呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

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第18話 家族とカゾク

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「んー、よく寝た」

 カレンはアランドル王家に身を寄せるようになって1ヶ月以上経ち、ここでの暮らしにもだいぶ慣れてきた。

(そう言えばロロム君はどうしてるんだろう……ちょっと寄ろうかな)

「ねぇ、ロロム君の寝室ってどこにあるか教えてくれないかしら?」

 着替えが終わると手伝ってくれていたメイドに案内され、彼の部屋に行くことにした。



(失礼しまーす)

 そろりと部屋の中に入るカレン。部屋の主であるロロムは彼女の予想通りまだ寝ていた。大人用のものを与えられているのかその小柄な身体には不釣り合いなほど、ベッドは大きい。

 ロロムの寝室を見渡すとまず目立つのが飾られてあった家族一同が集まったと思われる肖像画だ。
 若草色の髪とヒゲを生やした男と、男と同じ色の髪と瞳をした赤子を抱いている黒髪の美しい女。
 それに彼らによく似た青年と若い娘が描かれていた。

(これは……家族の肖像画、かしら?)

「母様ー」

「!? 母様!?」

「母様」という声を聴き振り返ると、ロロムはカレンのことを「母様」と呼びつつ寝間着姿のままいきなり抱きついてきた。



「母様ー、会いたかったよ母様ー」

「ちょ、ちょっと! ロロム君、ロロム君! しっかりして!」

「ふえ? 母……!? あ、姉様!」

 カレンがロロムをゆすることでようやく意識がしっかりしてきたのか、ロロムはカレンから距離を取る。



「おはよう、ロロム。寝ぼけてんのか? お前らしくないな、しっかりしろ」

 さらにはデニスがニヤニヤしながら2人の間に割って入る。もちろん朝起きたところもバッチリ見ていた。

「兄様、まさか……」

「おうよ、見てたぜ。大丈夫、他人には言わねえから。ナイショの話にしてやるからな」

「うう……」

 ロロムはカレンを母親と勘違いした恥ずかしいことを見られたのか顔を真っ赤にしてうつむいていた。



「……デニスさんも見てたんですね」

「ハハッ、まぁな。おはよう、2人とも」

「おはようございます。ところでこの絵はいったい?」

 カレンがロロムの寝室に飾られていた家族の肖像画が気になり、デニスに問う。



「それはアランドル王家の家族の肖像画だよ。ロロムが産まれた記念に宮廷画家に描いてもらったそうだ」

「へー、そうなんだ。でもデニスさんは?」

 養子縁組ではあるが一応はアランドル王家にいる。それなら描かれても良いのではと思うのだが……。

「前にも少し言ったかもしれないけど、俺は「人間の形をして言葉をしゃべる兵器」として育てられてきたんだ。だから肖像画に描かれることは許されなかったんだ」

「!! あ、そうでした。すいません、変な事言っちゃって」

 思い出した。確か「呪いの力を使って敵を倒す兵器」として育てられていたんだっけ。彼女は自分の不注意を恥じた。



「俺も一応は王家の人間になるんだろうけど、それらしいことは無かったなー。食事の際にも皿も食器を使わせてくれなくて、パンも床に直置きで出されてたよ。
 器に入ったスープも冷めたものを出されて犬みたいに四つん這いになって食べてた」

「……!! そんな酷いことをされてたんですか!?」

「まぁな。今となっては昔の話だがな」

(「はい」ですって!?)

 カレンは読心術でデニスの心を読んだが、あまりにもつらい真実だった。



「カゾクの人間は俺に逆らおうと考えさせないような「調教」を行ってたからな。それだけ呪いの力を怖がっていたんだろな」

「……デニスさん、家族を憎んではいなかったんですか?」

「昔は憎んでたけど、今では憎しみとほかの感情が半々で入り混じってる感じかな? 俺にとっては酷いカゾクだったけど、ロロムにとっては大切な家族だからな」

「そ、そう……」



「あの……デニス様、カレン様。ロロム様にお着替えをさせたいのですがよろしいでしょうか?」

 水を差す形になってしまったがメイドがそう言う。

「!! おおっと! そうだったな、いや悪かったよ。カレン、部屋を出ようぜ」

「え、ええ」

 2人は部屋を出た。



「ロロム君には家族との記憶はあるのかしら?」

「はやり病が出たときはロロムはまだ2歳かそこらだったからなー。本人に聞いたが物心がついた時には既に家族カゾクは全員死んだ後で記憶はないそうだ」

「そう……」

「まぁ俺やお前がきちんと家族をしてれば大丈夫だろうよ。気にすることはねえって」

「そ、そうよね……そうよね。私たちで家族を作ればいいんだよね。うん、大丈夫」



「無ければ作ればいい」

 昔からよく言われることだが、家族もやろうと思えばできるだろう。
 ロロムのためにも、デニスのためにも、そして自分のためにも、良い家族を作ろう。カレンはそう思った。
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