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第8話 緊急クエスト 息子の捜索 前編
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「ふーむ。緊急クエストか」
エクムントは「行方不明になった息子を探してほしい」という領主からの緊急クエストを見つけた。
緊急クエストというのは依頼主が急いで解決したいという事情があり、割増の報酬を受けられることが多い。その分難易度も高いしライバルも多いがやる価値はあるものだ。
彼は通信機能を持つ魔導器具を取り出し、ある人物と話をする。
「やぁアルフォンス、久しぶりだな。今は話をしても大丈夫か?」
「よぉエクムント、相変わらず冒険者をやってるそうだが声を聴く限りは元気そうだな。仕事の話か?」
「話が早くて助かるよ。「探し屋」のお前にぴったりの仕事だ。受けるか?」
「もちろんさ。今は仕事を探している状態だから大助かりだよ。今すぐ召喚してもいいぞ」
「分かった。10分後に会おう」
10分後、エクムントは町の郊外に出て本を取り出し、魔法陣を起動する。
「召喚……アルフォンス!」
現れたのは、中年の男。同世代によくある、主にエールによる中年太りとは無縁で、スレンダーな身体をしていた。
「ようエクムント、久しぶりだな。ついうっかり顔を忘れそうになったぜ」
「やぁアルフォンス、その様子だと順調そうだな」
「いや、そうでもないぜ。仕事が途切れがちで女房には迷惑をかけっぱなしだよ。お前による仕事の紹介は本当に助かってるよ。で、今回のクエストはどういう内容だ?」
「行方不明の息子を探してほしいという領主からの依頼だ。悪いが緊急クエストで時間との勝負になっている。急ごうか」
アルフォンスは「探し屋」と呼ばれるタイプの「元」冒険者である。
彼は昔、トレジャーハンターとして各地の遺跡を潜っていたが、加齢による身体の衰えとケガの後遺症で数年前に引退したのだ。
だがお宝探しで培われた直感と推理力は今もなお健在で、それを活かせる職種である「探し屋」
……行方をくらませた人の捜索や無くし物の捜索をする職業、として活躍していたのだ。
ギルドを通して連絡し、指定の時刻に領主の館へと向かう。応接間に通されると町を仕切る女領主がいかにも座り心地のよさそうなソファーに座っていた。
彼女と対面する形で2人も座る。
「エクムント=バルミング、ただいま参りました。彼は連れのアルフォンスという者です」
「そう。依頼の内容について話をしますね。3日前に息子がこんな手紙を残して行方不明になったんです」
彼女はそう言って手紙を見せてくれた。
「拝啓 母上様へ
産まれてから17年経ちますが心の底から愛するのはセシリーだけです。どの領主の娘でも彼女にはかないません。
どれだけ魅力的な人と見合いをしても、そのたびにセシリーと比べて「彼女ほどではないな」と毎回必ず思ってしまいます。
私にとってはセシリーしか結婚を考えられる女性はいません。どうしても認められないというのならこの家を出ていきます。今までお世話になりました。さようなら」
「セシリー、とは一体誰ですか?」
「この屋敷に仕えるメイドの1人です。息子は彼女に身分違いの恋をして持ちかけられていた縁談を全て断っているんです。まさか彼女と一緒に家出までやるとは思ってはいなかったけど……」
彼女は話を続ける。
「私としても打てる手はすべて打ちました。町の領民全員に聞き込み調査をしましたが、誰1人息子とセシリーの足取りを知るものはいませんでした。まるで煙のように消えてしまったんです。
お願いします、最悪の事態になる前に息子とセシリーを見つけ出してほしいんです! 引き受けてくれますか?」
彼女からの悲痛な訴え。それを断ることなど、出来るわけがない。
「分かりました。息子さんを必ず探し出して見せます」
2人は依頼を引き受けることにした。
捜査を始めて2日目……。
「エクムント、そっちはどうだ?」
「収穫無しですな。衛兵たちも領主の息子さんに買収されている様子もなさそうです」
事前に領主による聞き込み調査は行われていた事もあって、改めて聞き込みをするもやはり成果は無し。早くも行き詰まりが見えてきた。
「うーむ……おかしな話だよなぁ。だって領主の息子だぜ? さすがに子供は別として、大人なら誰もが顔を知っている。街中をうろついていたらどんな時間帯でも誰かしら気づくはずだぞ?」
「ですよねぇ。それに屋敷への出入口は検問所がある正門のみだし、町を出るにも積み荷をチェックされる。2重のチェック体制をすり抜けられるとは考えにくいですよね」
「でも実際問題としてここの領主の息子さんは忽然と姿を消した。それは事実だ……でかい謎だな」
男2人が顔を突き合わせるものの成果なし。順調な船出とはいかなそうだ。
今日も手ぶらで屋敷に戻る。捜査を引き受けてから2人には客間が与えられ、食事も用意してくれることになった。だが……。
「えっと……、客間はどこでしたっけ?」
「ここから2つ先の曲がり角を曲がってすぐだろ? しっかりしろよ」
「いやぁさすがはアルフォンス、しっかりしてますな。いやしかしこれだけ広い家だと迷いますな。もしかしたら家主が足を踏み入れたことがない部屋もあるかもしれませんね」
「ハハハ。そう言うかお前……? 待てよ……それだ! それだよエクムント! お前天才だわ!」
「?? へ? て、天才? 私が?」
アルフォンスは急にエクムントを天才呼ばわりする。何か閃いたようだ。
【次回予告】
エクムントのセリフを聞いて何かを閃いたアルフォンス。事件解決に向けて話は一気に動き出す。
