呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

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第15話 魔女姫とキツネ

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 カレンが王立魔法研究所に通うようになって6日。アランドル王城に「珍客」がやって来た。カレンが中庭に植えられた花を見ていると、雪のように体毛が白いキツネが、なぜか城内に潜り込んでいた。

「あ! シロ! 来てくれたの!?」

「クーン」

 シロ、と呼ばれた白いキツネはかなり人に慣れているのか、カレンを見つけるとすり寄ってくる。

「まさか会えるなんて思ってなかったよ、シロ。私がアランドル王家に嫁いでエドワードの城を後にしてもわかっちゃうなんて。昔からの仲だけどなんでわかるのか本当に不思議よねぇ」

「クーン」

 その白キツネはカレンに相槌あいづちを打つかのように「クーン」と声を上げる。カレンの記憶の中では5歳のころからすでにいた、という仲だ。
 友人らしい友人はいなかった彼女にとっての、唯一心を許せる存在だった。アランドル王家に嫁いでからはたぶん会えないだろうと思っていたが、意外な再会にほほが緩む。



「これはこれはカレン様。そのキツネは一体?」

 そこへ、肩までかかる金髪をした、20代だろうと大まかに推測できる男がやってきた。髪の中から横方向にとがった耳がピンと立っていた。

「あ、あの……どちら様でしょうか? 見たことないお方ですけど」

 カレンが疑問に思った見知らぬ人に対し質問すると、彼はひざまずいて挨拶を始める。

「お初目にかかりますカレン様。私はアレクサンドロ=エリストン。アレク、とお呼びいただければと思います。今後ともよしなに」

 アレクサンドロ、と名乗る男はデニスほどではないが、それでも一般人と比べれば十分筋肉がついたがっしりとした体形をしていた。
 金髪の中から飛び出す様にその耳はピン、と横にとがっていた。エルフが持つ、見た目に関しては人間との最大の違いだ。



「アレクさん。もしかしてエルフなんですか?」

「祖父はそうらしいです。私は「クオーター4分の1エルフ」とでも言うべき者なんですよ。肉体も寿命も扱える魔力も人間とほぼ同等で、エルフの要素はたまに耳が先祖返りする程度ですよ」

「へー」

 カレンの故郷であるエドワード王国にはエルフは住んでいなかったので新鮮に見えた。

「ところでカレン様、その白いキツネは?」

「この子? 私はこの子にシロって名付けてるけど月に1回くらいは私のところにやってくるの。で、私の話を聞いたらどこかへ行っちゃうのよ。私の大事な友達、なのかな」

「そうですかそうですか。まぁ我らがアランドル王家もエドワード王家と同様、白キツネは神の使者ですから丁重に扱うので、間違っても傷を負わせるマネはさせませんのでご安心ください」

「へー。アランドル王家にもキツネ信仰があるのね。知らなかったな」



 カレンがアレクと話をしていると、シロは「クーン」と一鳴きした後、外へと向かって廊下をかけだした。

「おいお前、ちょっと待ってくれないか?」

 アレクはシロを追いかけようと曲がり角を曲がると、なぜかこつぜんと姿を消した。

(? どこ行ったんだ? まぁ、いいか)



 その後アレクは各部署からの報告を聞き、調整に入る。仕事が終わったのは夕方の時刻だ。余裕ができたのか彼は城の正門を警備する兵士に不満げに言う。

「お前たち、しっかり見張れよ。昼頃だが城内にキツネが入っていたぞ」

「キツネ? いや、そんなの見ませんでしたよ?」

「何? そんなわけないだろ、城への入り口はここしかないはずだ。それにそのキツネは体毛が雪のように白い。入ろうとしたらすぐにわかるはずだぞ?」

「? いや、それでもそんなキツネ、ましてや白いキツネなんて見ませんでしたよ」

「う~む……」



 確か城へ入るにはこの正門をくぐるしかないはずだ。となると、窓から入ったのか? それに、そもそも城まで来るには城下町を通り抜けなければならない。
 いくら神の使いと保護されている存在とはいえ、誰にも気づかれずにここまで来れるだろうか……?
 それにあの時後を追いかけていた時も、曲がり角を曲がったらいつの間にか消えていたのも謎だ。

「とにかく不審ふしんな人や物を見つけたら逐一報告してくれ。それがデニス様やカレン様を守ることにつながるんだ。抜かりなくしっかりとやってくれよ」

「「ハハッ!」」

 アレクは兵士にそう指示して帰ることにした。最初は不思議に思っていたのだが仕事に追われる日々を送っていると、やがて忘れてしまった。
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