3 / 26
第3話 クエストクリアー
しおりを挟む
エクムントと十分話をして休んだ後、その日の夕方にフレデリカは王族お抱えの医者の付き添いの元、下調べとして城内にある錬金術を行う部屋へと案内された。
「我が国における最新の設備を備えております。ただ、フレデリカ様のご期待に添えられるかどうかは分かりませんが」
「うーん……大丈夫よ。これだけ揃ってれば目的の薬を作ることはできるわ。後は材料が揃いさえすればいつでもOKよ」
「かしこまりました。明日の昼頃までには材料は全て揃う手はずなので、それまで待っていただければと思います。それと……ぶしつけながらサインをいただけますか?」
「私で良ければサインの1つお安い御用ですよ」
そう言って彼が持参した色紙にペンでサインを入れる。
「おおお! まさかフレデリカ様のサインがもらえるとは思いもしませんでしたよ! 家宝として末代まで継がせますぞ! いやぁ長生きはしてみるものですな!」
ルンルンと弾むような上機嫌で彼は去っていった。
「う~……疲れた」
設備の確認が出来たので一安心したところまた疲れが襲ってきた。
「虚弱体質なのは相変わらずですね」
エクムントが心配して声をかけてきた。
「うん。エリクサーでもこの体質は治らないのよね。薬では何とも出来そうにないのがもどかしい話だわ」
フレデリカは幼いころから虚弱体質で体が弱く、それを克服する薬を作るために薬剤師の道を選んだ。今では世界最高の技術を身につけたものの、肝心の体質は変わらなかった。
「こうなったら新薬を作るしかないのかなー。エリクサーでも治せなかったのはちょっとショックだったよねー」
「私の目からしたら前よりは良くなっていますよ。昔は1日に3~4回倒れていたのに今では2回で済んでますし。明日は調合があるから早めに休んだ方が良いですよ」
「うん分かった。おやすみー」
そう言ってエクムントは彼女の部屋とは別に割り当てられた部屋で休むことにした。
翌日
「材料は全て揃いました。あとはお願いいたしますぞ」
「分かったわ。後は任せてちょうだい」
そう言ってフレデリカは作業に入る。素材をすりつぶして粉にし水に浸したり、魔力や科学的反応を駆使して成分を抽出する。それらを混ぜ合わせ、目的の薬を作っていく。
作業が始まって30分ほどが経ち、彼女が部屋から出てきた。その手には薬があった。
「出来たわ。とりあえず30日分作ったわ。1日3回、食後に服用させてね」
早速薬を試してみる。飲ませて間もない頃だった。ゼエッ、ゼエッと荒い息をしながらうなされていた先王の呼吸が楽になったように感じられる。
「父上、お体の具合はどうでしょうか?」
「あ、ああ。少しは楽になったよ。それに少しだけ元気が出てきたように感じるぞ」
「そうですか! それは良かった!」
薬が効いたのか少しだけ元気になった。
フレデリカの薬を投与するようになって3日が経った。先代国王の体調は日に日に良くなり、自力で歩けるようになるまで回復した。
改めて診察したフレデリカが診察結果を現国王に伝える。
「順調に回復しているみたい。後は薬を飲みきるまで経てば完治できると思うわ」
「そうか……エクムント、そしてフレデリカ、今回の働き、まことに大義であった。父の命を救ってくれて本当にありがとう!」
「私は医者や薬剤師としての義務を果たしたまでです。特別なことはしていません」
「私もです。ただ人を紹介したにすぎません」
「クエストはクリアーしたということにしておくよ。後でギルドから報酬を受け取ってくれ。それと、これだ」
そう言って国王は2人に小切手を渡す。なかなかいい額が書き込まれていた。
「あの……これは?」
「ポケットマネーから出したボーナスだ。受け取れ」
国王は2人の活躍を本当に快く思っているらしい。彼らは黙ってそれを受け取った。
「ふう。予想外の収入もあったけど上手くいったね」
「ああ。協力してくれてありがとう」
ギルドから支払われた報奨金を山分けして2人は帰路に就こうと思っていた。
「じゃあ私、もう帰るね。あなたと話ができてうれしかったわ。そのお金、孤児院の寄付で消えるんでしょ? もう30後半だというのに頑張ってるわね」
「私の人生をかけた事業ですからな」
「ふふっ。変わってないわねあなたは。じゃあね」
そう言うと彼女の身体が半透明になり、消えていった。
召喚されたものは自らの意思、あるいは召喚をしたエクムントの意思で元居た場所に戻せるようになっている。それで彼女は自らの意思で自宅へと戻ったのだ。
「ふう……」
エクムントは1人になって息をついた。仕事が終わった達成感は30後半になっても心地いい。
仕事を終えたからまだ夜には早いが飲もう。彼はそう思って城下町の酒場へと足を運んだ。
【次回予告】
クエストをクリアーすることで稼いだ金の大半はこれに消えるという。彼が生涯をかけて挑む慈善事業だ。
第4話 「孤児院経営」
「我が国における最新の設備を備えております。ただ、フレデリカ様のご期待に添えられるかどうかは分かりませんが」
「うーん……大丈夫よ。これだけ揃ってれば目的の薬を作ることはできるわ。後は材料が揃いさえすればいつでもOKよ」
