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第9話 緊急クエスト 息子の捜索 後編
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「?? へ? て、天才? 私が?」
「ああ! もしも『逃げ出したというのが間違い』で、『本当はまだ逃げていなかった』としたら、これだけ目撃情報が出ないのもうなづける話だぜ!」
「へ? 本当はまだ逃げていない? ってことは『まだ家の中にいる』って事になってしまいますけど?」
「このあたりじゃ一番でかい豪邸だ。普段使われていない場所の1つや2つあるはずだ! そこに隠れていたら全ての『つじつま』が合うぜ!」
翌朝、早速2人はメイド相手に聞き込みを開始する。
「屋敷の中で普段誰も近寄らない場所ですか?」
「ああそうだ。何でもいい、教えてくれ」
「そうですか。だとしたら地下牢がそうですけど」
ピクリ、とアルフォンスの顔が反応する。直感で何かあると感じ取っていた。
「詳しく話を聞かせてくれないか?」
「え、ええ。いいですよ。屋敷の外れには地下牢があって、年に1度の大掃除以外には誰も訪れる者がいない場所だとは聞いています。
噂では獄中で死んだ囚人の霊が『出る』とかいう気味の悪いうわさが立っていて、私も知ってるだけで近寄ったりはしない場所です」
「そうか、捜査協力ありがとな、嬢ちゃん!」
2人が集めた情報によると屋敷の外れには地下牢があるらしい。昔は罪人をつなぎ止める場所として使われていたそうだが
今では町に留置所が整備され、罪人はそこに行くようになったため今では使っておらず、取り壊すにもカネがかかるからと放置され、
何より『出る』という噂もあって気味悪がって誰も近寄らない場所らしい。
「なるほど……話が見えて来たぜ。間違いねぇ、地下牢だ。そこが居場所だ」
アルフォンスのお宝探しの直感が告げていた。探し物はそこにある、と。
「……ちょっとひんやりしますな」
「まぁ地下なんてそんなもんだよ。懐かしいなぁ、ダンジョンに潜った時と似た感覚がするよ」
明かりを頼りに捜索をする2人。すぐに何かを見つけた。
「見ろ、保存食だ。それもこんなに」
目の前には保存が効くように乾燥させたパンに、ハムやベーコンと言った保存食の数々。それも人が1ヶ月は居座れそうな量だ。
「このかまど……最近まで使われていた形跡があるぞ」
次いで発見したのは急造したと思われるかまど、それも最近まで使われた形跡がある物だ。
「やはり誰かいるな。アルフォンス、お前の推理通りだな」
「だな。先を行こうぜ」
2人は先を急いだ。
「!!」
ほどなくして彼らは先で明かりがついているのを見つける。誰かいるようだ。足音を立てないよう慎重に歩き、覗き見る。
「んふっ。んふぅ!」
地下牢の中、若い男女2人は舌を絡ませ奪い合うような濃厚なキスを交わしていた。
「セシリー、君とは何度キスしても一向に飽きないよ。やっぱり君が最高だ」
「坊ちゃま。私もこうして誰の目も気にせずにやりたいようにやれて幸せです」
「セシリー、愛してる。世界中のどの女よりも、きみだけを愛してる」
「私もです」
牢獄が愛の巣と化していた。そこへエクムントとアルフォンスの2人は土足で踏み入る真似をする。
「お取込み中ですが失礼しますよ」
「アンタが領主の息子さんにセシリーちゃんかい? やっと見つけたぜ」
「!! 見つけた!? まさか母さんに言われて来たのか!?」
「ああそうさ。言っとくけど依頼主であるお前の母親には既に通達済みで俺たちを追い払っても私兵がやってくる手はずになってるから抵抗しても無駄だぞ」
「クソッ!」
領主の息子とメイドのセシリーは渋々従った。
