📗夢日記から生まれたショート小説

ノアキ光

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6 砂の街

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 朝になると、街は少し沈んでいる。
 昨日までの大通りが、今日は腰の高さまで砂に埋まっているのだ。
人々は家の二階から出入りし、屋根伝いに移動する。毎晩、砂は空から降ってくる。それも雨粒のように、粒の小さな金色の砂が降り注ぐのだ。

 私は「掘り師」として生計を立てている。日中はスコップを持って、埋もれた街の一階部分を掘り出す。時々、まだ使える家具や機械、あるいはかつての住人が残した金品が見つかることもある。
 だが、この街には一つの決まりがある――「砂の下の物は、掘った者のもの」。だから争いは絶えない。

 ある日、私は奇妙な音を聞いた。砂の中で、規則正しい低い鼓動のような音。掘り進めると、そこには巨大な透明の壁があった。向こう側には――街が見える。私たちと同じ形の家、同じ色の空、ただし砂は一粒もない。

 壁越しに人影が現れた。そちらの人間も、驚いた表情でこちらを見ている。やがて、壁に貼りつくようにして口を動かした。
 「そっちは砂の中に沈んでいるのか?」
 私は叫び返す。「毎晩降ってくるんだ。そっちは?」
 彼は目を丸くし、「毎晩、砂が吸い上げられていくんだ」と言った。

 その瞬間、私は悟った。
 ――この壁は境界で、向こうの街から砂を奪い、こちらに降らせているのだ。

 夜、私はこっそり再びそこを訪れた。鼓動のような音は強まり、砂が壁の向こうから吹き出してくる。いや、吸い上げられてからこちらへ落ちている。壁の上部には巨大な管がつながっており、それが砂を運んでいるようだった。

 私は柄にもなく笑った。
 砂を止めれば、私の街は救われる。だが向こうはどうなる? 今度は彼らが埋もれていく。

 翌朝、街は久しぶりに沈まなかった。管を壊したのだ。
 しかし、三日後、奇妙なことが起こった。向こうの街から、砂を運ぶ別の管がこちらへ向けて伸びてきた。しかも夜ごとに太くなっている。

 ――掘り師は知っている。砂は止められない。
ただ向きを変えるだけなのだ。
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