呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

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第24話 シャンパン

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 デニスとカレンは城下町の郊外に広がる畑の視察に来ていた。広がるのは一面のブドウ畑。
 それはデニスが実質的な王になって3年。彼が玉座に就くとほぼ同時に始まった国家プロジェクトの一環だ。
 収量は低いものの1年前から実がなり始めて、本格的とまではいかないがようやく収穫が始まるようになった。



「デニスさん、聞いた話ではブドウの栽培を奨励しているそうですけどワインでも作るつもりなんですか?」

「いや違う。というか「ワインであってワインでない」ってとこかな。なぁに、特産品が無ければ作ればいいだけの話さ」

「そ、そうですか。でもそんな簡単に特産品なんて作れるものでしょうか? それに何なんですか? 「ワインであってワインでない」だなんて……」

 まるで「謎かけ」みたいなことを言うデニスにカレンは疑問に思う……「ワインであってワインでない」とはどういう事なのだろう?

「まぁ意地悪するわけにもいかないから答えを言うよ。ズバリ「シャンパン」を作ろうとしている」

「シャンパン……!! まさか、あの幻のお酒を復活させるつもりですか!?」

 デニスの口から出てきたのは、この一帯では幻の名酒とされる酒だ。もちろんカレンは飲んだことは無いが、家族のうわさ話では聞いていた。



 シャンパン。
 地球においては「ドンペリ」の由来となった修道士のドン・ペリニヨンが作り上げたと伝えられる発泡スパークリングワイン。
 20年ほど昔はこの辺りでも貴族向けに細々と作られてはいたが長く続く戦乱の最中で製造方法は失われ、
 今でもシャンパンを作っている酒蔵からは遠く離れた土地もあってかこの辺りでは幻の酒と呼ばれ「法外な」高値で取引されている。



「シャンパンの酒蔵で働いている職人を呼び寄せて製法を広めてもらって、その第1弾がもうすぐできるとのことなんだ」

「それにしても……なぜシャンパンなんですか?」

「この辺りではシャンパンは希少だというのもあるし、時間をかけずに作れるってのもある。ワインは熟成に5年10年かかるのが当たり前だが、シャンパンは1年半程度で作れるからな
 今度の俺たちの式には出来立てのシャンパンを出す予定だから楽しみに待っててくれ」

 どうやら国内外にアランドル王家の力をアピールするためにシャンパンが使われるらしい。カレンも一応は国の政治に関してはある程度は習っていたのでそう使うのも自然に感じていた。
 アランドル王家は「質素倹約」がモットーなのでそうでもないが、貴族というのはヒマさえあれば宴を開いて自分の権力を配下の騎士たちに誇示しているのだとか。



「それにしても、よくシャンパン作りに欠かせない人材を集める事が出来ましたね? ここから遠く離れたシャンパンの酒蔵の職人を集めるなんて並大抵の事ではできないはずなのに」

「半分近くはオババ様の知り合いさ。オババ様がいなけりゃこんな事業成立しなかった。そういう意味ではオババ様の悲願でもあるな」

 以前、デニスから聞いていたオババ様なる人物は王家に仕える身ではあったものの、時には国王に意見して従わせるほどの権力を持っていたとは聞いているがこれほどとは。
 年を取ると偉くなるんだな、できれば「魔女姫」らしくこんな風に年を取りたいものだ、とカレンは思っていた。



「まず国が公共事業を打ち出して雇用を作ってノウハウを蓄積するんだ。そしてある程度収益化のめどが立ったら民間に委託してさらなる発展を促すのさ。
 こういう所で国がしっかりしないと遅かれ早かれ衰退の道を歩むことになる。シャンパンの件もそれを防ぐためのものだ。まぁこれもオババ様の入れ知恵だけどな」

「へぇ、そうなんですか。オババ様って偉大な人だったんですね」

「まぁな。オババ様はとても顔が広くて知恵もあるというかなり「出来た」人だったよ。正直、まだ生きていて欲しかった気持ちはあるけどな」

 デニスはここでも彼女の死を残念がるが、人の生死は神の領域だというのも理解していた。



「式の時には無事にできるといいわね」

「任せとけ。間に合うよう余裕を持ったスケジュールだからよほどの事が無ければ間に合う予定だ……よし。視察はこの辺にして切り上げるか」

 その日の予定を終えて、デニスたちは帰路に就いた。
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