「そう、見つけてくれたのね。ありがとう、あの子が無事でよかったわ。ギルドにはもう連絡してクエストクリアーという事にしているから、後で報奨金を受け取ってね」
「はい、分かりました」
「ありがとう、本当に世話になったわ」
「何、仕事をこなしただけで褒められるようなことはしていませんよ。ではまた何かあった呼んでくださいね」
2人は去っていった。
「仕事の成功を祝って、カンパイ!」
町の中心地にある酒場、そこでエクムントとアルフォンスの2人は平民視点から見れば豪勢な昼食をビールと共に摂っていた。
「いやぁ、無事に終わって何よりですよ」
「今回の仕事はお前がいてくれたから解決できたようなものだよ。あの時お前が「家主が足を踏み入れたことがない部屋もあるかも」って言ってくれなければ解決できたか怪しいもんだぜ?」
アルフォンスはあの時のひらめきのきっかけを与えてくれたエクムントに感謝していた。
「そういえばお前まだ旅をしてるんだよな? どこへ行くつもりだ?」
「一応はイスターナ国を目指しています。久しぶりにあそこのウイスキーを飲みたいと思いましてね」
「……気を付けた方が良いぞ。どうもあそこではよくない噂が広がってるそうだぜ。まぁいいや、酒の席には合わない話だからな。
今回も仕事を紹介してくれて助かったわ。これで堂々と胸を張って家に帰れるよ。緊急クエストで割増の報酬だったから女房も満足だろうよ」
「それは良かったですな。家族の絆に貢献出来たようで私も満足ですよ」
「いやぁ持つべきはよき友だな! お前と知り合えて本当に良かったよ!」
この日2人は大いに飲んで食べ、仕事の成功を祝った。
なお数日後、ここの領主の息子は身分の差を乗り越えてメイドのセシリーと結婚した。この話は後にベストセラーとなる恋愛小説のモデルになったというがそれはまた別のお話。
【次回予告】
『傭兵王』なる国王から呼び出されたエクムント。王は彼の人脈の強さに気づいていた。それを我が物とするべく動き出すが……。
第10話 「エクムント捕縛」
「ああ! もしも『逃げ出したというのが間違い』で、『本当はまだ逃げていなかった』としたら、これだけ目撃情報が出ないのもうなづける話だぜ!」
「へ? 本当はまだ逃げていない? ってことは『まだ家の中にいる』って事になってしまいますけど?」
「このあたりじゃ一番でかい豪邸だ。普段使われていない場所の1つや2つあるはずだ! そこに隠れていたら全ての『つじつま』が合うぜ!」
翌朝、早速2人はメイド相手に聞き込みを開始する。
「屋敷の中で普段誰も近寄らない場所ですか?」
「ああそうだ。何でもいい、教えてくれ」
「そうですか。だとしたら地下牢がそうですけど」
ピクリ、とアルフォンスの顔が反応する。直感で何かあると感じ取っていた。
「詳しく話を聞かせてくれないか?」
「え、ええ。いいですよ。屋敷の外れには地下牢があって、年に1度の大掃除以外には誰も訪れる者がいない場所だとは聞いています。
噂では獄中で死んだ囚人の霊が『出る』とかいう気味の悪いうわさが立っていて、私も知ってるだけで近寄ったりはしない場所です」
「そうか、捜査協力ありがとな、嬢ちゃん!」
2人が集めた情報によると屋敷の外れには地下牢があるらしい。昔は罪人をつなぎ止める場所として使われていたそうだが
今では町に留置所が整備され、罪人はそこに行くようになったため今では使っておらず、取り壊すにもカネがかかるからと放置され、
何より『出る』という噂もあって気味悪がって誰も近寄らない場所らしい。
「なるほど……話が見えて来たぜ。間違いねぇ、地下牢だ。そこが居場所だ」
アルフォンスのお宝探しの直感が告げていた。探し物はそこにある、と。
「……ちょっとひんやりしますな」
「まぁ地下なんてそんなもんだよ。懐かしいなぁ、ダンジョンに潜った時と似た感覚がするよ」
明かりを頼りに捜索をする2人。すぐに何かを見つけた。
「見ろ、保存食だ。それもこんなに」
目の前には保存が効くように乾燥させたパンに、ハムやベーコンと言った保存食の数々。それも人が1ヶ月は居座れそうな量だ。
「このかまど……最近まで使われていた形跡があるぞ」
次いで発見したのは急造したと思われるかまど、それも最近まで使われた形跡がある物だ。
「やはり誰かいるな。アルフォンス、お前の推理通りだな」
「だな。先を行こうぜ」
2人は先を急いだ。
「!!」
ほどなくして彼らは先で明かりがついているのを見つける。誰かいるようだ。足音を立てないよう慎重に歩き、覗き見る。
「んふっ。んふぅ!」
地下牢の中、若い男女2人は舌を絡ませ奪い合うような濃厚なキスを交わしていた。
「セシリー、君とは何度キスしても一向に飽きないよ。やっぱり君が最高だ」
「坊ちゃま。私もこうして誰の目も気にせずにやりたいようにやれて幸せです」
「セシリー、愛してる。世界中のどの女よりも、きみだけを愛してる」
「私もです」
牢獄が愛の巣と化していた。そこへエクムントとアルフォンスの2人は土足で踏み入る真似をする。
「お取込み中ですが失礼しますよ」
「アンタが領主の息子さんにセシリーちゃんかい? やっと見つけたぜ」
「!! 見つけた!? まさか母さんに言われて来たのか!?」
「ああそうさ。言っとくけど依頼主であるお前の母親には既に通達済みで俺たちを追い払っても私兵がやってくる手はずになってるから抵抗しても無駄だぞ」
「クソッ!」
領主の息子とメイドのセシリーは渋々従った。
「そう、見つけてくれたのね。ありがとう、あの子が無事でよかったわ。ギルドにはもう連絡してクエストクリアーという事にしているから、後で報奨金を受け取ってね」
「はい、分かりました」
「ありがとう、本当に世話になったわ」
「何、仕事をこなしただけで褒められるようなことはしていませんよ。ではまた何かあった呼んでくださいね」
2人は去っていった。
「仕事の成功を祝って、カンパイ!」
町の中心地にある酒場、そこでエクムントとアルフォンスの2人は平民視点から見れば豪勢な昼食をビールと共に摂っていた。
「いやぁ、無事に終わって何よりですよ」
「今回の仕事はお前がいてくれたから解決できたようなものだよ。あの時お前が「家主が足を踏み入れたことがない部屋もあるかも」って言ってくれなければ解決できたか怪しいもんだぜ?」
アルフォンスはあの時のひらめきのきっかけを与えてくれたエクムントに感謝していた。
「そういえばお前まだ旅をしてるんだよな? どこへ行くつもりだ?」
「一応はイスターナ国を目指しています。久しぶりにあそこのウイスキーを飲みたいと思いましてね」
「……気を付けた方が良いぞ。どうもあそこではよくない噂が広がってるそうだぜ。まぁいいや、酒の席には合わない話だからな。
今回も仕事を紹介してくれて助かったわ。これで堂々と胸を張って家に帰れるよ。緊急クエストで割増の報酬だったから女房も満足だろうよ」
「それは良かったですな。家族の絆に貢献出来たようで私も満足ですよ」
「いやぁ持つべきはよき友だな! お前と知り合えて本当に良かったよ!」
この日2人は大いに飲んで食べ、仕事の成功を祝った。
なお数日後、ここの領主の息子は身分の差を乗り越えてメイドのセシリーと結婚した。この話は後にベストセラーとなる恋愛小説のモデルになったというがそれはまた別のお話。
【次回予告】
『傭兵王』なる国王から呼び出されたエクムント。王は彼の人脈の強さに気づいていた。それを我が物とするべく動き出すが……。
第10話 「エクムント捕縛」
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