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#2 全ての夢を叶える薬 (ヒネリある結末)
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時は20XX年、とある山奥の研究室でのこと。
明け方の4時のことだった。辺りは薄くもやがかかり、カラスがやかましく鳴き始めていた。
突然ルイ博士が叫んだ。
杉の梢に腰を落ち着けていたカラス達が一斉に飛び去っていった。
「これはスゴい! 私はスゴいものを発明してしまった! 私の長年の苦労がようやく報われる時が来たのだ!」
ルイ博士の声に驚いて目を覚ました助手のトーリスが、寝ぼけた眼をこすりながら博士に歩み寄った。
「遂に完成したんですね、世界中のあらゆる夢が叶う薬が」
「あぁ、これで私たちもノーベル賞をもらい、多額の研究報酬をもらい、死ぬまで遊んで暮らせるぞ!」
博士の開発した、飲むだけであらゆる夢が叶う薬は瞬く間に世界中に広まり、世界中から注文が殺到し、あっという間に大ヒット商品となっていった。
パリ郊外の青年は、愛しの女性を自分のものにし、結婚までこぎ着けた。
また、バンドを夢見る田舎の少年は、東京進出後あっという間にメジャー契約を交わし、大人気バンドになった。
アフリカのとある荒野には、念願だった学校が建った。
世界中のみんながこれで幸せになれる。
……はずだった。
しばらくしたある日、テキサスのとある街で、1人の男の子が交通事故で命を落とした。男の子を轢いた車は猛スピードで走り去っていった。轢き逃げだった。
その数日後、轢き逃げをした男は行きつけのハンバーガーショップで息を引き取った。原因不明の突然死だった。
その男の彼女は、まさか例の男の子の母親の仕業だと知るよしもなく、ハンバーガーショップに恨みを抱き、その店を廃業に追いやった。もちろんあの薬で。
誰かが夢を叶えれば、その向こう側の世界では誰かが悲しむことになる。
ルイ博士の発明は、やがて世界の歯車を狂わせていった。
ピピピピ・・・
目覚ましが鳴った。
ルイ博士に、いつもの朝が戻った。博士の夢が叶ったのは夢の中の話だったのだ。
……そう考えるのが普通なのだが、「夢は叶わない方がいい」という多くの人の夢が叶った結果だとは、知る由もなかった。
明け方の4時のことだった。辺りは薄くもやがかかり、カラスがやかましく鳴き始めていた。
突然ルイ博士が叫んだ。
杉の梢に腰を落ち着けていたカラス達が一斉に飛び去っていった。
「これはスゴい! 私はスゴいものを発明してしまった! 私の長年の苦労がようやく報われる時が来たのだ!」
ルイ博士の声に驚いて目を覚ました助手のトーリスが、寝ぼけた眼をこすりながら博士に歩み寄った。
「遂に完成したんですね、世界中のあらゆる夢が叶う薬が」
「あぁ、これで私たちもノーベル賞をもらい、多額の研究報酬をもらい、死ぬまで遊んで暮らせるぞ!」
博士の開発した、飲むだけであらゆる夢が叶う薬は瞬く間に世界中に広まり、世界中から注文が殺到し、あっという間に大ヒット商品となっていった。
パリ郊外の青年は、愛しの女性を自分のものにし、結婚までこぎ着けた。
また、バンドを夢見る田舎の少年は、東京進出後あっという間にメジャー契約を交わし、大人気バンドになった。
アフリカのとある荒野には、念願だった学校が建った。
世界中のみんながこれで幸せになれる。
……はずだった。
しばらくしたある日、テキサスのとある街で、1人の男の子が交通事故で命を落とした。男の子を轢いた車は猛スピードで走り去っていった。轢き逃げだった。
その数日後、轢き逃げをした男は行きつけのハンバーガーショップで息を引き取った。原因不明の突然死だった。
その男の彼女は、まさか例の男の子の母親の仕業だと知るよしもなく、ハンバーガーショップに恨みを抱き、その店を廃業に追いやった。もちろんあの薬で。
誰かが夢を叶えれば、その向こう側の世界では誰かが悲しむことになる。
ルイ博士の発明は、やがて世界の歯車を狂わせていった。
ピピピピ・・・
目覚ましが鳴った。
ルイ博士に、いつもの朝が戻った。博士の夢が叶ったのは夢の中の話だったのだ。
……そう考えるのが普通なのだが、「夢は叶わない方がいい」という多くの人の夢が叶った結果だとは、知る由もなかった。
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