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#16 ネコのお礼 (ほっこりほのぼの)
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ネコのにっこりした顔って見たことある? そんなことない、ネコが笑うわけなんてないって思うでしょ?
それは、私んちのねこのゴロが、ぽかぽかお日さまのあたる縁側で名前のとおりゴロゴロしている時だった。
日曜日のお昼過ぎ。月曜日に学校に持って行かないといけない宿題がまだ終わらずに残っていることを私は思い出した。
イヤだなぁ、でもやらなくちゃ怒られる。学校の先生もだし、その前に晩ごはんの時お母さんにきっと聞かれて、まだ終わってないって答えたら
「どうしてお休みの前に終わらせておかないの!」
って言われちゃう。でも、でも。
「やだなぁ。」
と私は声に出して、部屋のすみっこのランドセルをちらっと見た。どうして、子どもっていうだけでこんなに毎日毎日勉強しないといけないんだろう。
ランドセルから目をそむけて、水色の絵の具をこぼしたような空を見た。
そうして下に目をやると、ゴロが縁側にごろんと寝そべっていた。気持ちよさそうにのどをゴロゴロ鳴らしては前足をひょこひょこ動かしてる。
いいなぁ、ネコは。宿題もしないで、毎日ゴロゴロ寝てればいいんだから。
「私もネコになりたいなぁ。」
いつの間にか、私は口に出してつぶやいていたみたいだった。
ふと、ゴロのゴロゴロがやんだ。静かに目をうっすらと開けて私を見てから、口のはしをにやあんと上げて、今度は私の方に顔を向ける。
「じゃぁ、ネコになってみるかにゃあ?」
そう言って、やっぱりまだ口のはしをにやあんと上げてみせた。
「……?」
とたんにゴロが大きくなって、ゴロだけじゃない、縁側も、窓も、家じゅうがいつもよりずずんと、広く、大きくなった。
「えっ?」とびっくりした拍子に手を床につく。ううん、もう手じゃない。ネコの前足だ。
「すごい、私、ネコになった!」
あんまりびっくりして飛び上がったら、思ってた以上に体がぴょおんと跳ねて、そうして上手に着地した。
体が軽い。ネコってこんなに身軽なんだ。
「これ、ゴロがやったの?」
「そうだよ。」ゴロがさっきみたいに嬉しそうにゴロゴロのどを鳴らした。
「いつも、可愛がってくれるから、そのお礼。それに一度、ネコになったキミちゃんと遊んでみたかったんだ。」
私とゴロは、ううん、二匹のネコはそれから追っかけっこしたり、木登りをしたり、屋根の上にのぼったりして日が暮れるまで遊んだ。
屋根の上で見る夕焼け空はすごくすごくきれいだった。ふとゴロが聞いてきた。
「キミちゃん、ずっとネコでいたい?」
子ネコの私はちょっと考えて、それから宿題のことを思い出した。それに今日は、ハンバーグだってお母さんが言ってたことも。
「ううん。」
「そう。」
ゴロは残念なような、でもホッとしたような顔をした。
「でも、また時々ネコにしてね。」
私が言うと、ゴロも、
「うん。また人間の時、膝にのせてね。」
と言ってにっこりした。
だから、私はネコのにっこり笑う顔を見たことがある。また、ネコになってゴロと遊びたいな。
それと後から思ったんだけど、ネコの目線だと、にやあんとした笑い顔じゃなくて、普通にいい笑顔だったんだね。
それは、私んちのねこのゴロが、ぽかぽかお日さまのあたる縁側で名前のとおりゴロゴロしている時だった。
日曜日のお昼過ぎ。月曜日に学校に持って行かないといけない宿題がまだ終わらずに残っていることを私は思い出した。
イヤだなぁ、でもやらなくちゃ怒られる。学校の先生もだし、その前に晩ごはんの時お母さんにきっと聞かれて、まだ終わってないって答えたら
「どうしてお休みの前に終わらせておかないの!」
って言われちゃう。でも、でも。
「やだなぁ。」
と私は声に出して、部屋のすみっこのランドセルをちらっと見た。どうして、子どもっていうだけでこんなに毎日毎日勉強しないといけないんだろう。
ランドセルから目をそむけて、水色の絵の具をこぼしたような空を見た。
そうして下に目をやると、ゴロが縁側にごろんと寝そべっていた。気持ちよさそうにのどをゴロゴロ鳴らしては前足をひょこひょこ動かしてる。
いいなぁ、ネコは。宿題もしないで、毎日ゴロゴロ寝てればいいんだから。
「私もネコになりたいなぁ。」
いつの間にか、私は口に出してつぶやいていたみたいだった。
ふと、ゴロのゴロゴロがやんだ。静かに目をうっすらと開けて私を見てから、口のはしをにやあんと上げて、今度は私の方に顔を向ける。
「じゃぁ、ネコになってみるかにゃあ?」
そう言って、やっぱりまだ口のはしをにやあんと上げてみせた。
「……?」
とたんにゴロが大きくなって、ゴロだけじゃない、縁側も、窓も、家じゅうがいつもよりずずんと、広く、大きくなった。
「えっ?」とびっくりした拍子に手を床につく。ううん、もう手じゃない。ネコの前足だ。
「すごい、私、ネコになった!」
あんまりびっくりして飛び上がったら、思ってた以上に体がぴょおんと跳ねて、そうして上手に着地した。
体が軽い。ネコってこんなに身軽なんだ。
「これ、ゴロがやったの?」
「そうだよ。」ゴロがさっきみたいに嬉しそうにゴロゴロのどを鳴らした。
「いつも、可愛がってくれるから、そのお礼。それに一度、ネコになったキミちゃんと遊んでみたかったんだ。」
私とゴロは、ううん、二匹のネコはそれから追っかけっこしたり、木登りをしたり、屋根の上にのぼったりして日が暮れるまで遊んだ。
屋根の上で見る夕焼け空はすごくすごくきれいだった。ふとゴロが聞いてきた。
「キミちゃん、ずっとネコでいたい?」
子ネコの私はちょっと考えて、それから宿題のことを思い出した。それに今日は、ハンバーグだってお母さんが言ってたことも。
「ううん。」
「そう。」
ゴロは残念なような、でもホッとしたような顔をした。
「でも、また時々ネコにしてね。」
私が言うと、ゴロも、
「うん。また人間の時、膝にのせてね。」
と言ってにっこりした。
だから、私はネコのにっこり笑う顔を見たことがある。また、ネコになってゴロと遊びたいな。
それと後から思ったんだけど、ネコの目線だと、にやあんとした笑い顔じゃなくて、普通にいい笑顔だったんだね。
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