「かしこまりました。明日の昼頃までには材料は全て揃う手はずなので、それまで待っていただければと思います。それと……ぶしつけながらサインをいただけますか?」
「私で良ければサインの1つお安い御用ですよ」
そう言って彼が持参した色紙にペンでサインを入れる。
「おおお! まさかフレデリカ様のサインがもらえるとは思いもしませんでしたよ! 家宝として末代まで継がせますぞ! いやぁ長生きはしてみるものですな!」
ルンルンと弾むような上機嫌で彼は去っていった。
「う~……疲れた」
設備の確認が出来たので一安心したところまた疲れが襲ってきた。
「虚弱体質なのは相変わらずですね」
エクムントが心配して声をかけてきた。
「うん。エリクサーでもこの体質は治らないのよね。薬では何とも出来そうにないのがもどかしい話だわ」
フレデリカは幼いころから虚弱体質で体が弱く、それを克服する薬を作るために薬剤師の道を選んだ。今では世界最高の技術を身につけたものの、肝心の体質は変わらなかった。
「こうなったら新薬を作るしかないのかなー。エリクサーでも治せなかったのはちょっとショックだったよねー」
「私の目からしたら前よりは良くなっていますよ。昔は1日に3~4回倒れていたのに今では2回で済んでますし。明日は調合があるから早めに休んだ方が良いですよ」
「うん分かった。おやすみー」
そう言ってエクムントは彼女の部屋とは別に割り当てられた部屋で休むことにした。
翌日
「材料は全て揃いました。あとはお願いいたしますぞ」
「分かったわ。後は任せてちょうだい」
そう言ってフレデリカは作業に入る。素材をすりつぶして粉にし水に浸したり、魔力や科学的反応を駆使して成分を抽出する。それらを混ぜ合わせ、目的の薬を作っていく。
作業が始まって30分ほどが経ち、彼女が部屋から出てきた。その手には薬があった。
「出来たわ。とりあえず30日分作ったわ。1日3回、食後に服用させてね」
早速薬を試してみる。飲ませて間もない頃だった。ゼエッ、ゼエッと荒い息をしながらうなされていた先王の呼吸が楽になったように感じられる。
「父上、お体の具合はどうでしょうか?」
「あ、ああ。少しは楽になったよ。それに少しだけ元気が出てきたように感じるぞ」
「そうですか! それは良かった!」
薬が効いたのか少しだけ元気になった。
フレデリカの薬を投与するようになって3日が経った。先代国王の体調は日に日に良くなり、自力で歩けるようになるまで回復した。
改めて診察したフレデリカが診察結果を現国王に伝える。
「順調に回復しているみたい。後は薬を飲みきるまで経てば完治できると思うわ」
「そうか……エクムント、そしてフレデリカ、今回の働き、まことに大義であった。父の命を救ってくれて本当にありがとう!」
「私は医者や薬剤師としての義務を果たしたまでです。特別なことはしていません」
「私もです。ただ人を紹介したにすぎません」
「クエストはクリアーしたということにしておくよ。後でギルドから報酬を受け取ってくれ。それと、これだ」
そう言って国王は2人に小切手を渡す。なかなかいい額が書き込まれていた。
「あの……これは?」
「ポケットマネーから出したボーナスだ。受け取れ」
国王は2人の活躍を本当に快く思っているらしい。彼らは黙ってそれを受け取った。
「ふう。予想外の収入もあったけど上手くいったね」
「ああ。協力してくれてありがとう」
ギルドから支払われた報奨金を山分けして2人は帰路に就こうと思っていた。
「じゃあ私、もう帰るね。あなたと話ができてうれしかったわ。そのお金、孤児院の寄付で消えるんでしょ? もう30後半だというのに頑張ってるわね」
「私の人生をかけた事業ですからな」
「ふふっ。変わってないわねあなたは。じゃあね」
そう言うと彼女の身体が半透明になり、消えていった。
召喚されたものは自らの意思、あるいは召喚をしたエクムントの意思で元居た場所に戻せるようになっている。それで彼女は自らの意思で自宅へと戻ったのだ。
「ふう……」
エクムントは1人になって息をついた。仕事が終わった達成感は30後半になっても心地いい。
仕事を終えたからまだ夜には早いが飲もう。彼はそう思って城下町の酒場へと足を運んだ。
【次回予告】
クエストをクリアーすることで稼いだ金の大半はこれに消えるという。彼が生涯をかけて挑む慈善事業だ。
第4話 「孤児院経営」
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた
黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆
毎日朝7時更新!
「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」
過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。
絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!?
伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!?
追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる