43 / 60
第二章
ダンジョン
しおりを挟む「一体何があったんだ!?」
戦闘を終えて小休止していると、突然声が響いた。
何人かの騎士が森の中から歩き出てきていて、この惨状に驚愕しているようだった。
そりゃあ驚くよね...。ていうか、あの人たちはどこから来たんだろう?
彼らは隊長らしき人物とやや離れた場所で話を始めたので、気になるが声は全く聞こえない。
◆
ゼルスは、判断に困っていた。
捜索から帰って来ない冒険者たちを探しにダンジョンに入った騎士たちが戻ってきたのだ。しかし、
道がなくなっていた─── 。
報告によれば、なんと彼らが通ったはずの通路が壁で塞がれ行き止まりになっていたという。
冒険者たちはトラップによって閉じ込められたと判断し、安全のため遠距離から魔法をぶつけるもヒビすら入らず、諦めて帰還したと。
どうしたものか...。
不用意に罠に近づくことは危険で、通路の打通も望めない。
救出のためには迂回するしかないが、そのためには危険な未踏破領域を進むことになる。
これ以上の被害を出すわけにはいかない。
かといって、ダンジョン内部に残されたAランク冒険者数名というのは切り捨てるには大きすぎる存在だ。
「どちらを選んでも完全な正解ではない、か...」
俺はそう嘆息しながら、魔物の死体で溢れる野営地に視線を向けた。
救援の冒険者たちが持ってきたポーションによって重傷の者はいないが、疲労はそうもいかない。
ひとまずは地上の対応が先決だな...。
◆
騎士の隊長から、交代で休息を取りつつ夜を明かすという指示があった。
魔物の死体の処理など、諸々の後始末は明るくなってから行うという。
えぇ...まじでここで寝るの...?
地面には所狭しと魔物の死体が転がっていて、当たり一帯が奴らの血で濡れている。
ちょっともうすでに吐きそうなんだけど......。
などと内心で嘆いていると。
「魔物が出て来たぞ!?」
突然1人の騎士が大声を上げた。
俺を含め、皆がすぐに戦闘態勢に入った。
さっきまでとは打って変わり今度は一方向から向かって来る。
森の中では剣のみで戦うしかない俺は前衛に立ち、モンスターの一団とぶつかった。
もっと強くなりたい。先の戦いで生まれたその思いや悔しさをぶつけるように剣を振るい、オークの上位種であるハイオークの胸を切り裂いた。
奴は血を吹きながら地面に倒れたが...
「は?」
そのハイオークの死体は黒い靄のようになって姿を消してしまった。
地面には奴のものと思しき魔石だけが一つ転がっている。
どういうことだ...?
こんなことは初めてだ。なんで死体が消えた...?
思わず周りを見渡すが、他の皆はそれほど驚いた様子はない。それどころか、
「───そういうことだったのか」
誰かが納得したような声音で言う。
「まさか、ダンジョンとはな......」
ダンジョン...?
253
あなたにおすすめの小説
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる