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第一章
新たな剣
スタンピードから一ヶ月が経った。被害を受けた街道や街壁の補修も終わり、街は完全に元通りになっていた。
そうした被害は大したことがなかったので、魔物の死体の始末さえ終われば、修復はすぐだったらしい。
「あいよ、注文の剣だ」
鍛冶屋の店主が低い声で言いながら、カウンターの上に一本の剣を置いた。
濡羽色のその鞘には装飾と言えるものが一つもないが、洗練された上品な美しさがあった。
感動と高揚感に胸を高鳴らせながら、ゆっくりと剣を引き抜く。
「おぉ......」
露わになったスノーホワイトの流麗な刀身は、刃全体が薄く光を纏い発光しているかのようだった。
神秘的なその輝きはいかなる物をも斬り裂く力強さと、何者にも侵されない気高い意志を内包している。
およそ装飾と言えるようなものは、刀身を縦に貫く一本の線くらいなものだ。それすらも純粋なデザインのためのものなのかはわからない。
が、しかしそれは、今までに見たどんな剣よりも美しかった。
それはまさに、物語の英雄が持つに相応しいと思える逸品だった。
「すごいな......」
あまりの美しさに、思わず感嘆の声が漏れる。
これが......俺の剣......。
「最高の鉱石、ミスリルをふんだんに使った一振りだ。どうだ、気に入ったか?」
そういう店主は、目の下にはクマが出来ていて、無精髭を生やし、明らかに疲れた顔をしていた。
彼はちょくちょく愚痴を溢していたが、どうやらスタンピードの影響で武具の修復やメンテナンスの注文が急増していて、鍛冶屋は修羅場だったらしい。
そんなただでさえ忙しい中で、父さんからオーダーメイドの武器を作ってほしいというお願いが来たために、大変なことになっていたようだった。
その話を聞いた時には申し訳なく思ったけど、
料金はかなり多めに支払われていて、かつ急がなくていいとも言われていたらしく、本気で怒っているような様子じゃなかったのが救いだ。
(急がなくていいって言われてたのに、無理して作ってくれたんだ......)
とめどなく溢れてくる感謝の気持ちが、自然と口から漏れ出した。
「ありがとうございます」
「おう、精々そいつに相応しい使い手になれよ」
おっちゃんはそう言ってニカっと笑った。
「ほんとに綺麗だな......」
寮に帰ってから、俺は時間を忘れて剣を眺めた。
アルフレッド、エマ、フランツの3人は数日前にはもう武器を受け取って、早く慣れたいと言って今日も自主的にトレーニングをしている。
ずっと羨ましいと思ってたけど、俺もようやく......。
本当はすぐにでも魔物相手に試し斬りしたかったけど、店を出た時にはもう夕方だったので泣く泣く諦めた。
でも......見てるだけで幸せだ......。
「ふへへっ」
つい気持ち悪い笑いが出るくらいには。
その後、トレーニングから帰ってきたアルには無事ドン引きされたけど......。
まあはたから見たら、薄暗い部屋で一人剣を見つめてニヤけてる危ない奴だよな。俺だったら迷わず逃げる。
だけどそう自覚しても頭の中は、早く使ってみたい!でいっぱいで、晩飯の時もニヤニヤは治らず、
「な、何で一人で笑ってるんだい......?」
フランツとエマにもドン引きされてしまった。
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