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第7話 呪殺の真相
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1日の予定を終えて夕食をとり後は寝るだけとなった時、カレンは意を決して将来の夫であるデニスに問いかける。
「デニスさん、お話ししたい事があります」
「? 何だい? 急に改まった態度をして」
「アランドル王家の人間を呪い殺したっていうのは本当のことなんですか? 今日の視察であんなことがありましたし、真実を知りたいんです」
カレンの胸の中にあったのは疑惑と少々の恐怖。デニスに石を投げた平民が「彼がアランドル王家一同を呪い殺した」という話を心の底から信じていたという件について詳しく話を聞くことにしたのだ。
「……お前もその話をするわけか、まぁ仕方ないな。俺には「呪殺王」なんていうあだ名があるくらいだからな。わかったよ、信じてくれるかどうかは知らないが真実を話すよ」
デニスは真実を語りだした。
「今から3年くらい昔の話になるな。始まりは御用聞きの商人が持ち込んでしまった疫病に、城に仕えるメイドが感染しちまったのが始まりかな。
発見が遅れたせいもあって、気づいた時には王城に仕えたり住んでいる人間のほぼ全員に感染が広まってしまったんだ。
もちろん義理とはいえ俺の家族も全員例外ではないし、俺とロロムだってそうだった」
彼の話は続く。
「結局事態が収束した時にはアランドル王家は俺とロロム以外、俺にとっての義理の両親に兄や姉がみんな死んじまったのさ。
で、俺は唯一生き残ったアランドル王家の血を引くロロムの後継人になって、実質的な王になったってわけさ。信じてくれたかい?」
「念を押しますけど、それって全部本当の事ですよね? デニスさんがでっち上げた作り話ってわけじゃあないですよね?」
「全部本当の話だよ。俺の事が嫌いな奴は何度言っても一切信じないけどな」
(「はい」か。本当のことを言ってるみたいね)
「……信じます。仮に私が心を読める能力がなかったとしても、私だけはあなたを信じます」
「そう言ってくれると嬉しいな、俺は」
彼はフッと笑った。
「ところで、何でほかの人はデニスさんの言うことを信じないのですか?」
「……」
カレンがそう問うとデニスは無言で上半身の服を脱いだ。筋骨が良く発達した肉体をキャンバスにして、見たことのない文字らしき模様が黒い墨でびっしりと刻まれていた。
「!! これは一体!?」
「……俺は物心ついた時から身体にこの呪術の言葉を刺青で刻まれて、致死量ギリギリの呪力が込められている。
目的は暗殺者が日常的に軽い毒を飲んで抵抗性をつけるのと同様、まだ赤子だった俺に対し呪いの耐性を持たせるためだ」
「!! そんなことが! でも何でそんなことを!?」
「呪術で得られた呪いの力で一般的に「呪われた装備品」と呼ばれ忌み嫌われている物を自在に扱わせたり、この呪印の持つ呪力で相手を圧殺するためさ。
呪術による呪力に耐え、操れるようになった俺は生き延びて養子としてアランドル王家に迎えられ「呪いを力に変える兵器」として「見た目は人間で、言葉をしゃべる兵器」として育てられてきたんだ」
(全部「はい」ですって!?)
