→📚️賛否分かれる面白いショートストーリー（1分以内で読了限定）

#34 ある村の災難（悲劇のラスト）

「もっと食べ物を持ってこい！」

　端正な顔立ちをした青年――サイドは怒鳴り散らした。村人は怯えた表情ですぐに走り出した。

「この村の男どもは役立たずだな。なあ、お前もそう思わないか？」

　サイドは手を伸ばし、近くにいた村娘の肩を引き寄せる。村娘は怯えた表情でゆっくりと頷く。サイドはニタリと笑い、村娘の頬を舐めた。村娘は小さく悲鳴をあげた。

「そんなに怯えなくてもいいだろ？俺は女性には優しいんだ」

サイドは村娘の服を乱暴に剥ぎ取り、全身を舐めまわしていく。村娘は思わず、サイドの頬を叩いた。その瞬間、空気がピリつき、村人たちの顔が青ざめた。

　サイドは無表情で村娘の首をへし折り、地面に放り投げた。辺りには何人もの村娘の遺体が転がっている。サイドの怒りを買ってしまったために、無残にも殺されてしまったのだ。

「……ああ、この村はもう終わりだ」

　村人は空を仰いだ。

　一方その頃、一人の女――メルスが村に到着した。メルスが歩き始めると、一人の男が駆け寄ってきた。

「今すぐにこの村を出た方が良い。今この村は危険なんだ！」

「どういうことだ？」

「一週間ほど前に、悪党がこの村に住み着いたんだ。もうすでに十人以上の人間が殺されてしまった。この村に滞在したら、あんたも殺されてしまうかもしれない。すぐにこの村を出なさい」

　メルスは少しだけ笑った。男は怪訝な表情でメルスを見た。

「私が悪党とやらを村から追い出してあげよう。悪党は今、どこにいるんだ？」

「何を言っているんだ？　危険だからやめなさい！」

「大丈夫だよ。私は強いから」

　メルスは男の忠告を聞き入れず、どんどん進んでいく。メルスは早く案内しろといった表情で男を見る。男は仕方なく、メルスを悪党のもとへ案内した。

「お前が悪党か？」

　メルスはサイドを睨み付けた。

「ああ、そうだ」

　サイドはニヤリと笑い、メルスを見た。メルスは距離を詰めると、サイドに指を突きつけた。

「私がお前をこの村から追い出してやる」

「やってみろ」

　サイドはメルスに殴りかかる。しかし、メルスはいとも簡単に避け、腕を掴んで投げ飛ばした。メルスはサイドに馬乗りになると、顔面を容赦なく殴り続けた。

　サイドはメルスに勝てないと分かるや否や覚えてやがれと捨て台詞を残し、あっさりと村から出ていった。村人はメルスのもとに集まり、歓声を上げた。

「よく悪党を追い出してくれた。ありがとうございます。お礼に村の名産品とお金をあげます」

「いや、でも」

「遠慮せずに受け取ってください！」

「それじゃ、ありがたく貰うよ」

　メルスはお礼を受け取ると、村を後にした。

　メルスが砂漠地帯を歩いていると、目の前にサイドが現れた。

「……ごくろうだった。分け前だ。次もよろしく頼む」

「任せてくれ、姉さん」

　メルスとサイドは二人並んで次の村を目指した。