の兵器でもなければ到底太刀打ち出来ないと思ったからだ。
戦いが始まってしばらく……戦場に砲弾が発射される轟音が響く事、数十回。軽く15発を超える砲弾が『渇き』の身体に命中した。
それでも奴は攻撃の手を緩めない。ヴァジュラは何度も『渇き』からのブレスを浴びているが、耐え抜いている。
「またブレス来るぞ! 各員! ショック態勢!」
「ぐっ!」
「痛ててて……カシラァ! シールド出力低下! あと20%程度しか残っておりませんぜ!」
「そうか、ここまでか。後退する! 後退中でも準備が出来次第砲を撃て! 休んでる暇はないぞ!」
「閣下、はたして砲弾は効いているんですか?」
「んー。素人目からしても効いてると思うぞ。奴は今4つ足で何とか立ってる状態だからな」
砲兵がブレスの間隔が長くならないのを見てマコトに問う。
マコトが見る限りでは登場当初は後ろ脚だけで立っていた『渇き』が、今ではいつの間にか4つ足で何とか立っている状態で、2本足では立てない程度には弱っているらしい。
そんな中、突如『渇き』は背中についた大きな翼を広げ、羽ばたく。やがて巨体は宙に浮かんだ。
「クソッ! 逃げる気か! 最後に1発撃て!」
「ダメです! もう既に射界の外です! 届きません!」
マコトが逃げ出すことに気づいた時には既に射界の外に出てしまい、撃つことが出来なかった。そのまま『渇き』は翼を羽ばたかせ、どこかへと飛び去ってしまった。
しばらくして、マコトがヴァジュラの外へと出る。
「逃げられたか……全軍に退却命令を出せ、ハシバ国に帰還する。偵察隊の一部は『渇き』の行方を追ってくれ」
そろそろ帰らないと収穫の時期に間に合わなくなる。今は国民に従軍させるはこの辺が限界だろうと判断したのだ。
とりあえず現状でも一方的な試合ではなく、相手をあと1歩まで追い詰めるほどにはいい勝負ができることが分かっただけでも幸いか……もちろん出来れば倒したかったというのが本音だが。
【次回予告】
4000年の眠りから覚めた厄災に、生者は抵抗する。名前を変えるのもその策の一つだ。
第124話 「ヴリトラ」
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