第9話 「緊急クエスト 息子の捜索 後編」
エクムントは「行方不明になった息子を探してほしい」という領主からの緊急クエストを見つけた。
緊急クエストというのは依頼主が急いで解決したいという事情があり、割増の報酬を受けられることが多い。その分難易度も高いしライバルも多いがやる価値はあるものだ。
彼は通信機能を持つ魔導器具を取り出し、ある人物と話をする。
「やぁアルフォンス、久しぶりだな。今は話をしても大丈夫か?」
「よぉエクムント、相変わらず冒険者をやってるそうだが声を聴く限りは元気そうだな。仕事の話か?」
「話が早くて助かるよ。「探し屋」のお前にぴったりの仕事だ。受けるか?」
「もちろんさ。今は仕事を探している状態だから大助かりだよ。今すぐ召喚してもいいぞ」
「分かった。10分後に会おう」
10分後、エクムントは町の郊外に出て本を取り出し、魔法陣を起動する。
「召喚……アルフォンス!」
現れたのは、中年の男。同世代によくある、主にエールによる中年太りとは無縁で、スレンダーな身体をしていた。
「ようエクムント、久しぶりだな。ついうっかり顔を忘れそうになったぜ」
「やぁアルフォンス、その様子だと順調そうだな」
「いや、そうでもないぜ。仕事が途切れがちで女房には迷惑をかけっぱなしだよ。お前による仕事の紹介は本当に助かってるよ。で、今回のクエストはどういう内容だ?」
「行方不明の息子を探してほしいという領主からの依頼だ。悪いが緊急クエストで時間との勝負になっている。急ごうか」
アルフォンスは「探し屋」と呼ばれるタイプの「元」冒険者である。
彼は昔、トレジャーハンターとして各地の遺跡を潜っていたが、加齢による身体の衰えとケガの後遺症で数年前に引退したのだ。
だがお宝探しで培われた直感と推理力は今もなお健在で、それを活かせる職種である「探し屋」
……行方をくらませた人の捜索や無くし物の捜索をする職業、として活躍していたのだ。
ギルドを通して連絡し、指定の時刻に領主の館へと向かう。応接間に通されると町を仕切る女領主がいかにも座り心地のよさそうなソファーに座っていた。
彼女と対面する形で2人も座る。
「エクムント=バルミング、ただいま参りました。彼は連れのアルフォンスという者です」
「そう。依頼の内容について話をしますね。3日前に息子がこんな手紙を残して行方不明になったんです」
彼女はそう言って手紙を見せてくれた。
「拝啓 母上様へ
産まれてから17年経ちますが心の底から愛するのはセシリーだけです。どの領主の娘でも彼女にはかないません。
どれだけ魅力的な人と見合いをしても、そのたびにセシリーと比べて「彼女ほどではないな」と毎回必ず思ってしまいます。
私にとってはセシリーしか結婚を考えられる女性はいません。どうしても認められないというのならこの家を出ていきます。今までお世話になりました。さようなら」
「セシリー、とは一体誰ですか?」
「この屋敷に仕えるメイドの1人です。息子は彼女に身分違いの恋をして持ちかけられていた縁談を全て断っているんです。まさか彼女と一緒に家出までやるとは思ってはいなかったけど……」
彼女は話を続ける。
「私としても打てる手はすべて打ちました。町の領民全員に聞き込み調査をしましたが、誰1人息子とセシリーの足取りを知るものはいませんでした。まるで煙のように消えてしまったんです。
お願いします、最悪の事態になる前に息子とセシリーを見つけ出してほしいんです! 引き受けてくれますか?」
彼女からの悲痛な訴え。それを断ることなど、出来るわけがない。
「分かりました。息子さんを必ず探し出して見せます」
2人は依頼を引き受けることにした。
捜査を始めて2日目……。
「エクムント、そっちはどうだ?」
「収穫無しですな。衛兵たちも領主の息子さんに買収されている様子もなさそうです」
事前に領主による聞き込み調査は行われていた事もあって、改めて聞き込みをするもやはり成果は無し。早くも行き詰まりが見えてきた。
「うーむ……おかしな話だよなぁ。だって領主の息子だぜ? さすがに子供は別として、大人なら誰もが顔を知っている。街中をうろついていたらどんな時間帯でも誰かしら気づくはずだぞ?」
「ですよねぇ。それに屋敷への出入口は検問所がある正門のみだし、町を出るにも積み荷をチェックされる。2重のチェック体制をすり抜けられるとは考えにくいですよね」
「でも実際問題としてここの領主の息子さんは忽然と姿を消した。それは事実だ……でかい謎だな」
男2人が顔を突き合わせるものの成果なし。順調な船出とはいかなそうだ。
今日も手ぶらで屋敷に戻る。捜査を引き受けてから2人には客間が与えられ、食事も用意してくれることになった。だが……。
「えっと……、客間はどこでしたっけ?」
「ここから2つ先の曲がり角を曲がってすぐだろ? しっかりしろよ」
「いやぁさすがはアルフォンス、しっかりしてますな。いやしかしこれだけ広い家だと迷いますな。もしかしたら家主が足を踏み入れたことがない部屋もあるかもしれませんね」
「ハハハ。そう言うかお前……? 待てよ……それだ! それだよエクムント! お前天才だわ!」
「?? へ? て、天才? 私が?」
アルフォンスは急にエクムントを天才呼ばわりする。何か閃いたようだ。
【次回予告】
エクムントのセリフを聞いて何かを閃いたアルフォンス。事件解決に向けて話は一気に動き出す。
第9話 「緊急クエスト 息子の捜索 後編」
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