「そんな……全部本当のことだなんて……あまりにもひど過ぎる」
形だけは王族とはいえ、本当に形だけ。正直、父親だけとはいえ愛情を注がれて育った自分の方がまだまともだろう。カレンはそう思った。
もっと幼いころの一時期、自分は悲劇のヒロインだと思っていた時があったが、そんな自分を恥じた。
「じゃあ「呪殺王」なんて言われる理由ってまさか!」
「まぁそういう事だな。この呪いっていう物騒なものを持ってるからこれで王家の家族一同簡単に殺せるはずだ、って話さ。流行り病も俺が起こしたってかたくなに信じて疑わない。
俺も流行り病に罹ったことは完全に無視だな」
(これも「はい」か)
デニスの話は続く。
「人ってのは「自分が信じたいもの」を信じるものだし、もっと言えば「信じたくない事」はどうやっても信じないものさ。それが真実かどうかは関係ない。
あいつらは「俺がアランドル王家の人間を呪い殺した」っていう「信じたいもの」を信じるためならありとあらゆる手段を使ってでもそうする。
それこそ自分自身にいくらでも嘘をついて信じようとするものさ。自分で自分の事を騙しきってしまうわけだ。まぁこの辺は人間の限界ってやつだな。俺にもどうしようもないし、相手も悪くない」
「って事は今日デニスさんに石を投げた平民ってまさか……」
「ああそうだ。アランドル王家の血を引く者はロロム以外はやり病で死んだ、っていう真実をどうしても信じることができない連中が、俺が呪いの力で殺したっていう嘘で自分自身を騙しきっているんだろうな。
一応はある程度の証拠や証言がある王家からの知らせを信じずに、物的証拠が何一つないし誰が言いだしたかも分からない噂話を信じているんだろうな。
そっちの方が「信じやすい」し「納得しやすい」からなんだろうな」
(全部「はい」か)
「……ご両親やご兄弟を恨んだことはありましたか?」
「小さな頃はな。でも今はこうやってただの孤児が実質的な国王にまで成り上がって、無事引退できれば公爵様として余生を過ごせるんだぜ? 十分だろ」
「……強いんですね、デニスさんは。私よりも酷い境遇なのにそこまでまっすぐに育つなんて。私には到底できそうにないわ」
「だろうな。俺に親しく接してくれる部下もそう言ってたな。で、話ってのはそれだけか? 他にもあるか?」
「いえ、今回はこれだけです。お話をしてくださってありがとうございます。では失礼します」
そう言ってカレンは自分の寝室へと向かった。
……できればあの人の支えになりたい。私よりも酷い環境で生きてきたんだから! 朝にされた目覚めのキスの感触を思い出し、そう思った。
「デニスさん、お話ししたい事があります」
「? 何だい? 急に改まった態度をして」
「アランドル王家の人間を呪い殺したっていうのは本当のことなんですか? 今日の視察であんなことがありましたし、真実を知りたいんです」
カレンの胸の中にあったのは疑惑と少々の恐怖。デニスに石を投げた平民が「彼がアランドル王家一同を呪い殺した」という話を心の底から信じていたという件について詳しく話を聞くことにしたのだ。
「……お前もその話をするわけか、まぁ仕方ないな。俺には「呪殺王」なんていうあだ名があるくらいだからな。わかったよ、信じてくれるかどうかは知らないが真実を話すよ」
デニスは真実を語りだした。
「今から3年くらい昔の話になるな。始まりは御用聞きの商人が持ち込んでしまった疫病に、城に仕えるメイドが感染しちまったのが始まりかな。
発見が遅れたせいもあって、気づいた時には王城に仕えたり住んでいる人間のほぼ全員に感染が広まってしまったんだ。
もちろん義理とはいえ俺の家族も全員例外ではないし、俺とロロムだってそうだった」
彼の話は続く。
「結局事態が収束した時にはアランドル王家は俺とロロム以外、俺にとっての義理の両親に兄や姉がみんな死んじまったのさ。
で、俺は唯一生き残ったアランドル王家の血を引くロロムの後継人になって、実質的な王になったってわけさ。信じてくれたかい?」
「念を押しますけど、それって全部本当の事ですよね? デニスさんがでっち上げた作り話ってわけじゃあないですよね?」
「全部本当の話だよ。俺の事が嫌いな奴は何度言っても一切信じないけどな」
(「はい」か。本当のことを言ってるみたいね)
「……信じます。仮に私が心を読める能力がなかったとしても、私だけはあなたを信じます」
「そう言ってくれると嬉しいな、俺は」
彼はフッと笑った。
「ところで、何でほかの人はデニスさんの言うことを信じないのですか?」
「……」
カレンがそう問うとデニスは無言で上半身の服を脱いだ。筋骨が良く発達した肉体をキャンバスにして、見たことのない文字らしき模様が黒い墨でびっしりと刻まれていた。
「!! これは一体!?」
「……俺は物心ついた時から身体にこの呪術の言葉を刺青で刻まれて、致死量ギリギリの呪力が込められている。
目的は暗殺者が日常的に軽い毒を飲んで抵抗性をつけるのと同様、まだ赤子だった俺に対し呪いの耐性を持たせるためだ」
「!! そんなことが! でも何でそんなことを!?」
「呪術で得られた呪いの力で一般的に「呪われた装備品」と呼ばれ忌み嫌われている物を自在に扱わせたり、この呪印の持つ呪力で相手を圧殺するためさ。
呪術による呪力に耐え、操れるようになった俺は生き延びて養子としてアランドル王家に迎えられ「呪いを力に変える兵器」として「見た目は人間で、言葉をしゃべる兵器」として育てられてきたんだ」
(全部「はい」ですって!?)
「そんな……全部本当のことだなんて……あまりにもひど過ぎる」
形だけは王族とはいえ、本当に形だけ。正直、父親だけとはいえ愛情を注がれて育った自分の方がまだまともだろう。カレンはそう思った。
もっと幼いころの一時期、自分は悲劇のヒロインだと思っていた時があったが、そんな自分を恥じた。
「じゃあ「呪殺王」なんて言われる理由ってまさか!」
「まぁそういう事だな。この呪いっていう物騒なものを持ってるからこれで王家の家族一同簡単に殺せるはずだ、って話さ。流行り病も俺が起こしたってかたくなに信じて疑わない。
俺も流行り病に罹ったことは完全に無視だな」
(これも「はい」か)
デニスの話は続く。
「人ってのは「自分が信じたいもの」を信じるものだし、もっと言えば「信じたくない事」はどうやっても信じないものさ。それが真実かどうかは関係ない。
あいつらは「俺がアランドル王家の人間を呪い殺した」っていう「信じたいもの」を信じるためならありとあらゆる手段を使ってでもそうする。
それこそ自分自身にいくらでも嘘をついて信じようとするものさ。自分で自分の事を騙しきってしまうわけだ。まぁこの辺は人間の限界ってやつだな。俺にもどうしようもないし、相手も悪くない」
「って事は今日デニスさんに石を投げた平民ってまさか……」
「ああそうだ。アランドル王家の血を引く者はロロム以外はやり病で死んだ、っていう真実をどうしても信じることができない連中が、俺が呪いの力で殺したっていう嘘で自分自身を騙しきっているんだろうな。
一応はある程度の証拠や証言がある王家からの知らせを信じずに、物的証拠が何一つないし誰が言いだしたかも分からない噂話を信じているんだろうな。
そっちの方が「信じやすい」し「納得しやすい」からなんだろうな」
(全部「はい」か)
「……ご両親やご兄弟を恨んだことはありましたか?」
「小さな頃はな。でも今はこうやってただの孤児が実質的な国王にまで成り上がって、無事引退できれば公爵様として余生を過ごせるんだぜ? 十分だろ」
「……強いんですね、デニスさんは。私よりも酷い境遇なのにそこまでまっすぐに育つなんて。私には到底できそうにないわ」
「だろうな。俺に親しく接してくれる部下もそう言ってたな。で、話ってのはそれだけか? 他にもあるか?」
「いえ、今回はこれだけです。お話をしてくださってありがとうございます。では失礼します」
そう言ってカレンは自分の寝室へと向かった。
……できればあの人の支えになりたい。私よりも酷い環境で生きてきたんだから! 朝にされた目覚めのキスの感触を思い出し、そう思った。
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