伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ

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第一章

試し斬り

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 俺が放った斬撃が、オークの分厚い肉を容易く斬り裂いた。

 ほとんど抵抗感がなかったことに驚きながら、その切れ味に感動する。

 まるで包丁で豆腐を斬るような感覚だった。

 それにめちゃくちゃ振りやすい。

 やばい、気持ち良すぎる......!

 何かに目覚めそうだ。

「すげーな」

「スパッて感じでしたね!こうスパッって!!」

 興奮気味に手を振って剣の軌道を真似るエマに、フランツが苦笑しつつも頷く。

「気に入ったみたいだね」

「ふふっ、ずっと待ちきれないって感じでしたからね」

「ああ、ずっとニヤニヤしてたな」

 3人に言われて、自然と笑みが溢れていたことに気付く。

 ちょっと気恥ずかしい。

「そういうアルさんだってソワソワしてますよ」

「はは、まあ楽しみでしょうがないぜ。お前もそうだろフランツ」

「当たり前じゃないか」

 新しい武器をゲットしたら使いたくなるのは皆同じなようだ。

 そこからは順番に戦い、それぞれ感触を確かめていった。

 どんな武器にするのか、冒険者学校の鬼教官・グレゴリー先生に相談して決めたので、皆しっくりきているようだった。もちろん俺もアドバイスを貰った。 

 授業や訓練の時はただの鬼だが、ベテラン冒険者なだけあって頼りになる教官だ。

 結果的に、俺たちは今までよりも数段ほど強くなっていた。

俺たち自身の成長も大きい。

あの戦いでレベルは相当上がったし、経験も積んで、トレーニングも欠かさなかった。

そんな俺のステータスがこれだ。

----------------------

名前:エルリック・フォン・フェルディナント

種族:人間

レベル:26

HP:1500/1500

MP:1340/1340

攻撃:940
魔力:820
物防:810
魔防:780
敏捷:830
器用:805

スキル:剣術LV9 火属性魔法(中級) HP・MP自動回復(微)

固有スキル:???

加護:メルシフィア神の加護

称号:転生者

----------------------

剣術は9まで上がったし、ステータスも上がって、攻撃なんかはもうすぐ4桁に届きそうなくらいだ。


それから十回ほど戦闘を重ね、そろそろ帰ろうかという話になったところで、アルフレッドが突然足を止めた。

「静かに」

普段の彼からは想像できない真剣な表情で言うと、静かにその場にしゃがんだ。

疑問に思いながらも、俺たちもすぐにしゃがむ。

一体何なんだ......?

アルフレッドは息を殺し、鋭い目付きで一点を睨みつけている。

ここからでは、草木が邪魔で何も見えない。

緊張の数秒の後、アルフレッドが弓に矢をつがえ、潜めた声で俺に言った。

「合わせろ」

俺が無言で頷くと、アルフレッドが矢を放った。

それとほぼ同時に地面を蹴って疾走すると、魔物のものと思しき呻き声が聞こえた。

真っ黒な毛の猪のような奴だった。

首元に深々と矢が刺さり、よろめいていた。

俺に気が付くと唸り声を上げて突っ込んでくるが、そこに二本目の矢が命中。

勢いの削がれた突進を横に躱しながら剣を振り、一撃で絶命させた。

剣を切り払って付着した血を飛ばす。


矢の援護があったとはいえ、そこまで警戒するような相手じゃなかったよな?

ウルフ系の魔物の方が絶対に強いし。なんなら厄介さはオークとかと同じくらいじゃないか?

「なあ、こいつってーー」

「よし!」

「おおー、マチョじゃないですか!」

アルフレッドが拳を握り、エマが歓声を上げた。

二人が駆け寄ってきて、感動したように言う。

「まさかこんなとこで出くわすなんて......!」

「わあ、本当にマチョですよ......!」

マチョ?

「久しぶりに見たよ。それ、どうするんだい?」

そう言うフランツも嬉しそうだ。

その言葉に、二人の笑みが深まる。

「「食う(べる)に決まってるだろ(でしょ)!」」


帰り際、テンションの上がった3人から聞いてみると、超うまい肉!っていうことだった。

しかも中々見つけられないので、かなり高級なんだとか。

ああ、あの緊張って、そういう......。

思わず呆れ笑いが出てしまったけど、3人の反応を見ていると俺まで楽しみになってきた。



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