伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ

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第二章

成長と不安

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「や、やっと終わった...」

 長期休暇が明けてから、最初の休日。

 俺はクラクラする頭を抑えて倒れるように机に崩れ落ちた。
 
 早朝からぶっ通しで続いた補習からようやく解放されたのだ。

「あぁー、こんな事になるなら、ちゃんと勉強しとけばよかった...」

 (それな...)

 近くから聞こえて来た、名前も知らない生徒の言葉に反応する気力もなく、心の中でため息混じりにそう呟く。

 補習は、人数が少ないことから同学年の全クラス合同で行われたのだ。普通に1クラス分くらいいて、そのほとんどが力尽きて軟体動物のようにぐんにょりしている。


 俺は突っ伏したままの頭を少し持ち上げ、チラリと外を見る。

 え、もう夜じゃん...いくらなんでも長すぎでしょ...!

「まじか...」

 またガクッと頭が落ちる。

 休日が丸一日潰れちゃったし、みんなともなかった...。
 あーあ、アルたちは戦いに行ってたのに。俺も行きたかったなぁ。
 
 それもこれも、勉強をしなかったどころか試験の存在すら知らなかった誰かさんのせいで...。ほんとに許せない。過去の自分を呪いたい。

「腹減って死にそう。飯食い行こうぜ」
「ぇえー、動く気力ないよもう」
「いいから行くぞ」

 徐々に他の生徒たちがガタガタと椅子を動かして立ち上がる中、俺も気持ちを切り替えようとする。

 ま、まあけど、どっちにしろ学生はまだ森には入っちゃダメらしいし、満足いく相手とは戦えなかっただろうからよしとしよう。あそこ以外だと弱いモンスターしか出ないからな。うん...。
 
 ...てかそういえば、ダンジョンの件はひと段落ついたのか、あれからは何も聞かされてないな。まあ、一歩間違えたら多くの人が死んでたかもしれないわけだし、しばらくは何もできないって事なんだろうか。

 ベテラン冒険者を大勢集めて、しかも調査だけであれだもんな。手の出しようが無さそうだ。

 とはいえ、危険な状態であることには変わりなく、森への立ち入りは禁止されたままだ。
 実際に俺たちが踏み込む直前にモンスターが出てきたりもしたし、何が起こってもおかしくないような状況だ。またスタンピードみたいに街にモンスターが押し寄せて来る可能性だってあるだろう。

 窓の外の暗闇を見つめながら考える。

 ...もし、あんなゴーレムが出て来たら絶対やばいよな。あの時は固有スキルのおかげでなんとかなったけど、その力のこともまだよくわからない。

 それに3層であのゴーレムだ。下層にはもっと強い奴もいるだろうし、そんな奴らが大勢出て来たら...果たして勝てるんだろうか。

 俺だって、この休み期間でかなり強くなった。ダンジョンでの戦いもあったし、トレーニングも欠かさず積んできた。それに成長補正の効果が重なった結果、俺のステータスはここまで成長している。

 俺は首元のペンダントを握り、突っ伏したまま小さく「ステータス」と口にする。

----------------------

名前:エルリック・フォン・フェルディナント

種族:人間

レベル:26→41

HP:1,500/1,500→3,500/3,500
MP:1,340/1,340→3,250/3,250

攻撃:940→1,950
魔力:820→1,585
物防:810→1,460
魔防:780→1,405
敏捷:830→1,600
器用:805→1,350

スキル:剣術LV9→10 火属性魔法(中級) 水属性魔法(初級→中級) HP・MP自動回復(微→小)

固有スキル:???(1/4)

加護:メルシフィア神の加護

称号:転生者

----------------------

 しばらく見てないうちにすごいことになっていた。ダンジョンから帰って少しした頃に見たときは、あまりの変わりように驚いた。

 レベルとステータスはめちゃくちゃ上がってるし、スキルも上がってる。多分、あのゴーレムを倒したのが大きかったんだろう。
 ステータスなんかは全部四桁になったし、攻撃なんかは二千を越えそうだ。
 水魔法だって、森の中では火魔法が使えずに有効な遠距離攻撃手段がなかったので練習し、中級まで上げた。
 自動回復スキルも微から小に変わっている。まあ、そもそもずっと持っていたスキルなのでいまいち効果の実感がないけど。
 
 あと、固有スキルの「1/4」の表記がめっちゃ気になる。確か、ゴーレム戦の時に第一段階がなんとかって言ってたけど、結局「?」のままだし。


 けどそれよりも。

 (やっぱり、剣術全然伸びてないな...)

 前回確認した時と同じだ。俺はそのスキルの横に浮かぶ10という数字をみて、小さく肩を落とした。
 あれからも剣の鍛錬はやって来たが、どうにも上達しそうにないのだ。

 ───それに、ここまでステータスが上がって強くなっても、結局あのSランクのジーベルトには手も足も出なかった。

 きっとあの人がダンジョンにいたなら、あのゴーレムだって瞬殺だっただろうな...。

 補習の疲労も相まってか、考えれば考えるほどに気分が落ち込んでいく気がする。

 このままじゃダメだ。

 俺はいてもたってもいられなくなり、ガバッと立ち上がって教室を出た。





 

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