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3.家主が帰ってきたようだ
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自分に専属騎士がついて早数週間、彼を連れて修練場に行くのも定番と化してきている。この日もレピの剣を見るのだと言うと、カルセドが今日はレピも修練場に居ないだろうと言った。メイドや執事が慌ただしくしていることと何か関係があるのだろうかと様子を見に行くと、突如メイドたちに昨晩やったばかりの沐浴を再度強要され、今までに見たこともない綺麗な服を取り出してきた。
「それ、俺が着るのか?」
「あなた様以外に誰が着ると言うのですか」
メイドは冷たく返す。
「待ってくれ、華やかすぎる。せめて黒い服はないのか?」
メイドはため息を吐きながらも一応はこれを命令と受け止めているからか黒系統の服を2着程用意した。その中で最も装飾が少なく変わりに刺繍の多い物を選びメイドたちに不可解だという顔をされたが、これがどれよりも目立たなかったし、ワンポイントとして宝石が付いているだけだった。
服に付いていた物以外、金品の装飾の一切を付けず申し訳程度に髪飾りを付けられて邸宅の玄関に向かわされた。この髪飾りも本来は必要に思っていない。道中使用人もカルセドも驚いては視線を合わせるとわざわざ逸らしていたのは何故なのだろうか。階段の下には使用人たちに混ざってレピも背をピンと立てており、緊張した顔をしている。
「レピ」
「師匠!」
階段をおりてレピに近寄るとレピは顔を赤らめて何かを言葉にしようとした。
「師匠、その……今日は一段とお美しいですね」
「え?あぁ、ありがとう」
美しいという概念の全てを避けた上での衣装と思っていたものだから思わず困惑しながら礼を言った。ゾロゾロと足音が聞こえる。10、20、30は超えるだろう足音に混ざる鉄の音。この扉の前に来るまでに大多数が別の方へ行ったのが音で分かる。扉が開かれて現れたのはあの結婚式の時目の前にいた男、ジャスパーだった。
「おかえりなさいませ、旦那様」
「ち、父上。おかえりなさいませ」
レピは先程より更に緊張している。
「レピド、精進していたか?」
「はい!父上、ジェット!僕、師匠のおかげで剣がより上手くなりました!」
聞き慣れない名前で反応を見せたのは夫の隣に立つ顔に傷のある騎士だった。きっと彼がレピの専属騎士なのだろう、なのにレピを一人にしていたのはどういった理由からだろうか。見たところ仲は良好そうだが。
「師匠……?そんな者雇った覚えは無いが」
「レピの言う師匠ってのは俺だ」
「ああ、お前か。剣の嗜みがあるとは、とんだお転婆姫ではないか」
「姫……?俺が……?」
「せいぜい大人しく過ごしているがいい。癇癪じみた態度をしても俺は振り向かんぞ。クロム、食事の用意をしろ」
「あっ、父上、師匠はそんな……」
レピの声が届かなかったのか、ジャスパーは足早に去っていった。あの男の頭のなかで俺はどんな人物像となっているのだろう。
ジャスパーが帰ってきてから食事の準備が終わるまでそう時間はかからなかった。
ジャスパーとレピはぎこちないながらも、恐らく歓談と言える雰囲気を保っている。ジャスパーはきっとレピを大切にしているのだろうし、レピはレピで夫に憧れの眼差しを向けているが。良好といえば良好だ。レピの楽しそうな様子を見つつ、この傷んでいる食べ物を口に運んだ。よく見れば二人が食しているものと違うメニューもあり見事に歓迎されていないことが分かるが、元いた世界でのゲリラ戦では食べ物という食べ物がなかったため、毒があっても傷んでいても、それが虫でも人の死体でも、食べられるなら何だって食べていた。ジャスパーが帰ってきてからというもの日々食事には呼び出されたため、このような食事が続いた。蓄積された経験したことの無い毒で倒れたのはそれから数日後、騎士たちと訓練をしていた時だった。
「それ、俺が着るのか?」
「あなた様以外に誰が着ると言うのですか」
メイドは冷たく返す。
「待ってくれ、華やかすぎる。せめて黒い服はないのか?」
メイドはため息を吐きながらも一応はこれを命令と受け止めているからか黒系統の服を2着程用意した。その中で最も装飾が少なく変わりに刺繍の多い物を選びメイドたちに不可解だという顔をされたが、これがどれよりも目立たなかったし、ワンポイントとして宝石が付いているだけだった。
服に付いていた物以外、金品の装飾の一切を付けず申し訳程度に髪飾りを付けられて邸宅の玄関に向かわされた。この髪飾りも本来は必要に思っていない。道中使用人もカルセドも驚いては視線を合わせるとわざわざ逸らしていたのは何故なのだろうか。階段の下には使用人たちに混ざってレピも背をピンと立てており、緊張した顔をしている。
「レピ」
「師匠!」
階段をおりてレピに近寄るとレピは顔を赤らめて何かを言葉にしようとした。
「師匠、その……今日は一段とお美しいですね」
「え?あぁ、ありがとう」
美しいという概念の全てを避けた上での衣装と思っていたものだから思わず困惑しながら礼を言った。ゾロゾロと足音が聞こえる。10、20、30は超えるだろう足音に混ざる鉄の音。この扉の前に来るまでに大多数が別の方へ行ったのが音で分かる。扉が開かれて現れたのはあの結婚式の時目の前にいた男、ジャスパーだった。
「おかえりなさいませ、旦那様」
「ち、父上。おかえりなさいませ」
レピは先程より更に緊張している。
「レピド、精進していたか?」
「はい!父上、ジェット!僕、師匠のおかげで剣がより上手くなりました!」
聞き慣れない名前で反応を見せたのは夫の隣に立つ顔に傷のある騎士だった。きっと彼がレピの専属騎士なのだろう、なのにレピを一人にしていたのはどういった理由からだろうか。見たところ仲は良好そうだが。
「師匠……?そんな者雇った覚えは無いが」
「レピの言う師匠ってのは俺だ」
「ああ、お前か。剣の嗜みがあるとは、とんだお転婆姫ではないか」
「姫……?俺が……?」
「せいぜい大人しく過ごしているがいい。癇癪じみた態度をしても俺は振り向かんぞ。クロム、食事の用意をしろ」
「あっ、父上、師匠はそんな……」
レピの声が届かなかったのか、ジャスパーは足早に去っていった。あの男の頭のなかで俺はどんな人物像となっているのだろう。
ジャスパーが帰ってきてから食事の準備が終わるまでそう時間はかからなかった。
ジャスパーとレピはぎこちないながらも、恐らく歓談と言える雰囲気を保っている。ジャスパーはきっとレピを大切にしているのだろうし、レピはレピで夫に憧れの眼差しを向けているが。良好といえば良好だ。レピの楽しそうな様子を見つつ、この傷んでいる食べ物を口に運んだ。よく見れば二人が食しているものと違うメニューもあり見事に歓迎されていないことが分かるが、元いた世界でのゲリラ戦では食べ物という食べ物がなかったため、毒があっても傷んでいても、それが虫でも人の死体でも、食べられるなら何だって食べていた。ジャスパーが帰ってきてからというもの日々食事には呼び出されたため、このような食事が続いた。蓄積された経験したことの無い毒で倒れたのはそれから数日後、騎士たちと訓練をしていた時だった。
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