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8 カードバトル敗北
しおりを挟む少年は薄暗いアーケードの奥で、その筐体(きょうたい)を見つけた。
カードバトル「エターナル・クロニクル」。かつて大流行したが、いまでは誰も遊ばない骨董品のゲームだ。画面には「一回百円」と赤い文字が滲んでいる。
試しに百円玉を落とすと、つんざくような電子音とともに、カードが一枚、唸りを上げて排出された。
――《死者蘇生》。
禁止カード。存在しないはずのデータだ。少年は息を呑む。
対戦を始めると、画面の向こうには一人の男が現れた。顔は影に覆われているが、声ははっきりと響いた。
「カードを賭けろ。勝てば望みを叶え、負ければ……カードを失う」
少年は笑った。禁止カードがあるのだ。負けるはずがない。
一戦目。少年は《死者蘇生》で倒れたモンスターを蘇らせ、あっさり勝利する。
二戦目。敵はさらに強くなるが、またしても《死者蘇生》で逆転した。
勝利するたびに、筐体から新たなカードが吐き出される。どれも通常では手に入らない幻のレア。少年の目は欲望に光り、連戦を重ねた。
そして十戦目。男の声が低く響く。
「最終決戦だ。お前の魂を賭けろ」
少年はためらわず頷く。禁止カードがある限り、負けるはずがないのだ。
だが、デッキをシャッフルした瞬間、手札に《死者蘇生》は来なかった。何度引き直しても来ない。画面の奥で、影の男が笑った。
「禁止カードは、本来存在しない。存在しないものを引き続けたのは、こちらが与えた幻影にすぎぬ。欲望に呑まれたお前が勝手に信じただけだ」
少年は蒼白になり、あっけなく敗北した。
その瞬間、排出口から一枚のカードがゆっくりと吐き出された。
――《空席》。
カードの中央には、少年の顔写真が印刷されていた。
次にその筐体を見つけたのは別の子供だった。
「なんだ、珍しいな……」と百円を入れると、ガシャリ、と一枚のカードが出てくる。
――《死者蘇生》。
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