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197 新年の福袋
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正月の朝、商店街は人で溢れていた。冷たい風が頰を刺す中、私はいつものデパートの前で並んでいた。
毎年恒例の福袋争奪戦。
今年は「謎の幸せ福袋」という、内容非公開の限定十個を狙っていた。値段は五万円。中身は十万円相当以上とだけ書かれている。
ギャンブルみたいなものだが、それこそが正月の醍醐味だ。
三時間並んで、ようやく手に入れた。
重い紙袋を抱えて家に戻り、リビングの床に座って開封する。
家族はまだ寝ている。独り占めだ。
最初に出てきたのは、高級そうなコーヒー豆のセット。次はブランドのマグカップ。続いて革の手帳、万年筆、暖かそうなマフラー。どれも上等で、すでに元は取れている気がした。心の中でガッツポーズ。
袋の底が見えてきた。
最後に残ったのは、小さな封筒だった。白い無地の封筒。中に何かが入っている。
指で触ると、紙の感触。開けてみた。一枚の手紙だった。
「あなたがこの福袋を買ってくれたおかげで、私たちは今年もお店を続けられます。本当にありがとうございます。実はこの福袋、去年のお客さまから預かった『お礼の気持ち』を詰めました。あなたのような方がいてくれるから、私たちは明日も笑顔でシャッターを開けられるのです。どうか、今年も良い年になりますように。——デパート従業員一同」
手紙の下に、小さな写真が挟まっていた。
去年の正月、私が並んで買った福袋の前で、店員さんたちと一緒に撮った記念写真だった。
私が真ん中で、満面の笑み。覚えている。あの時、店員さんが「せっかくだから!」と声をかけてきて、みんなでピースサイン。
袋は空になった。でも、胸の奥がじんわりと熱くなった。
今年の福袋の中身は、去年の自分からの贈り物だった。私はそっと手紙を閉じ、マフラーを首に巻いた。
コーヒーを淹れよう。外はまだ寒いけど、なんだかとても温かい正月になった。
毎年恒例の福袋争奪戦。
今年は「謎の幸せ福袋」という、内容非公開の限定十個を狙っていた。値段は五万円。中身は十万円相当以上とだけ書かれている。
ギャンブルみたいなものだが、それこそが正月の醍醐味だ。
三時間並んで、ようやく手に入れた。
重い紙袋を抱えて家に戻り、リビングの床に座って開封する。
家族はまだ寝ている。独り占めだ。
最初に出てきたのは、高級そうなコーヒー豆のセット。次はブランドのマグカップ。続いて革の手帳、万年筆、暖かそうなマフラー。どれも上等で、すでに元は取れている気がした。心の中でガッツポーズ。
袋の底が見えてきた。
最後に残ったのは、小さな封筒だった。白い無地の封筒。中に何かが入っている。
指で触ると、紙の感触。開けてみた。一枚の手紙だった。
「あなたがこの福袋を買ってくれたおかげで、私たちは今年もお店を続けられます。本当にありがとうございます。実はこの福袋、去年のお客さまから預かった『お礼の気持ち』を詰めました。あなたのような方がいてくれるから、私たちは明日も笑顔でシャッターを開けられるのです。どうか、今年も良い年になりますように。——デパート従業員一同」
手紙の下に、小さな写真が挟まっていた。
去年の正月、私が並んで買った福袋の前で、店員さんたちと一緒に撮った記念写真だった。
私が真ん中で、満面の笑み。覚えている。あの時、店員さんが「せっかくだから!」と声をかけてきて、みんなでピースサイン。
袋は空になった。でも、胸の奥がじんわりと熱くなった。
今年の福袋の中身は、去年の自分からの贈り物だった。私はそっと手紙を閉じ、マフラーを首に巻いた。
コーヒーを淹れよう。外はまだ寒いけど、なんだかとても温かい正月になった。
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どの作品も読み易く面白かったです。特に#2とか#11みたいなオチの作品が好物なので楽しく読ませていただきました。また拝読させて頂きます。
ありがとうございます。
今まで感想はめったに頂いたことがなかったので、自分の創作に疑問を感じていました。
しかし今回のおかげで、やり甲斐を実感しました。
投稿のペースは遅いながらも長く続けてまいります。
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読んでくださって、ありがとうございます。
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最後になりましたが、更新ばかりか返信も遅れてしまい、すみませんでした。
不慣れを言い訳にせず、これからはさらに取り組んでいきたいと思います。