呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

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第48話 呪殺王から王家を取り戻す

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 カレンとアレクがアランドル王城まで帰ってきて1週間が経ち、ついにデニス率いるアランドル軍がエドワード王家の内乱を鎮めるために出兵した。
 その最中……アシュトン伯爵の館の前に「デニスを援護するために」400の兵が集められた。



「ハァ~ア……しっかしまぁ、やってらんねえよなぁ」

「出兵の理由に関する話か?」

「ああそうだ。何でもあの呪殺王じゅさつおうへの援軍だとよ。呪殺王あんなヤツびを売るなんてアシュトン様らしくねえよ。
 年も年だしついにヤキでも回ったのか、それともボケちまったかのどっちなんだろうねぇ?」

 アシュトン伯爵領の人間は主君に従うように反デニス派がほとんどだ。彼らの言う通り、デニスを援護するとなるとやる気が出ないのもうなづける。
 それでも伯爵殿下のご勅命ちょくめい、とあらば逆らうわけにはいかない。仕方なく集まったのだ。正直言って完全にだらけ切っていたアシュトン伯爵軍だったが……。



「え? 出陣式ですか?」

「ああそうだ。この戦の真意を述べたいんだ。兵を集めてくれないか?」

 伯爵は配下の兵に「出陣式」を行いたいと言い出し、兵を集めた。

「アシュトン伯爵様より皆へのメッセージがあるそうだ。注力して聞くように!」

 上級兵が皆にそう告げる。素人目から見ても「だれている」自軍の兵に対し伯爵は口を開いた。なぜあの呪殺王なんかの援軍のためにわざわざ出兵したのか? その真相を伝えるためだ。

「諸君。諸君らは今回の出兵に際し『デニス隊を援護するために来た』と聞いているだろう。だが、それは表向きの話に過ぎない。実際は違う……本当は、あの「呪殺王」を『殺す』ためだ」

「……!!」

 呪殺王を『殺す』という極めて強い言葉に、だらけきっていったアシュトン率いる400の兵は全員、ピン。と張り詰めるような緊張感をもって主君の話を聞きだした。



「時は来た。まさに今! 天上におわす神は絶好の舞台を用意してくれた! 我々はエドワード国軍とアランドル国軍が衝突した時にアランドル国軍を襲撃し、デニスの首を取る!
 そして私が正式にロロム様の後見人となれば、王家は正しい形に復興できる!
 今こそ! リリック陛下と王妃、そして王子と姫を呪い殺し王の座に居座る呪殺王にトドメをさせる時だ!」

 アシュトン伯爵の熱量がこもった、というか「憎悪が込められた」スピーチを兵士たちは黙って聞く。彼らの瞳には次第に禍々まがまがしくはあるが、闘志の炎が燃え始めた。



「そして私はお前たちに大いなるチャンスを与えよう! 騎士である諸君! 騎士ナイトとは言うが実際には「雇われの身」で名ばかりの称号しかないのは寂しかろう!
 呪殺王の首を取れ! 奴の首を取った者には娘と土地をくれてやる! 名実ともに真の貴族の仲間入りができるのを約束しよう!」

「ーーーーーオオオオオオオオ!」

 アシュトン率いる騎士たちが歓声を上げる。



「呪殺王に死を!」

「「「呪殺王に死を!」」」

「アランドル王家に栄光を!」

「「「アランドル王家に栄光を!」」」

 反デニス派で固められた兵士たちは、ついにあいつにトドメをさせる、しかも自分たちの手で! というのを聞いてやる気が全身にみなぎっているのを感じた。
 ほんの数分前のだらけ切った態度は、完全に吹っ飛んでいた。今ここにいるのは宿敵相手に闘志がみなぎる「戦士」達だった。



「……そろそろ来るはずだが」

 そんな出陣式が行われているとは知らないデニス率いるアランドル国軍、総勢1500はアシュトン伯爵軍との合流を待っていた。
 予定ではそろそろ来るはずなのだが……。

「陛下、アシュトン伯爵軍からの連絡です。予定通りこれから合流するとの事です」

「そうか、分かった」

 その連絡から間を置かずにアシュトン伯爵軍が合流する。彼らは随分とやる気に満ちた顔をしていた。



「……陛下、何かアシュトン伯爵の軍は異様なくらいやる気に満ちているんですが、何かあったんでしょうか?」

「良い事なんじゃないのか? だらけてるよりはマシだろうよ」

 デニスは彼らがこれから行われる戦いで、戦場でのどさくさに紛れて自分を亡き者にしようという魂胆こんたんをすでに見抜いていた。
 自分たちの手で殺しておいて「敬愛すべきデニス陛下は戦場で勇敢に戦って散った」だなどと平然とした口調でぬかすのだろう……全部知ってるよ、お見通しだ。
 彼は自分の妻が命がけでつかんだ事を無駄にするつもりは一切なかった。



 アシュトン伯爵の軍と合流し、予定通りロトエロ率いるエドワード王国軍と戦う戦場までやってきた。
 デニスたちが生きていた時代はまだ「騎士道精神」が根強く残っており、戦争も決闘と同じように戦う日時と場所を指定するのが当たり前だった。日時は明日。戦場は開けた平野だ。

「エドワード王国軍が推定1200程に対し我々は1900程。数では有利だな」

「ああ、数ではな」

 エドワード王国軍との衝突を明日に控えたアランドル王国陣地で明日の日程についての会議が行われていた。
 アシュトン伯爵が裏切る作戦がデニス側に「筒抜け」なのが彼にバレないよう、伯爵が戦場で裏切ることは一部の人間を除いて隠していた。それを知らない部隊長が「数では有利」と一安心している。



(あとはいつどのタイミングで仕掛けるか……だな)

 アシュトン伯爵の兵たちはいわゆる「魚鱗ぎょりんの陣」上空から見れば三角形の形をした陣の左翼さよくに配置された。デニスとの距離は比較的近い、寝首をこうと思えばいつでもできる位置だ。

(さて……どう出る?)

 やるべきことはやった、後は相手次第。おそらくは尻尾を出してくれるだろうから、その時は絶対につかんで見せる。カレンを危険な目に遭わせておいて罪滅ぼしをしないなんて許さないからな。
 デニスは心の奥底に怒りを感じながらも会議を進めていた。
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